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目覚め

 レニエルいわく、聖騎士団の中でも最上位の七人である『七聖剣』のイングリッドは、新人聖騎士――それも、お家の事情で抜擢された『わけあり』聖騎士のレニエルのことなど、眼中にもなかったからだろうとのことだ。


 まあ、あのイノシシ女、強い相手と自分を侮辱した相手以外は、視界の中に入ってなさそうだもんな。

 これなら、死んだはずの第二王子レニエルが、実は生きていたぞとリモール王国に報告されることもないだろう。


 それはまあ、本当によろしいことなのだが、このままでは、決闘で俺がイングリッドに殴り殺され、魂を分け合った俺とレニエルは、一緒に死んでしまうということになりかねない。


 今回ばかりは、自分の軽率さを悔やむしかない。

 良い作戦など、簡単に浮かぶはずもなく、俺は三度みたび、同じ言葉を吐き出そうとした。


「はぁ……どうし……」

「何度同じ言葉を言うのだ。思考が停止しておるぞ。もう少し、建設的に頭を使ったらどうだ」


 うぉっ、ビックリした。

 誰だよ、こっちの気も知らないで、偉そうに。

 俺は、突然声をかけてきた無礼者に、八つ当たりでもしてやろうと、その姿を探す。しかし、近くに人の気配はない。


 不可思議な事態に、小さく首をかしげると、頭が何かに当たった。


「ふぎゃっ、こら、気をつけんか。我が肩に乗っておるのだぞ」


 言われて、自分の肩を見る。


「あっ」


 思わず、声が出た。

 嘘だろ?

 あれは、夢じゃなかったのか。

 俺は、しばらくぶりの黒髪ツインテールに、声をかける。


「ジガルガ!」

「うむ」


 ジガルガは、腕組みをして、深々と頷く。

 相変わらず、動作の一つ一つが、妙に仰々しい奴だ。


「『うむ』じゃないよ。お前、どこ行ってたんだよ。あんまり姿を見せないから、お前のこと、夢だと思ってたんだぞ」


「どこに行くも何も、寝る前に言うただろう。『疲れたから少し眠る』と」


「寝すぎだろ! あれから何週間経ってると思ってんだよ!」


「我の睡眠時間は長いのだ。頭をよく使うからな。たっぷりと寝て、脳の疲労を取らねばならん」


「ああ、そういやお前、人造魔獣の頭脳担当とか、言ってたよな」


 そこで俺の頭に、小さなひらめきが走った。

 こいつは、人間よりも多くの情報を頭に持っているようだし、イングリッドと戦う、何か良い作戦でも考えてくれないだろうか。

 俺は、藁にもすがる思いで、現在の状況をジガルガに説明した。


「ふーむ、なるほど。仲間思いなのはいいが、ぬしは少々短気すぎるな。今回のことは、身から出た錆というやつだ」


「んもー、お説教はいいよ。自分でも今回ばかりは随分反省した。なあ、何か良い作戦、思いつかないか?」


「そうだな。まずは、ぬしと敵のスペックを把握しておきたい。彼を知り己を知れば百戦殆うからず――これは、異世界の賢者の言葉よ」


「あ、それ知ってる。孫子の兵……いや、今はそんな話してる場合じゃないな。ええっと、俺の特技は……」


「喋らずともよい。額をこちらに向けよ」


「こう?」


 ジガルガの指示通りに、俺は額を肩の方に突き出す。

 そこに、ジガルガが自分の小さな頭をこちんと当てた。

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