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負傷者リスト

 その日も、俺とレニエルは早朝からギルドを訪ね、依頼を精査する前に、俺はテーブルでコーヒーを、レニエルはその隣に腰かけ、棚から持ってきた冒険者専用月刊誌『冒険者通信』を読んでいた。


「お前、それよく読んでるけど、面白いの?」


 コーヒーを一口すすって、聞く。

 写真が少なく、全体に細かい文字が多い雑誌なので、俺は一度、さわりだけ見て、読むのをやめてしまった。


「面白いですよ。最近売り出し中の凄腕冒険者とか、各地の重要危険モンスター、果ては世界情勢まで書いてありますから」


「ふぅん。なぁ、俺たちのこととか書いてある?」


「えっ、どうしてです?」


「だって、俺たちだって、最近売り出し中の冒険者じゃん。凄腕とまではいかなくても、そこそこ活躍してるとは思うんだけど」


「それはそうですが、僕たちじゃ、とても注目されるまではいきませんよ。この雑誌に載ってるような人たちは、素手でドラゴンの頭蓋骨を砕けるような人ばっかりですから」


「化け物じゃん、それ。まあ、注目されずに、目立たない方がいいんだけどさ。ほら、お前の事情もあるし」


 一ヶ月にわたる冒険者生活で忘れかけていたが、レニエルは、もともとリモール王国の非公式王子で、父親に死を願われたことを考えれば、こうして生きて冒険者をしていることが大っぴらになった場合、色々困ったことが起こるだろう。


「そうですね。ギルドに登録する際も、本来なら、念には念を押して、偽名を使うべきだったかもしれませんね」


「かもな。でも、たぶん大丈夫だろ。『レニエル』なんてよくある名前だしな。駄目だったら駄目だったで、そんとき考えればいいさ」


「ふふ、ナナリーさんのその、行き当たりばったりで適当なところ、最初はどうかと思いましたが、不思議とこっちも安心して、勇気が湧いてきますよ」


「『行き当たりばったりで適当』とは失礼だな。『おおらかで前向きなところ』と言ってほしいね」


 さて、コーヒーも飲み終わったし、いつまでも談笑してるわけにもいかないので、受付でよだれを垂らしながら居眠りしているマチュアに、今日の依頼を確認するとしよう。


「おい、起きろマチュア。今日は、何か良い依頼ある? なるべく安全なのな」


「……んぁ? ああ、はいはい、依頼ですね……ちょっと待ってください……ええっと……トーマス……左大腿骨骨折……ヒィロ……右上腕部挫傷……ゲイン……右鎖骨骨折……」


「まだ寝ぼけてるなこいつ……それ、昨日の負傷者リストだろ……って、おい、今、ゲインの爺さんの名前がなかったか?」


 マチュアの手から負傷者リストをひったくり、確認する。

 あった。

 間違いなく、ゲインの名だ。


 マジかよ。

 どこのどいつが、あの凄腕武闘家の骨を折ったんだ。


「あのゲインさんが大怪我するなんて、よほど凶悪なモンスターと戦ったのでしょうか?」

「あのエロジジイがモンスターなんかにやられるタマかよ。おい、マチュア。ゲインはどうして怪我したんだ?」


 そこで、やっとさ夢の世界から帰還したマチュアが、眠たい目を擦りながら言う。


「なんか昨日、誰かとはたし合いをしたらしいですよ。んで、正々堂々戦って、負けたらしいです」

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