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おはらい

「……もしかして、ちょっとだけなら、食べちゃったかも」


「やはりか。恐らくだが、魔導書と共に滅されつつあった我の思念が、焚き火の塵芥に混ざり、ごく微量ではあるが、貴様の体に取り込まれたのだろう。そのことで、我の思念と貴様の肉体が融合したのだ。だから貴様だけは我と会話ができ、我の肉体を感じ、そして触れることができるのだ」


「ごめん、ちょっとよく分かんない。もっと簡潔に言って」


「一言で言うと、我は貴様に寄生したのだ。『とりついた』といったほうが、分かりやすいかもしれんな」


 一瞬、頭がくらりとした。

 ただでさえ、元シルバーメタルゼリーの肉体に、レニエルと魂を分け合っているという複雑な事情なのに、さらに謎の人造魔獣にとりつかれるなんて、急転し続ける状況に、いい加減頭が付いて行かなくなってきた。


「なあ、教会でおはらいとかしたら、お前のこと、除霊できるかな?」


「除霊対象に直接そんなことを聞くとは、なかなか図太い奴だな。……まあいい、答えてやろう。わが身可愛さに言うわけではないが、それは不可能だ。思念体は、霊魂とは違うからな」


「なるほど。それじゃ、お祓い以外でお前を消す方法はあるか?」


「だから、そんなことを抹消対象本人に聞くんじゃない。……だが、答えてやる」


「さっきから思ってたが、お前、短気な割に素直だな」


「人造魔獣のサガだ。矛盾のない情報はすぐに受け入れ、問いかけには、速やかに返答するように作られている」


「そりゃいい。素直な奴は好きだぜ」


「ふん。……ええっと、我を消滅させる方法だったな。貴様にとっては残念な回答だろうが、そんなものはない。思念体自体が、そもそも実体がないものだからな。貴様の肉体――あるいは精神、魔力と融合して、今我は実在化している状態だ。我が消えるとしたら、貴様が死ぬときだろう」


「マジかよ。じゃあこれから一生お前と一緒か。ショックでどうにかなっちまいそうだ」


「言葉の割に、あまり衝撃を受けておらんように見えるが?」


「この一ヶ月のうちに、衝撃的なことが起こり過ぎてね。ビックリするのに飽きちまってるだけだよ」


「おかしな奴だ」


「よく言われる。で、お前はこれからどうする?」


「どうするも何も、先ほど言っただろう。ゼルベリオスのいない我には、何の価値もない。できることなど、何もない」


「そうでもないだろ。少なくとも、知識は豊富そうだ。俺の問いかけに、素早く答えてくれたしな」


「まあ、人間とは比較にならぬ膨大な情報が、この頭に詰まっているのは確かだ。我は頭脳担当だからな」


 ジガルガは、若干誇らしげに、自らの側頭部を指でコンコンとつついた。


「頭脳担当か……そういえばお前、自分は人類を滅ぼすために作られたって言ってたけど、あれ、どういうことだ?」


「聞いてどうする。創造主様の子孫に存在を否定された今となっては、もはや意味のないことだ」


「それもそうだな。そろそろ眠いし、もう寝るか。お前もそこらへんで勝手に寝ろよ。んじゃおやすみ」


 俺は、本日一番の大あくびをかき、ベッドに横になった。

 その背に、ジガルガの短い声が浴びせられる。


「おい、待て」

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