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ニーアーマー

 俺は、思わず吹き出した。


「こんなぺらぺらな布でアーマーを名乗っていいなら、俺が今はいてる靴下はアンクルアーマーだよ」

「でも、この布、魔力を感じます。ほら、触ってみてください」


 言われて、ニーアーマーらしき布を、軽く擦ってみる。

 本当だ。触ってみると、なかなか強力な魔力が布に宿っているのが、ハッキリ分かる。


 試しに俺は、布を裂いてみようとした。


 ぐっ……

 ぐぐっ……

 駄目だ。

 薄手の布地なのに、まるで革製品のように頑丈である。


「凄いぞ、これ。防御の魔法でもかかってるのか、かなり耐久力がある」


「じゃあ、やっぱりこれがニーアーマーなんですね」」


「アーマーっていうより、ニーソックスにしか見えないけどな」


「とにかく、付属品があってホッとしました」


「そうだな。注意書きも、最後まで読んじゃおう。えーっと、『鎧とニーアーマーの間の部分に、肌が露出する部分ができるが、そこを塞いではいけない。なぜなら、魔力の換気口となるからである』……うん、これでおしまいっと」


 ……魔力の換気口って表現がよくわからんが、『鎧とニーアーマーの間の、肌が露出する部分』っていうのは、いわゆる太ももの絶対領域ってやつだな。つまり、そこをズボンとかで塞いじゃ駄目だってことか。


 不可解な注意書きに、レニエルが首を捻る。


「どういうことでしょうか?」


「さあね。魔装には、不思議なルールがある物も多いから。とにかく、下半身はニーアーマーと靴だけにしておけば、問題ないってことだ。そのニーアーマー、かなり頑丈みたいだし、他の装備品なんかいらないから、別に大丈夫だろう」


「それはまあ、そうですね……」


「さ、帰ろうぜ。宿に戻ったら、庭で例の本、とっとと燃やしちまおう」


 どこか腑に落ちない感じのレニエルを促して、俺たちは宿へ帰るために再び歩き出す。


 てくてく。

 てくてく。

 今日もいい天気だ。

 五分程、無言で進んだあたりで、レニエルがボソッと言った。


「あの……下半身にニーアーマーと靴しか身に着けてはいけないということは、僕はズボン無しで、あのミニスカートみたいな鎧を着なければいけないということでしょうか」


「ん? ああ、まあ、そうなるな」


「返品してきましょう」


 くるりと踵を返して、古道具屋に戻ろうとするレニエルの肩を、ガシッと掴む。


「待て待て待て待て。こんな良い鎧、そうそう手に入るもんじゃない。ミニスカートくらいなんだ。腕利きの冒険者になるには、それなりの装備品を揃えなきゃいけないんだぞ。もう二度と、こんな業物、お目にかかる機会はないかもしれない。ちょっとのことくらい、我慢しなきゃ。だろ?」


「うっ……確かに……それは、その通りですね……」


「な? どうせ、すぐ慣れるって、それに……」


「それに、なんですか?」


「いや、なんでもない。ほら、早く帰ろ帰ろ」


「あっ、もう、ナナリーさん、押さないでくださいっ」


 俺は、レニエルの気が変わらないうちに、小さな肩を後ろからぐいぐいと押して、道を進ませた。


 いけないいけない。

 生まれつきの軽口が、また余計なことを言うところだった。


『それに、お前、きっとミニスカートが似合うと思うぞ』

 なんて言ったら、レニエルの奴、意地でも返品しに行っただろうからな。

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