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新しい装備を買おう

 こうして、俺とレニエルの、冒険者としての日常は回りだした。


 基本的には、二人で中~低難易度の依頼をこなし、時折タルカスやゲインと組んで、高難易度依頼の助っ人をする。

 もちろん、それなりに危険な目に遭うのだが、この暮らしは、意外なほど俺の性に合っていた。


 危険を避けたくて魔王軍を辞めたというのに、どうしてだろう?


 少し考えて、一つの結論が出た。

 それは、自発的に危険に飛び込んでいくか、向こうから危険がやって来るかの違いだ。

 シルバーメタルゼリーだった頃は、とにかく、俺の意思とは無関係に冒険者に襲われ、常に外敵に怯えてビクビクしている状態だった。


 でも今は、自分で判断、行動し、危険に立ち向かっている。


 この違いは大きい。

 危ない目に遭うのは同じなのだが、理不尽に襲われるのと、自分で覚悟して戦うのでは、意味合いが全く違う。


 もしも、冒険の果て、命を落とす日が来るとしても、俺自身が、覚悟、納得して選んだ道だ。きっと、後悔はしないだろう。


 まあ、そんな簡単に死ぬ気はないけどね。


 そんなこんなで、ギルドに登録してから、瞬く間に二週間が過ぎ、一応冒険者としてのイロハが分かるようにはなった頃、そこそこ貯まった金を持って、俺とレニエルは町の路地裏にある古道具屋に向かった。より冒険者らしく装備を整えるためである。


「……なあ、本当に、ここであってる?」


 俺は、小汚い廃屋の前で、呟いた。

 レニエルが、マチュアから貰った地図と目の前の建物を見比べ、頷く。


「位置はあってますが、営業してる雰囲気じゃありませんね……」


 レニエルの感想は至極当然である。

 いくつものベニヤ板が、ボロボロのドアを塞ぐように打ち付けられているのだ。

 どう見ても、客を呼び込む気があるとは思えない。


『あそこなら安値でいいものが揃いますよ』というマチュアのアドバイスを受けてやって来たのだが、それは過去の話で、とっくの昔に閉店してしまったのかもしれない。


 まあ、金はそこそこあるんだ、別にこの店にこだわる必要もない。


 俺はレニエルを促してその場を離れようとしたが、レニエルは何かに気がついたように、板だらけの玄関を調べ、小さく呪文を詠唱した。すると、玄関が淡い光に包まれる。


「おいおい、何やってんだよ。魔法で玄関の掃除でもしてやるつもりか?」


 俺がそう言い切るのと、光が消えるのはほぼ同時だった。

 ワンテンポ遅れて、俺は「あっ」と声を漏らす。

 あれほどみすぼらしかった玄関ドアが、しっかりとした黒塗りのドアに変わっていたからだ。


 ペタペタと触ってみる。

 幻じゃない。

 本物のドアだ。


「おい、レニエル、何したんだ?」


 レニエルは、小さく微笑んだ。


「さっきのボロボロだったドアは、魔法で作られた幻影だったんです。今、解呪の魔法を使いましたから、それが解けて、このお店の本当のドアが現れたんです」


「へぇ……、よく、幻影だって気がついたな」


「なんだか、妙な魔力の揺らぎがありましたから、もしかしたらと思って」


「たいしたもんだ。俺は全く気がつかなかったよ。しかし、なんだって玄関ドアに幻影の魔法なんかがかかっていたんだ? ライバル店の嫌がらせかな?」


「うーん、この辺りに他の商店はありませんから、それは考えにくいですね……」


「まあ、いいや、鍵はかかってないみたいだし、せっかくだから入ってみよう」

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