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大きな依頼

 アレの一つや二つ、別に減るもんじゃないんだから、一回くらい見せてくれてもいいんじゃないとも思うが、そういう軽口を叩くと、あの蝙蝠野郎の頭を砕いた鉄拳がこちらに飛んできそうで怖かったので、俺は言葉を飲み込んだ。


 それは、マチュアもゲインも同じだったらしく、素直にコクコクと頷いている。

 レニエルは、ホッとしたように、腰から手をどかした。

 俺は、場の空気を換えるように、努めて明るく言う。


「まあ、これで皆がレニエルの性別を納得してくれたなら、俺はそれでいいよ。……んで、タルカスさん。レニエルが女じゃないってわかったんだし、こいつを鍛えてくれる件、考えてくれるかい?」


 タルカスは少し逡巡した後、ゲインに耳打ちした。


「『鍛えるといっても、自分は人に教えたことなどないから、ちゃんとした指導ができるとは思えないが……』じゃと。まあ、そうじゃろうな。それに、ワシの経験から言わせてもらうと、冒険者の鍛錬は、日々依頼をこなして、実戦訓練を積むのが一番じゃ。習うより慣れろじゃよ」


「なるほど、そういうもんかね」


「うむ。教えるのがヘタクソな師についてチンタラ訓練するより、野に出て一匹でも多くのモンスターと戦った方が良い経験になるというものじゃ」


 スケベな爺さんだが、実力は確かなので、その発言にはなかなか説得力がある。


「とはいえ、お前さんたち二人だけじゃ、少々危なっかしいのう。実戦には死がつきものじゃからな。……ええっと、ナナリーちゃん、あんたは攻撃魔法が使えるみたいじゃが、そっちのレニエルちゃんは、何ができるんじゃ?」


 問われて、レニエルが答える。


「プリーストの神聖魔法なら、上級レベルまで使うことができます。あとは、剣術を少々……」


「ふむふむ。魔法使いとプリーストのコンビか。やはり、最低でもあと一人は、物理攻撃系の仲間が欲しいところじゃのう」


「ああ、俺もそう思ってる。このギルドで、タルカスさんの他に、誰か良い戦士とか、いないかな?」


 ゲインは、首を左右に振った。


「他にも何人か戦士はおるが、下手をすれば、お嬢ちゃんらの足を引っ張りかねんレベルの、頼りない奴ばっかりじゃ」


「まあ、それでもいないよりいいだろ。誰か紹介してよ」


「ふむ……」


 白いあごひげに手をやり、ゲインはしばらく黙り込む。

 それから、何か思いついたように、口を開いた。


「『いないよりいい』程度の戦士と組むくらいなら、ワシらと組んで、ちょいと大きな依頼をこなしてみんか? 駆け出しのお嬢ちゃんたちにとっては、なかなか良い経験となるはずじゃ。もちろん、報酬はちゃんと分ける」


 それは、なかなか良い話に思えた。

 タルカスはもちろん、このゲインもスケベなことを除けば、かなり頼もしい。


「ありがたいお誘いだが、いいのかよ? 俺たちなんか、あんたらの足手まといになるんじゃないか?」

「そうでもない。ちょうど、今回の依頼を達成するために、魔法使いとプリーストを探しておったところじゃし、ワシらにとってもお嬢ちゃんらとの出会いは、渡りに船かもしれん。さあ、どうする?」


 俺は、レニエルの方を向き、頷き合った。

 相談するまでもない。

 この話、逃す手はない。


「わかった。あんたたちと組むよ。……ところで、ちょいと大きな依頼って、いったい何をやるんだ?」


 ゲインは不敵に笑い、言った。


「なぁに、言うほど大げさなことじゃない。ただの邪神退治よ」

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