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証拠見せて

 タルカスも、ゲインの言葉に合わせて、小さく頷いた。

 その眉間は、若干申し訳なさそうに歪んでいる。

 レニエルがムスッとして、お決まりの『僕は男なんですけど』という前に、俺が言う。


「あー、大丈夫大丈夫、こいつ、男だから」


 ギルド内に、静かな沈黙が流れる。

 しばらくして、最初に口を開いたのは、マチュアだった。


「いやあ、そのジョーク、昨日聞いた時は面白かったですけど、二日続けるとあんまり笑えませんよ」


 レニエルが憮然として言う。


「笑えなくて当然です。ジョークじゃありませんから」

「えー、なら、証拠見せてくださいよー」


 うぉっ。

 凄いなこの女。

 俺も何度か言おうとして言えなかったことを、あっさり言ってのけた。

 連日の女扱いに、レニエルの奴も少しムキになっているようで、ふんすと息を荒げる。


「わかりました。何を見せれば証拠になりますか?」

「何って……そりゃ、アレでしょう……男と女を分ける、決定的な、ほら、アレですよ」

「決定的なアレ? ……あっ」


 そこでやっと、『何』を見せれば男の証拠になるかに気がついたレニエルが、赤面し、黙り込んでしまう。


 そりゃまあ、そうだわなあ。

 いくら自分を男だと証明したいからって、こんな、皆の前で、アレを見せるなんて、無理だわなあ。


 しかし、そんな俺の予想に反し、レニエルは腹を決めたように宣誓した。


「わ、わかりました。これ以上、女性扱いされるのは我慢なりません。お見せしましょう」


 おいおいおい。

 マジか。


 こいつ、最初に会った時もそうだったが、わりと頑固なところ、あるからな。


 やるといったらやる。

 見せるといったら、本当に見せるだろう。


 となると、正直俺も、俄然興味が湧いてきた。

 マチュアの隣に立ち、レニエルがアレを見せるのを、固唾を飲んで待つ。

 気がつけば、ゲインも俺の隣にいた。


「おい爺さん、男はあっち行けよ。アレの確認ならマチュアと俺でやるから」


「いや、その理屈はおかしいじゃろ。このお嬢ちゃんが本当に男なら、女のお主らが確認すると、セクハラ案件じゃぞ。男のワシが確認する方が合理的じゃ」


「なるほど。一理ある。でも、こいつが自分を男だと思い込んでる女だったら、あんた、えらいことになっちまうぞ。事案発生だ。児童ポルノ的な罪で刑務所に行くのは嫌だろ?」


「ぬぅっ……それもそうじゃのぅ……」


 俺たちがそう言ってゴチャゴチャやっている間に、レニエルは自分の腰に手をかけた。今まさに、下半身に身に着けているものが、取り外されようとする。


 俺、マチュア、ゲインは、三人そろって、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 そこに、一喝するような声が轟く。


「いい加減にしないか」


 タルカスの、厳しい声だった。

 声量こそ大きくないものの、有無を言わせぬ迫力があり、アレの露出を今か今かと待っていた俺たち三人と、レニエルまでもが、びくりと肩をすくませてしまう。


 タルカスは、静かに言葉を続けた。


「レニエル君が自分は男だと言い、今、皆の面前でここまでのことをやろうとしている。証拠というならそれでもう充分だろう。これ以上彼をはずかしめることに、何の意味がある」


 うーむ……昨日から思っていたが、できたお人だ。

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