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弟子入り志願

 それにしても、女が苦手のタルカスと、女大好きのゲインか。

 おかしなコンビだ。

 レニエルに、『お前もそう思うだろ』というように笑いかけると、彼は口を開けたまま、固まっていた。


「? おーい? レニエール? もしもーし?」


 俺が目の前でぶんぶん手を振っても、動かない。

 しばらくして、やっとという感じで、レニエルは言葉を紡いだ。

 俺に対してではなく、あのゲインに対してだ。


「あ、あの……今の、どうやったんですか……?」


「今の? どうもくそもないわい。目の前に可愛い尻があったから撫でたまでじゃ」


「違います、その後です。ナナリーさんの魔法を、素手でこう……ぐるーって……」


「ああ、あれか。ただの回し受けじゃ。ワシくらいになると、そこそこの魔法程度、かわす必要もないんじゃよ」


 事も無げに言うゲインの手を、レニエルはガシッと掴んだ。

 よし、そのまま痴漢として駅員室に連行だ。

 前世の記憶からか、奇妙なことを考える俺をよそに、レニエルは叫んだ。


「か、感服しました! どうか、僕を弟子にしてください!」


 おいおいおいおいおい。

 何考えてんだこいつ。

 正気か。

 俺は、レニエルの肩を引き、嘆息しながら言う。


「おい、こんなエロジジイの弟子になってどうすんだよ。尻の触り方でも習う気か」

「違いますよ! ナナリーさんも見たでしょう? 素手で魔法をさばくなんて、神業ですよ。この方に鍛えてもらえば、僕も強くなって、ナナリーさんを守れるようになるはずです。僕は、もっと成長しなきゃいけないんです。昨日の洞窟では、光を作る以外、なんの役にも立てませんでしたから……」


 うーん。

 どうやら昨日、戦闘では役に立たなかったことを気にしているらしい。

 俺を守るために成長したいという動機には少々キュンとくるが、何もこんなスケベジジイの弟子にならなくてもなあ。


 ちゃんと探せば、もう少しまともな師匠くらいいるだろう。

 そう思って、こいつはやめとけとレニエルを説得しようとしたが、その前にゲインが口を開いた。


「悪いがお嬢ちゃん、ワシは子供にあれこれ教える気はない。もうちょっと体のあちこちがむっちりしてきたら考えんでもないがの」


「スケベな言い方しやがる。もっと普通に、『弟子を取る気はない』とか言えねーのか」


「別に、弟子を取る気がないわけではないからの。銀髪のお嬢ちゃん。あんたなら、色々教えてやってもよいぞ♥」


「語尾にハートマークをつけるな、気色悪い」


 ふざけた言い方ではあるが、ピシャリと有無を言わせぬ迫力があったので、レニエルはそれ以上食い下がれずに、しょんぼりしてしまった。

 レニエルがゲインの弟子にならなかったのは嬉しいが、こうもガッカリしてると、かわいそうになってくるな。


 誰か、もう少し人格的にまともで、強い人が身近にいれば……あっ。

 いるじゃん。

 今ここに、一人。


「なあ、タルカスさん。暇な時でいいから、こいつを鍛えてやってくれないか?」


 俺は、背後からレニエルの両肩に手を置き、タルカスの前に出すようにして笑う。我ながら図々しい願いだと思ったが、昨日、そして今日の態度からして、タルカスなら引き受けてくれそうな気がしたのだ。


 しかし、ゲインが荒唐無稽な夢物語を笑うように言う。


「そいつは無理じゃろ。タルカスは、筋金入りの奥手じゃからな。たとえ子供でも、女の子を手取り足取り教えるなんて不可能じゃよ」

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