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新しい趣味

 話しながら、このグリアルドに対して、以前ほどの嫌悪感を覚えていない自分に気がつく。結果論ではあるが、ジガルガが助かり、自分の目的を見つけ、旅立つことができたからだろう。


 ……思えば、こいつも哀れな野郎だ。まだ子供の時に、実の父親の復讐に巻き込まれ、モヤみたいな生き物にされちまったんだからな。


 俺のストーカーをしないなら、こちらとしては、もう文句も恨みもない。

 他に楽しい趣味を見つけて、いくらでも人生を謳歌してくれりゃいいさ。


 ああ、ぼおっとするな。

 今日は、本当に疲れたよ。


 グリアルドが、『新しい趣味』について饒舌に語っているが、疲労の限界を超えた俺の脳みそには、断片的にしか、内容が届いてこない。


 ええっと……。

 なになに……?


『世界各地』

『回る』

『来る』

『狩る』


 やっと聞き取れたのが、その四つの言葉だ。

 世界各地を回って、狩りでもするのか?


 アーニャが「わー、面白そうですね!」と拍手している。

 狩りって、そんなに面白いのかな?


 まあ、俺のストーカーよりは、ずっと健全な趣味だ。

 太陽の光をいっぱい浴びるだろうし、活動的だからな。


 やがて、熱弁が終わったのか、グリアルドは少し声のトーンを落とし、俺に向かって、静かに問いかけてくる。その頃には、ぼんやりしていた俺の頭もスッキリし、彼の言葉をしっかりと聞き取ることができた。


 グリアルドの問いとは、次のようなものだった。


「きみは予想以上に、私を楽しませてくれた。だから、ジガルガの解放とは別に、特別な礼をしたい。この店の武具の中で、何か欲しいものはないかな? なんでもいいよ。一つだけ、きみの望むものをプレゼントしよう」


 なんと。

 これは、思ってもいなかった僥倖である。


 この店の品物は、どれも素晴らしいものばかりだ。

 一番欲しいのは、やっぱりあれだな。

 俺は、ほとんど考えずに、口から言葉を出していた。


「じゃあ、あれちょうだい。水晶輝竜のガントレット」

「あれは駄目だ。先に言っておくが、金剛堅竜の鎧と、飛天翼竜のレガースも駄目だよ」

「えぇ……今、なんでもいいって言ったじゃん」


 ジト目で抗議する俺に、アーニャが小馬鹿にしたような視線を飛ばしてくる。


「馬鹿だなあ、ナナリーちゃんは。さっき、ジガルガちゃんが説明したこと、ちゃんと聞いてなかったの? 『秩序を乱す傾向のある者』が『常軌を逸した武器』を持ってると、調和を乱す者の刺客が来るって言ってたでしょ? 水晶輝竜のガントレットは、明らかに常軌を逸した装備だから、プレゼントできないの」

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