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ご機嫌

 アーニャも、俺の近くにあった椅子に腰かけ、ニコニコとこっちを眺めている。


「どうした? 随分ご機嫌だな」


「ふふ、わかる?」


「まあ、雰囲気でな」


「ナナリーちゃんさ、ほら、前に森の中で戦ってから、ずっとツンツンしてたじゃない? それが、今日はいっぱい、白銀の刃の特訓をしたときみたいにおしゃべりしてくれたから、僕、嬉しいんだ」


「そうか……まあ、お前とも色々あったけど、こうして、ジガルガも無事だったし、治癒魔法で、あの地獄の苦しみからも救ってくれたしな、まあ、全部水に流すか……あっ、でも、イングリッドを、邪鬼眼の術で……」


 操ったことは、あいつに謝ってもらうぞ。


 そう続けようとする俺に、アーニャは小さな冊子のようなものを手渡してきた。


 疲労の果て、ぼんやりする頭でそれを受け取り、尋ねる。


「これは?」


「その、イングリッドちゃんへ宛てて書いた手紙だよ。邪鬼眼の術を使ったことに対する謝罪文と、慰謝料代わりとして、色々有益なことを書いておいたんだ。ナナリーちゃん、前に、ちゃんと謝らないと、友達にならないって言ってたでしょ?」


「へえ……ちゃんと覚えてたんだ。分かった、これはイングリッドに渡しておくよ」


 手紙を懐にしまうと、アーニャは俺の手を握り、それまでより、さらにニコニコと顔を綻ばせ、言う。


「ねえ、これで僕たち、本当の意味で、友達になれたよね?」


「かもな……」


「やったー!」


「お前が、ご主人様の好奇心を満たすために、俺をストーカーして色々報告するのをやめてくれたら、もっといい友達になれると思うけどね……」


 ダメもとでそう言う俺に対し、答えたのはクソ店主――いや、グリアルドだった。


「それについてだが、しばらく、アーニャをナナリーくんに張り付かせるのはやめようと思うんだ。」

「えっ、マジかよ? 言ってみるもんだな」


 グリアルドは、小さく含み笑いしながら、言葉を続ける。


「正直、今回のジガルガをめぐる一件で、私の心は大きく満たされた。単純に楽しかったというだけでなく、世の中には、まだまだ面白いことがあるんじゃないかと、夢が膨らんだよ」


「はぁ、なるほど……そりゃ大変よろしゅうございましたね……」


「どれだけぶりだろう、こんなふうに、心が生き生きと躍り、活力に満ちているのは。こういうときは、新しいことを始める、絶好の機会なのだ。だからね、人間観察は少しお休みして、新しい趣味を始めようと思うんだ」


「少しと言わず、ずっと休んでてほしいが、まあ、新しいことを始めるのはいいことだと思うぜ」

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