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「その前に、一度、ハッキリ言っておこうと思っていたのだが、せっかくだから今言うよ。私のことをクソ呼ばわりするのはそろそろやめてくれたまえ、ぶっきらぼうなのもきみの魅力の一つだが、それにしたって口が悪すぎる」


「ふん、だって俺、お前の名前知らないんだもん。クソ呼ばわりされたくなきゃ、ちゃんと自己紹介しろよな」


「ん? してなかったかな?」


「してないよ、一回も」


「そうか。それは失礼した。私は、グリアルドという。グリアルド・ゼルベリオスだ」


「ゼルベリオス? そりゃたしか、燃えちまったジガルガのボディの名前じゃなかったか?」


「ゼルベリオスとは、我が一族の姓だ。父は、人間への復讐心から、一族の怨念を込めて、最強の人造魔獣の体に、姓を名として刻んだのだろう」


「へえ、そうなの」


 興味なさげにそう言ってから、俺は言葉を続ける。


「んじゃ、話を戻すぞ。ジガルガが俺の身を心配したら、なんで、距離を置かなきゃいけないんだ?」

「それについては、私より、ジガルガ本人の口からきいた方が、きみも納得すだろう。ジガルガ、話してあげなさい」


 グリアルドに促され、頷き、ジガルガは語り始めた。


「我はこの一ヶ月、店の外に出る以外は、自由な行動を許可されていたので、ご主人様の作ったデータベースを検索し、以前、ぬしに聞かれた、『調和を保つ者』と『調和を乱す者』の関係――つまり、世界のことわりについて、調べていた。ふふ、『お前でも知らないことがあるんだな』と言われたのが、悔しくてね」

「データベース?」


 そう言えば、アーニャの奴も、前にデータベースがどうとか、言ってた気がするな。


「簡単に言えば、ご主人様が、長い時をかけて作り上げた、世界のほぼあらゆる情報が掲載されいる、百科事典のようなものだ」

「へえ、そりゃすげえ」

「だが、データベースの中にも、ほとんど情報はなかった」

「なんだよ、思ったより使えねえな」


 俺の物言いが気に入らなかったのか、店主が口をはさんでくる。


「仕方ないんだよ。以前――1800年ほど前だったかな? 『調和を保つ者』とやらが私に接触を図ってきたことがあるのだが、上から目線で気に入らない輩だったので、情報収集する間もなく、八つ裂きにしてしまったのだよ。当時は私も若かったので、少し短気だったからね」


「短気すぎるだろ……」


「その後、本格的に、私を危険人物――『調和を乱す者』だと判断した『調和を保つ者』たちは、何度か刺客を送ってきたが、私は彼らをことごとく退けた。すると、私の力が、思った以上に強大だと悟った『調和を保つ者』たちは、それ以上私に干渉してこなくなったのだ」


「ふぅん、仲間を殺されたってのに、随分あっさりと引き下がるもんだな」


 拍子抜けしたように俺が言うと、それまで黙っていたアーニャが、とてとてと駆け寄り、会話に入って来た。生来のおしゃべり好きだ。ずっと話したくて仕方なかったのだろう。


 アーニャは意気揚々と、語りだす。


「これ以上戦ってご主人様を刺激するより、静観する方が得だって踏んだんだろうね。ご主人様は、基本的に争いを好まないし、自分から世界をどうこうしようって人じゃないから。……ふふっ、つまり、『調和を保つ者』は、寝ているライオンを、そのまま寝かせておこうって思ったわけさ」


「なるほどね。……んで、その『調和を保つ者』が、ジガルガと俺が一緒にいられないことに、どうかかわってくるんだよ? いい加減、結論をスパッと言ってくれないか?」

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