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エッチな恰好

 俺は力強くそう言い切るが、ジガルガが何か言葉を返してくる間もなく、再びライトが暗転し、目の前からジガルガの気配が消えた。


 そして、まるで『僕が代わりにお喋りしてあげる』とでも言うように、快活な声が響いてくる。


「はたして、そう簡単にいくかなぁ。今回は僕も、前より少し本気でやるから、ちょっと難しいと思うけどなぁ」


 今までで最も明るく、広範囲にわたって、光を照射するライト。

 それは、リング全体を、闇の中から浮かび上がらせるように、照らしていた。


 リングの、斜め右の端――コーナーポストに寄りかかるようにして、アーニャが不敵な笑みを浮かべている。


 気圧されぬよう、俺はリングの下から彼女を睨みつけ、啖呵たんかを切った。


「そうやって、余裕こいてりゃいいさ。こっちには『秘策』があるんだ。一ヶ月前とは違うってところを、今から見せてやる」


 言い終えると同時にジャンプして、トップロープを乗り越え、リングへと降り立つ。


 そこで、アーニャの服装が、いつもの武闘家風コスチュームより、随分と肌の露出が上がっていることに気がついた。特に、胸元の部分が大きく開けており、彼女の形の良いバストが、半分ほど見えてしまっている。


 俺は、純粋に、思った通りの感想を述べた。


「お、お前、なんでそんなエッチな恰好してんの……?」

「エッチな恰好とは、酷い言われようだね。ご主人様が、今日の試合のために、特別に僕の服を改良してくれたんだ」

「改良?」


 アーニャはニコニコと頷く。


「胸やお腹のあたりとか、何もつけてないように見えるけど、あの水晶輝竜の皮を、凄~く薄く、それこそ、透けちゃうくらい薄く加工して貼り付けてあるから、とっても頑丈なんだよ。今の僕の防御力は、普段の二割増しって感じだね」


「げっ、嘘だろ。そんなことしなくても、お前、充分強いだろうが」


「ふふ、僕も『そこまでしなくてもいいんじゃないですか?』って、ご主人様に進言したんだけどね。ご主人様は、『一ヶ月間、必死で特訓してくるであろうナナリーくんに対して、こちらも何の対策もしないのは失礼千万だ』って言うんだ」


「別に失礼千万でいいのに……」


 そこで、一度会話が切れる。

 俺は、何か話題を探して、アーニャに問いかけようとして、それをやめた。


 こいつと、楽しくおしゃべりをするためにやって来たのではないのだ。

 これ以上、無駄話をする意味はあるまい。


 どこかからリングを見ているであろう店主に、大声で叫ぶ。


「よし、やろうぜ。再試合をよ。ルールは、この前と一緒でいいんだよな?」


 それに答えるように、虚空から店主の声が響いてくる。


「そうだね。試合時間は五分間。アーニャは、きみの頭部には攻撃しない。そして、伝説級の三装備を身に着けたナナリーくんが、一発でもアーニャの顔面を殴り飛ばすことができたら、きみの勝ちだ。……ただ、今回は再試合ということで、また『引き分け』などという、中途半端な決着になることは避けたい。だから、頬をかすった程度の攻撃は、無効とさせてもらう。それでいいね?」


「よくないって言ったら、かすった程度の攻撃も有効になるのかい?」


「ならないよ。もう、決めたことだからね」


「ふん、だったら紳士ぶって、いちいち確認すんな。まあ、こっちとしても、今回はキッチリ顔面に一発食らわせて、確実に勝つつもりだから、どっちでもいいけどね」


「凄い自信だね。きみが一ヶ月間、どんな特訓をしていたのか、その成果を見るのが楽しみだよ。さあ、試合開始だ」

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