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どっちが強い?

 その、竜虎のような二人を、どちらが強いかと聞かれると、非常に困ってしまう。

 眉間にしわを寄せ、うんうんと唸っている俺を見て、ヴィルガは微笑んだ。


「分かった。その反応で充分や。つまり、そのアーニャは、ウチと甲乙つけがたいほど強いっちゅうことやな。まあ、頭に猫耳ついとるんやから、獣人の遺伝子か何かが混ざっとるんやろうし、強いのは当然やろうけどな」


 あっけらかんとそう言うヴィルガに、イングリッドが口をはさむ。


「お師匠と甲乙つけがたいほどの達人が、そうそういるなんて私には考えにくいですが……」


「いやあ、そうでもないで。世の中、まだ見ぬ猛者っちゅうのはいくらでもおるもんや。ウチは、しばらくこのレグラックから離れられんけど、機会があったら、いっぺんそのアーニャと戦ってみたいもんや。……さて、話を戻そか。とりあえず、アーニャがウチとほぼ互角の強さと仮定するなら、このウチの顔面に一発入れられるようになったら、アーニャのつらも殴れるっちゅうことや。とりあえず、ウチの顔を張り倒すのを目標に、しばらく特訓したらええ」


 ヴィルガの言葉に、俺は頷く。


 つい今しがた、彼女に手も足も出なかった俺にとって、それは恐ろしく困難な目標に思えたが、明確な目標でもあった。とにかくこれからの一ヶ月で、なんとか一発、ヴィルガの顔面に攻撃を当てられるよう、必死で努力するしかない。


「昼間は用事があるから無理やけど、朝晩は稽古つけたるさかい、きばりや」

「分かりました。あの、まだ時間はありますし、今からでも稽古をつけてもらえますか?」


 そう言って立ち上がった途端、俺はふらりと立ち眩みを起こして、布団に膝をついてしまう。


 どうしたことだろう。

 足にまったく力が入らない。


「あー、あかんあかん、手加減したとはいえ、ウチの蹴りを頭に食らったんや。今日はもう、体を動かさんほうがええ」


「で、でも、俺には時間がないんです……一秒だって、無駄には……」


「わことるわことる。せやから、寝ながらでもできる特訓したるわ。インコ、庭に降り。久しぶりに稽古つけたる」


 唐突に声を掛けられ、イングリッドは一瞬きょとんとするが、師匠に稽古をつけてもらえるのが嬉しいのか、いそいそと魔装コユリエを鞘から抜き、庭に駆け下りた。


 ヴィルガは部屋の隅っこに行き、無造作に立てかけてあった木刀を手に持つと、肩に担ぐような姿勢をとって庭に降り、俺に向かって微笑んだ。


「これから、ウチとインコが戦うのを、寝たままでええから、なるべく瞬きせんようにして、じぃっと見とき。動体視力のええ訓練になるからな」


 なるほど。

 人間離れした身のこなしの二人が、超スピードで戦う姿。

 それを至近距離で見るのは、これ以上ない動体視力の訓練だ。


 俺は頷き、大人しく布団に横たわると、二人の稽古を真剣に見守った。



「はぁ……はぁ……あ……ありがとう……ございま……した……」

「うん。お疲れさん」


 十分ほど戦いを続けた後、イングリッドとヴィルガは互いに礼をして、稽古を終えた。


 イングリッドだけが魔装コユリエ――つまり真剣を使い、ヴィルガはただの木刀で戦いに臨んだ訳が、見ているうちにすぐわかった。


 恐ろしいことに、イングリッドの鋭い剣撃は、ただの一太刀としてヴィルガにかすりもせず、逆に、ヴィルガの木刀での攻撃は、面白いようにイングリッドの体を殴打した。


 しかし、さすがにイングリッドは俺とは違い、急所への打撃をギリギリで回避しているようで、昏倒させられるようなことはなく、ヘロヘロのフラフラになりながらも、立ったまま稽古を終えることができた。

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