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ちゃんと防御してな

 彼女の身体能力と防御技術が高いのは、こちらの攻撃がかすりもしないことで嫌というほど分かったが、攻撃能力はどうなのだろう。


 俺より小柄だし(乳はでかいけど)、パワーは案外たいしたことないんじゃないだろうか?


 まあ、俺としても、攻撃よりは、シルバーメタルゼリーの俊敏さを活かした回避行動の方が得意だ。攻めで良いところを見せられなかった分、華麗な防御と回避で、少しは



「ああっ、よかった。気がついたか、あなた」


 心配そうなイングリッドの顔が、目の前にある。


 あれ?

 なんでイングリッドが正面にいるんだ?

 俺、今までヴィルガと戦ってなかったっけ?


 そこで初めて、俺は自分が寝ていることに気がついた。


 布団の上だ。

 起き上がろうとして、鋭い頭痛に、顔を顰める。

 イングリッドが、慌てて俺を布団に戻した。


「まだ寝てなければだめだ。お師匠の蹴りをまともに食らって気絶したんだからな」

「蹴りだって? 本当に? 勝負の途中から、まったく記憶がないんだけど……」


 俺は横になりながら、あやふやな記憶を呼び起こしてみる。


 ……駄目だ。

 ヴィルガが蹴りを放ってきた瞬間など、まったく思い出せない。


 気を失う前で、最後に覚えているのが、『そろそろウチからも攻撃するで。ちゃんと防御してな』とヴィルガが言ったところまでだ。


 彼女が、間合いを詰めてくるところすら、記憶にない。


 いきなりだ。

 いきなり、意識が飛んだ。

 俺には、まったくヴィルガの動きが見えていなかったということなのだろう。


 イングリッドが、どこかから持ってきたのか、濡れタオルを俺の額に置き、振り返って、非難めいた声を上げる。


「お師匠、これはあんまりです。彼女にお師匠の攻撃が防げるはずないのに、こんな……」


 イングリッドの視線の先には、ヴィルガがいた。


 どうやらここは、庭を見渡すことのできる茶の間で、俺はその中央に寝かされ、ヴィルガは壁に寄り掛かるようにして立っているらしい。


 ヴィルガは、大きな胸の前で両手を合わせると、ぺこぺこと頭を下げ、ばつが悪そうに笑う。


「いや、かんにんかんにん。手加減したんやけどな。いい感じで、急所に入ってもうた」

「お師匠、こんな練習試合のようなもので、どうして急所を狙ったのですか?」

「つい」

「ついって……」


 呆れた様子のイングリッドを遮るように、俺はヴィルガに問う。


「あの、ヴィルガさん。どうでしょうか? 俺、見込みありますか? 一ヶ月で、さっき話した人造魔獣に、一撃食らわせられる程度には、強くなれるでしょうか?」

「うーん……さっきも言うたけど、ある程度は基礎もできとるし、みっちり鍛えれば、今よりはかなりマシになるとは思うで。せやけど、その、あんたが顔面に一発入れたい相手が、どれくらい強いか分からんことには、ハッキリしたことは言えんな」


 ふむむ。

 比較対象の強さが分からなければ、確かなことは言えない、か。

 そりゃまあ、そうだろうな。


 ジガルガのように、俺の記憶を読み取ってくれれば、アーニャの強さをヴィルガに伝えることができるのだが。


 そんなことを思っていると、ヴィルガは俺の側に腰を下ろし、話を続ける。


「そうやなあ……適当でもええから、ちょっと考えてみてや。ウチとその人造魔獣――アーニャやったっけ? どっちが強いと思った?」


 俺は瞳を閉じ、しばし考える。


 先程のヴィルガの身のこなしは凄かったし、攻撃に関しては、動きを目に捉えることすらかなわなかった。


 対するアーニャも、人間離れした素早さであり、尋常ではないスタミナと攻撃力の持ち主である。最高レベルの武装とハンデが無い状態で戦ったなら、俺は十秒だって立ってはいられないだろう。

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