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フルアーマーナナリー

 アーニャが、俺の顔を見て、ニコニコしながら提案する。


「ご主人様、僕、いいゲームを思いつきました」


「何かな? 言ってごらん」


「はい。大怪我しないように、ナナリーちゃんにいっぱい防具を着せて、僕と戦うんです」


「それはダメだ。たとえ最高の防具を着せても、力に差がありすぎる」


「わかってます。だから、ハンデもつけるんです。僕は、ナナリーちゃんの頭を攻撃しません。叩くのは、最高の防具で固めた体だけ。これなら、深刻な怪我は負わないはずです」


「ふむ……だが、彼女の攻撃でお前を倒せるとは思えない。どちらも攻め手を欠いた、つまらないゲームになるのではないか?」


「えへへ、だから、勝敗条件も別々にするんですよ。試合時間は五分間で、五分のうちに、僕の顔面を一発でも殴り飛ばすことができたら、ナナリーちゃんの勝ち。反対に五分間、一発のパンチも顔面にかすらなければ、僕の勝ち。もちろん、僕は逃げ回ったりしません。ちゃんと、正面から戦います」


「ふむ……ふーむ……うむ、それなら、案外良い勝負になるかもしれないね。さすがアーニャだ」


「えへへー」


 店主とアーニャが相談している最中、俺は異論を挟まなかった。

 このゲームが、俺にとって思った以上に有利だと思ったからだ。


 確かに、このアーニャは化け物だ。

 俺とは力の差がありすぎる。


 だが一発。

 顔面にたった一発なら、当てられる。

 10日前ならともかく、今の俺には、ジガルガに教わった達人の技があるのだ。


 ジガルガも、このルールなら、俺が大怪我することはないと思ったのか、特に何も言わなかった。

 アーニャが俺に向き直り、相変わらずの朗らかスマイルで問うてくる。


「今の、聞いてたよね? ルールに異論はない?」


「ああ」


「それじゃ、今から防具を貸してあげるね。どんなやつがいい?」


「この店で一番すごいやつをくれ」


「わあ、図々しい~」


「やかましい。ジガルガのために、万が一にも負けられないんだ。つべこべ言わずに最高のやつをくれ」


「はいはい。とびっきりのをあげるよ。よいしょっと」


 重たい荷物を持ち上げるようなアーニャの掛け声とともに、俺の体が光に包まれる。

 眩しさに目を閉じ、再びまぶたを開いた時、全身が仰々しいまでの武装に覆われていた。


「おおぉ……すげー……なんか異様にキラキラしてる……」

「ふふふー、古代世界で最高の防御力を誇った、金剛堅竜の鱗から作った鎧だよ。本当なら、人間が着用して歩くことなんか不可能な重量なんだけど、ご主人様の魔法で重さを極限まで軽くしてあるから、まるで羽毛で作った服みたいな着心地でしょ」


 本当に軽い。それに、関節の部位が、ゴムみたいに柔軟に伸びる。

 装飾がいっぱいの豪奢な鎧だが、これなら自在に動き回れそうだ。


「足回りも、がっちり固められてるな。鎧とは少し色が違うけど……」

「素材が違うからね。それは、古代世界最速のドラゴン、飛天翼竜の皮膚を使って作ったレガースだよ。防御力は金剛堅竜の鱗よりは落ちるけど、着用者の素早さを上げる効果があるんだ」


 ふうん。

 言われてみれば、いつもより体が軽い。

 小さくステップを踏むと、まるで飛んでいるような感覚である。


「そして、腕にはあの、水晶輝竜のガントレットか。こりゃ凄い。まさに最強の装備だな」

「まったくだよ。伝説級の武具を三つも身に着けられた上に、頭は攻撃しちゃ駄目なんだから、このゲーム、さすがの僕でもちょっとキツイかもね」

「今更装備を返せって言われても返さないからな」

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