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種目の選別

「知ってるだろ? 俺は、普通の人間じゃないよ」


「馬鹿! そんなことを言っているのではない! 場合によっては、危険なゲームで、大変な怪我を負うかもしれないからやめろと言っているのだ! ……我のことは、いいのだ。ご子息様の好奇心を満たせるなら、この命、惜しくはない」


「お前がよくても、俺はよくない。俺はな、お前のことが好きなんだよ。それが、あんな頭のおかしい野郎に解剖されるなんて、我慢ならない。お前だって、言ってたじゃないか、最近、寝るのも惜しいほど楽しいって。本当は、死にたくないんだろ?」


「それは……」


「安心しろよ。どんなゲームでも絶対負けねえ。あのイカレ野郎、ぶっ飛ばしてやる」


「ぬしの気持ちは嬉しいが、そのみなぎる自信に、何か根拠はあるのか? カードや、サイコロを使った遊びが得意なのか?」


「……根拠はない。ちなみにカードもサイコロも苦手だ」


「駄目ではないか……」


 そんな俺とジガルガのやり取りを見ていたのか、店主のおかしそうな笑いが、サラウンドで聞こえてくる。


「ふふふ……たまらぬな。たかが人造魔獣相手に、これほど気持ちを寄せる、その姿。だから私は、きみが好きなのだよ」

「うるせえ。俺はお前が死ぬほど嫌いだ。もう、一秒だって口をききたくないくらいにな。何のゲームでもいい。早くやろうぜ」

「ふむ。それなんだが、きみがカードもサイコロも苦手と聞いては、種目の選別に難儀するな。何か、得意なゲームはないのかな?」


 問われて、少し考えてみる。


 俺って、けっこうカッとなるタイプだから、冷静な判断が必要なゲームは苦手だし、頭もよろしくないので、緻密な計算を要求されるゲームも無理だ。


 人並み以上にできそうなのは、やはり体を使ったゲームだ。

 俺は、それを素直に口にする。


「何か、体を動かすゲームがいい」

「そうだね。私も、それがいいと思うよ。どれ……今からきみの特性を調べて、きみにもっとも向いているゲームを考えるとしよう」

「……おい、さっきから聞いてりゃ、随分と俺に有利になるよう取り計らってくれてるみたいだがよ。なんか、たくらんでやがるのか?」


 クスクスと笑って、その質問に答えたのは、アーニャである。


「ご主人様は、何もたくらんじゃいないよ。ただ、普通に勝負したら、どんなゲームでもご主人様が圧勝しちゃうから、なるべく互角の戦いができるように考えてるだけ。絶対に勝てるゲームなんて、面白くもなんともないからね」


「ふん、そーかよ。余裕綽々で、ますます気にいらねーな」


「こういうのは『余裕』っていわないよ。むしろ、ゲームのために、不要な余裕を排除して、面白くするための『準備』っていうのが適切だね」


「うるせえ。どっちでもいいよ、そんなもん。いちいち絡んでくんな」


「んもー、機嫌悪いなあ。もっと笑おうよ。スマイルスマイル」


「アホか! この状況で機嫌よかったら頭おかしいわ!」


 そんなことをやっているうちに、俺の『特性』とやらを調べ終わったらしく、店主は少し驚いたように言う。


「ほぉ、これは意外だ。今、きみが一番得意なことを調べてみたのだが……それはなんと、『武術』だ。私はてっきり、走ることだと思っていたのだがね」


 確かに、そりゃ意外だ。

 俺も、シルバーメタルゼリーのスピードを活かした短距離走が、一番得意だと思っていた。


 しかし、少し考えると、それほど意外でもないことに気がつく。


 走ることは生来の才能で、特にトレーニングなどしていないが、武術に関しては、これまでの約一ヶ月間、異常な密度で猛特訓し、ここ10日間に至っては、ジガルガから直接達人の技と動きをダウンロードしたようなものだ。最も得意な事柄が、走ることから武術に変わっていても不思議ではない。

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