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興味深い現象

 ……同じ人造魔獣、か。

 この店主が、ジガルガを作った創造主の子供で、『父の人造魔獣錬成術をすべて受け継いでいる』と言っていたから、ある程度は予想していたが、あのアーニャも、ジガルガと同じ人造魔獣だったのだ。


 これであいつが、見たこともない古代術法を使えることや、人間離れして強いことにも納得がいった。


 俺は、いまだにぶつぶつ独りごとを言っている店主に、問いかけた。


「おい、アーニャのやつ、どこにいるんだ? 今日は俺を見張ってなくていいのかよ」

「さっきから、ずっとここにいるよ~」


 いきなり俺の目の前に現れたアーニャが、ニッコリ微笑んでいる。


「おわっ、びっくりした!」


 本当にびっくりして、思わず飛びのいてしまう。

 そういえばこいつ、透明になる術も使えるんだったな。


「えへへー、こうして話すのは久しぶりだね。これで、僕ももう、正体を隠さなくていいし、もっと仲良くできるね。なんたって、僕たち友達なんだし」


「うるせーな。お前なんて友達じゃねーよ」


「ええっ、どうして?」


「この前、いきなり俺を襲ったこと、もう忘れちまったのか。友達の気持ちより、『ご主人様』の命令を重視する奴となんて、仲良くしたくないね」


「えぇ~、そんなあ~、ひどいよ~」


 俺とアーニャのやり取りに、店主がピシャリと口をはさむ。


「アーニャ。私は今、考え事をしている。静かにしていなさい」

「はぁい」


 短く返事をすると、アーニャはまるで、最初からそこにいなかったかのように、消えてしまった。


 また、透明になったのだろう。

 奔放に見えて、どこまでも主人には忠実なやつだ。


 しばらくして、やっと『考え事』とやらが終わったのか、店主は静かに語りだした。


 ……どうやら、ジガルガに話しかけているようである。


「私は、父が嫌いだ。だから、父の作ったお前も、正直に言えば、あまり好きではない」

「は、はい。申し訳ありません……」


 ぺこりと頭を下げるジガルガ。

 なんだよ。こんな勝手な奴に、謝ることないのによ。


 俺は、何か言い返してやろうとするが、さらなる店主の言葉が響いてきて、声を発するタイミングを失ってしまった。


「しかし、今お前の身に起こった現象は、非常に興味深い。アーニャと全く同じ素材を使ったのに、お前の心を入れた途端、体が魂に引っ張られるように、肉体が変化した。こんなのは初めてだ。お前の心は、普通の人造魔獣とは違うのかな? うーむ、興味深い。人間観察以外で、これほど知的好奇心が刺激されるのは、久方ぶりのことだ」

「さ、左様でございますか。ご子息様に喜んでいただいて、我も大変嬉しく思います」


 そう言って微笑むジガルガの顔は、お世辞ではなく、本当に嬉しそうだった。

 やはり、人造魔獣の本能として、自らを作った創造主の家系に連なるものを喜ばせるのは、幸福なことなのだろう。


 店主は、まだまだ語り足りないと主張するように、ベラベラと話し続ける。


「お前のことを、徹底的に調べたい。肉体を与えたばかりで恐縮だが、今から解体して、色々と実験をさせてもらう。骨や臓器が、どのように変化したか、細かく見たい。肉体の調査が終わったら、次は心だ。精神をバラバラに分解して、すべてを調べてみよう」


 ……なんだと?

 こいつはいったい、何を言っているんだ?


 解体? 実験? 調査?


 俺は、ジガルガの方を見る。

 ジガルガは、何かを覚悟したように、深く瞳を閉じていた。

 どこにいるとも分からぬ店主に向かって、俺は問う。


「……おい、一応聞くけど、今の、たちの悪い冗談だよな」

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