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新たなる体

「そんなこと、できるのか!?」


「私は、父の人造魔獣錬成術を、すべて受け継いでいる。新たなる体を作ってやるくらい、造作もないことだ。まあ、ジガルガの本来の体――悠久の時を経て進化を続けた究極のボディ、ゼルベリオスに比べると、少々劣るものになるだろうがね」


「そんな究極のボディなら、魔導書ごと焚火に入れて燃やすなよ、もったいない」


「燃やしたのはきみだろう?」


「おめーがやれっつったから燃やしたんだよ!」


「失礼。そうだったね。……きみに魔導書を渡した時、言っただろう。『こんな物騒なもの、私には必要ない』と。あれは本心だよ。いかに究極のボディとはいえ、戦いのためだけの人造魔獣になど、興味がないんだよ。もともと、争いごとは好きではないしね。まあ、争ったとしても、誰にも負けはしないが」


 ふん。

 自信満々で、気に入らないヤローだ。


「もう御託はいいよ。作れるなら、とっとと作ってくれ。それで、今までのことは、一応チャラにしてやってもいい」


「ほう。チャラ。それは素晴らしい。でも、いいのかい? ジガルガの新しい体なんかより、これまでの迷惑料として、この店にある伝説級の強力な武器をプレゼントしてあげてもいいんだよ?」


「いいよ。そんなの」


「武器に興味がないなら、宝石なんてどうかな? 確かなルートで売れば、数年間は遊んで暮らせるほどの高価な貴金属が、この店にはいくつも……」


「だから、いいってば。それより、早く作ってやってくれよ」


 やったな、ジガルガ。これで俺の体を借りなくても、自分の口で、大好きな唐揚げが食べられるぞ。


 そう、心の中で囁く。

 ジガルガは状況の急変に戸惑っているようだが、それでもワクワクしているのが、精神を半分同化させている俺には、よくわかった。


 店主が、満足そうに微笑む。


「ふふふ、貴重な武具や宝石より、友達の体か。いいね。本当に、いい。そういう選択をするから、きみが好きなんだ」


 そこで言葉を切り、何かの呪文を詠唱する店主。

 俺の隣で、ボゥッと大きな光が発生した。


 光の塊はその場に固定されたまま、じわじわと小さくなっていき、やがて、人間の子供と同じようなサイズになって、消失した。


「あっ……」


 俺は、思わず絶句した。

 今まで光があった部分に、よく見知った顔の、黒髪ツインテールの女の子がいたからだ。


 驚く俺の反応が嬉しかったのか、店主は小さく笑った後、言葉を紡ぐ。


「できたよ。しかし、これは意外だな。私の想定した姿より、小さくなってしまった。どこかの過程で、ミスをしてしまったかな? いや、私がそんな、単純な失敗をするはずがない。うーむ……」


 突然現れた、人間の子供サイズのジガルガは、信じられないといった表情で、自分の両手を見つめ、次に、視線を俺にやる。


 そこで、気がついた。

 俺の頭の中に、ジガルガの意識の反応がないことに。

 緊張に乾いた唇を一度舐め、俺は問いかける。


「お、おい。お前、ジガルガ……なのか?」


 目の前のジガルガは、俺に向かってゆっくりと頷き、部屋中を見渡すようにしながら、少しずつ、言葉を口にしていく。


「し、信じられん……ものの数秒間で、肉体を錬成するなんて……こんなこと、絶大な魔力がなければ不可能だ……や、やはり、あなたは、創造主様の末裔……いや、ご子息なのですね」


 創造主の子に、直接肉体を作ってもらったのが嬉しいのだろう。

 ジガルガは感極まったように唇を震わせながら、どこにいるかもわからない店主に向かって、語り掛ける。


 しかし店主は、それに反応することはなく、一人でぶつぶつと何かをのたまっていた。


「うーむ……おかしい、アーニャと同タイプの素材で作ったのに、何故、こうも姿が変わってしまったのだ? 魂も、同じ人造魔獣なのだから、それほど差異があるとは思えない……うーむ、これは不思議だ。実に知的好奇心をそそる……」

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