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教えてあげる

『大丈夫? きみも、けっこう頑丈だね。いくら腕を上げてガードしても、衝撃で肩の関節が外れてもおかしくないパンチだったのに』

『まあね。俺の体は特別なんだ。急所に必殺の一撃さえもらわなければ、かなりの攻撃に耐えられるようにできてるのさ』


 とはいえ、体力がある方じゃないから、あんまり何度も攻撃を食らいたくはないけどね。

 俺は顔を上げ、どんなもんだとでも言わんばかりのマッスルポーズを決めているピジャンを睨む。


 くそっ、参ったな。

 あいつはとんだ化け物だ。

 風のようなスピードに加えて、ぶっとい腕の強烈なパンチ。

 おまけに、水晶輝竜のガントレットによるパンチが直撃しても耐えられる、タフネス。


 こいつとボクシングの真似事をするのは、まさに命がけだ。

 一発でも、まともなパンチを顔面に貰ったら、それで即死だろう。

 全部、回避か防御しないと。


 ……俺のパンチは、何発当てれば、ピジャンを倒すことができるだろうか。

 その疑問に、アーニャが答えた。


『さっきみたいな素人パンチなら、たぶん15発は当てないと、あの子を戦闘不能にできないと思うよ』


 15発。

 絶望的な数字に、目の前が暗くなった。

 ピジャンの必殺の一撃を全てかわし、防ぎ、その間に、こっちは15発もパンチを当てなければ、勝てないなんて。


 できるか?

 そんなことが?

 いや、弱気になるな。


 もう、やるしかないのだ。

 気合を入れろ。

 ビビるな。

 やってやる!

 俺はチャンピオンだ!


『待って待って。そんなふうに思い込みで気持ちを盛り上げても、無理なものは無理だよ。冷静になって』

『な、なんだよもぉ。止めんなよぉ。せっかくいい感じに気合入ってたのにぃ』


 しかし、アーニャの言う通りだ。

 気合だけで無理が通るなら、誰も苦労しない。

 かといって、他に妙案などないし、やはり自分をチャンピオンだと思い込んで戦うしか……


『だから、それは駄目だってば。ねえ、さっきの僕の言葉、思い出してよ。素人パンチなら15発は当てないと勝てないって言ったよね』


『やめろよ、絶望的な事実をまた突き付けるのは。悲しくなってくる……』


『ちゃんと最後まで聞いて。素人パンチじゃない、しっかりとしたボクシングのパンチで急所を突けば、1発で倒せるんだよ。水晶輝竜のガントレットには、それだけの力がある』


『1発!? マジか!? それを早く言えよ! ……って、駄目だ駄目だ。ぬか喜びさせんな。しっかりとしたボクシングのパンチなんて、打ち方しらないもん。無理無理』


 俺は、首を左右に振って、大げさに溜息を吐く。

 その情けない姿に、アーニャもまた、呆れたように溜息を漏らした。


『だーかーらぁ、最後まで聞いてって。その、『しっかりとしたボクシングのパンチ』の打ち方を、僕が教えてあげる』


『え? お前、プロボクサーかなんかなの?』


『そう言うわけじゃないけど、大体の格闘技はできるし、ボクシングは得意な方だよ』


『いったい何者なんだよお前……邪鬼眼の術みたいな変な術も使えるし、凄い武器持ってるし、よくよく考えると、こうやって人の心に入り込むみたいにして会話できてるし……完璧超人かよ』


『僕のことは、今はどうでもいいでしょ。ほら、またあの子が襲ってくるよ。腕を上げて、構えて』


『お、おう』


 言われて、慌てて腕を上げる。

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