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臨戦態勢

 俺は、臨戦態勢を取った。


「おー? なになにー? やる気ー? いいよー、相手になってあげるー。どうせ、全部教えた後は、お姉ちゃんたちを、排除するつもりだったしねー。ふふっ、それにしてもさー、ふふふふっ」


「なんだよ。何がおかしい」


「いやねー。私に、勝てるつもりなのかなーって思って。あの剣士のお姉ちゃんならともかく、足が速いだけの銀色のお姉ちゃんじゃ、どうやったって私には勝てないと思うけどなー」


「なめんなよ。俺には、秘密兵器があるんだ」


「へぇー、やだあー、こわーい」


 ピジャンは、少しも怖くなさそうに、震えるように体をくねくねと揺する。

 ……このガキ、馬鹿にしやがって。


 俺の言う秘密兵器とは、まあ、つまるところ、ジガルガのことだ。

 イングリッドと決闘したときのように、ジガルガと体を入れ替えれば、こんな奴、敵じゃない。


 さあ、頼む、ジガルガ、起きてくれ。

 寝てる場合じゃないんだ。

 五分でいいから、起きて戦ってくれ。


 おーい。

 ジガルガー。

 朝だよー。

 おーい。


 ……うん。

 そりゃ、起きんわな。

 さっき、腹いっぱい食って、寝たばかりだもんな。

 知ってた。


 さて、こうなった以上、レニエルと協力して戦うしかないか。

 先ほどの光の魔法を見るに、プリーストとしてかなり成長しているようだから、充分な戦力になるはずだ。


 彼の方を見て目配せすると、レニエルも共闘を理解しているようで、決意を込めた瞳で、小さく頷いた。


 そこに、ピジャンの間の抜けた声が響く。


「えー、まさか、二対一で、襲いかかってくるのー? ずるくないー?」

「悪いね。一対一じゃ、勝てそうにないからさ。いくぞ、レニエル」

「はい!」


 返事と同時に、レニエルの両手が光に包まれた。

 聖なるエネルギーを集約して撃ち出す、聖光弾の呪文、その準備段階である。

 ピジャンの、顔色が変わった。


「ふーん、その子、光っぽい魔法使うんだー。正直言って私、そーいうの、苦手なんだよねー。……ねえソゥラ、銀色のお姉ちゃんは私がやるから、この金髪の子、殺しておいて。お願いねー」


 次の瞬間だった。

 目の前の景色が、一瞬で変わったのは。

 なんだ?

 いったい、何が起こったんだ?


 辺りを見回す。

 夜だというのに、ぼんやりと明るい。

 何故かは、すぐわかった。


 周囲の岩々が、光っているのだ。

 恐らく、天然の『ピジャンの光石』なのだろう。

 その神秘的な美しい輝きに、自分の置かれた状況も忘れ、しばらく見入っていると、例の間の抜けた声が飛んでくる。


「ここ、どこだかわかるー? 今日の昼下がりにー、私とお姉ちゃんたちが出会った場所だよー」


 言われて、初めて気がついた。

 確かにここは、ピジャンと初めて出会った、すり鉢状の窪地だ。


 馬鹿な。

 燃やされた集落からここまでは、歩いて一時間はかかる距離だ。

 それを一瞬で……


 あっ、そうか。


「テレポートか。あのデカブツを飛ばした時みたいに、瞬間移動したんだな」

「そ。テレポーテーションは、私の得意技なのー。一回使うと、しばらく使えなくなるのが難点だけどねー」

「へえ、見たところ、魔力を大量消費したようには感じないけどな。それなのに、連続で使えないなんて、妙だな」

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