表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/266

贈り物

 まあ、目の前で美味そうにもりもり食ってるのを見ると、こっちもだんだん食欲がわいてきた。

 スーリアは米食文化らしく、お椀に盛られたご飯の香りが、どこか懐かしい気分にさせてくれる。


 スプーンを使って、お米を一口食べる。

 うん、美味しい。


 多少軟らかめに炊かれているおかげで、疲れ気味の胃腸にも優しそうだ。


 ふと、隣を見ると、レニエルも俺と同じようにちびちびとご飯を食べながら、時折不思議そうに首を捻っていた。


「どうした?」

「いや、どうしたってことも、ないんですけど、うーん……」

「それだけ首捻ってて、どうしたってこともないこたないだろ。気になるじゃん」

「あの、何か、引っかかるんですよね。さっきの、ウーフさんの言っていたこと」


 やっぱり。

 こいつも、何か変だと感じたんだな。


「俺も、変だと思ったんだよ。でも、具体的に何が変なのか、よく分からなくってさ。お前は、どこがおかしいと思った?」

「あのですね。あれだけ、ピジャン神のお……」


 言葉の途中で、もぞりとテントの入り口が開く。

 何だと思ってそちらを見ると、ウーフの妹、ソゥラだった。

 意外な来客に驚いていると、彼女は深々と、俺たちに向かって頭を下げた。


「昼間は、失礼な態度を取って、すいませんでした。あなたたちがスーリアを発つ前に、それだけは謝っておこうと思って……あの、これ、良かったら皆さんで飲んでください。スーリアの地酒です」

「あ、これはわざわざどうも。昼間のことなら、全然気にしてないから、そんなふうに気を遣わなくてもいいのに」


 本当に気にしていないのだが、それでも、こうしてこちらのことを気遣ってもらえると、やはり嬉しい。


 俺は笑顔で酒瓶を受け取ると、脇に置いた。

 それをイングリッドがひったくるように持っていったが、まあ、どうでもいいことだろう。


「いえ、それじゃ、私はこれで」


 そう言ってささやかな笑みを作るソゥラ。

 ……まだ子供と言ってもいい年齢なのに、なんて寂しげで、影のある笑い方をするんだろう。

 もう少し彼女のことが知りたくて、何か声をかけようとするが、どうにも話題が思いつかない。


 うーん。

 何か、いい話のタネはないかな。


 そうこうしているうちに、ソゥラは身を翻し、緻密な刺繍が施された彼女のスカートが、ふわりと舞った。

 これだ、と俺は思う。

 ちょっとした好奇心もあり、俺はソゥラに問いかけた。


「あのさ、ちょっと聞いていい?」


 テントの入り口をくぐりかけたソゥラが、立ったまま、こちらを振り返る。


「なんですか?」

「きみの服、それ、スーリアの民族衣装じゃないよね。俺たちの住む地方――イハーデンのものじゃないか? それも、かなり良い物だ」


 ソゥラは黙り込み、しばらくしてから、言った。


「……贈り物なんです。イハーデンの商人さんからの」

「へぇ、よく似合ってるよ。こんなに良いものをプレゼントしてくれたんだ。きみに気があるのかもね。また、装飾品なりなんなり、プレゼントしてくるかもよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ