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涙を忘れた少年


突然の報せ


明日は初めての体育祭だ!

クラスのみんなとあんなに練習したんだから絶対成功するはずだ!そんな事を考えていた僕に入った報せは何故か僕にはよく分からなかった


この話は僕が養護施設にいた時の短くとても長い長い話です


明日は中学になって初めての体育祭だ!長縄あんなに回すの練習したんだから絶対100回はみんな飛べるはずだと、僕は明日初めての体育祭の事を考えてはしゃいでいた。その時、僕の担当の先生に部屋にちょっといて欲しいと言われた、意味が分からなかったいくらはしゃいでたとはいえ、うるさく叫んでたりしたわけではない、僕は「どうして?」

と聞いたが、担当の先生は「いいから、部屋でちょっと待ってて」と言った。

訳が分からなかった、だけど先生の目はいつもの優しい目じゃなく、真剣な目をしていた。

僕は渋々部屋に入る事にして先生を待った、2分ぐらいして先生が部屋にやってきた。その時部屋には僕と同室の高校生の男の子がいたけど先生は「ちょっと部屋を出てってもらっていいかな」と真剣な顔でその子に言った。

その子は先生に言われた通り部屋を出て寮の皆がいる居間に行った。

僕はにやけながら、

「なになに?話って」

すると先生は

「みきとくん、落ち着いて聞いて」

「うん、なになに?」

「みきとくんのおじいさんが今さっき亡くなったってお母さんから連絡があったから、お母さんが後30分ぐらいで迎えに来るからちょっと待ってて」

と先生は真剣な顔で僕にその事を伝えた。僕は訳が分からなかった。

ただ、僕の口から出た言葉は「え…」

ただそれだけだった。

なんで?僕は頭の中でずっとそう考えていた。早くないか、いくら癌とはいえ祖父はまだ生きられるってお母さんが言ってたじゃないか、あれは嘘だったのか?僕の頭の中では疑問やどうして?と色々な事が渦巻いていた。

僕が数秒ほど黙って俯いていると担当の先生は

「食堂の人や寮の人にもう少ししたら寮を出るって伝えてきな、多分今は誰かと話して気をしっかりと落ち着かせた方がみきと君にはいいと思うよ」と、そんな事を言われた気がしたがその時の事はあまり良く覚えていないが、その先生の言葉で気を少し紛らわす事が出来たと思う。

この時からだろう、この担当の先生に何度もちょっとした言葉で救って貰ったのは。

僕は先生に言われた通り部屋を出て他の先生にもう少ししたら寮を出るということを伝える事にした。まずは食堂の人に次に先生達に、当時誰先生に何を言ったかはしっかり覚えていないが皆僕に

「ちゃんと挨拶はしてくるんだよもう最後だからね」と同じ様なことを言ってくれたことは覚えている。先生達にその事を伝えていたらあっという間に時間が経ったのだろう放送で僕の名前が呼ばれた「長沢未来翔君、長沢未来翔君、迎えが来たので事務室まで来てください」と呼ばれた。

呼ばれて事務室に行って、行ってきますと寮の先生や担当の先生に伝え迎えに来た車に乗った。迎えに来てたのは母ではなく、当時母が仕事で良くしてもらってたおじさんが迎えに来た。

その車に僕の兄がもう乗っていた。

兄は当時訳あって浜松の施設で生活していた、だから兄と会うのは4ヶ月ぶりぐらいだった。

よく覚えていないが、兄は車の中でもう泣いていた気がした、兄は祖父の事が心から好きだったから辛い事だろう。

僕は兄の様には何故か涙が出てこなかった、僕も祖父の事が好きだったが兄と同じぐらい好きだったかと言われると、そこまで好きじゃなかっただろう。

一緒に居た時間が少ないと云うのもあるが僕は長く居た人を好きになるタイプで、兄は一緒に居た時間が少ないとその人とまだ一緒に居たいもっと遊びたいそう思うタイプで長く居た時間と云うより時間が少なくても、自分を大切にしてくれた人を好きになる、関わりを優先するタイプの人だった。

だから兄は車の中で泣いていた、その時は辛いだろうな、ただそれぐらいにしか僕は思わなかった。

僕と兄は車の中で一言も言葉を交わさなかった。

今はあまり話さないで母が待っている所に着くのをじっと待ってればいい、その内兄が話をしてくれると思うから、兄から話を持ちかけて来るまで黙って外でも見ていよう、僕は馬鹿なりに今できる事を考えた。

結局車の中ではほとんど何も話すこと無く母が待っている場所に着いてしまった、唯一兄に言われた事と言えば「お前は泣かねぇんだな、おじいちゃんが死んだってのに」と兄に言われた、こう言われて自分でも不思議に思った、何故僕は祖父が死んだのに1粒も涙を流してないんだろう。

僕は祖父の事が好きだったのに何故涙が出ないんだろう、悲しいはずなのに。

この時はまだ、兄にあの言葉を言われるまで僕の心が冷め切っているとは思わなかった。

兄と車から降り、母が待ってる葬儀場の中に入るとそこには、何処と無くやつれた母の姿とベットの上で横になっている祖父の姿があった。

兄は横になっている祖父の姿を見てさらに涙を流していた、僕は横になっている祖父を見て涙はやはり出なかった。

何故この時涙が出なかったかは、今でも分からない、ただ横になっている祖父を見ることしか出来なかった。

横で泣いている兄と母をみて僕はこの空間にいるのがしんどくなった、

部屋の外に出て、空気を吸うことにした。

外には母が付き合っていた人がタバコを吸っていた。

この人は後に僕の義理の父になる。

その人は僕に「この後4人で飯でも食べいくか」

「うん」

僕はうんとしか言えなかった。

分からなかった、僕は祖父が亡くなって辛いはずだ、だけどなんで僕は涙が出ないんだろう?

今はそれが1番不思議でしょうがなかった、本当は悲しくないのかな?違う悲しいはずだ、でも涙が出ないだけだ、何故涙が出ないのか。

今でもあの時何故涙が出なかったかはわからない。

何故涙が出ないのか不思議に思っていたら時間があっという間に過ぎて、母と兄と義理の父になる人と食事に行く時間になった。

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