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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
81/162

第19眼 過ちは素直に認めて下さい! の2つ目


「残念だったね。異世界人で勇者である私相手に、自分の常識を疑わずに粋がるからこうなるんだよ。それにだいたい、攻撃手段がないって?」



 転移だと気がついた所まではよしとしよう。それがイコール攻撃手段がない、と言うのは浅はかじゃないかい?

 今回の使い方は裏技だ。もしアイテムボックスがただの転移能力だったとしても結果はあまり変わらない。

 ヒゲの推理につけた80点の理由。減点された20点分の残り。



「転移だと知ってたなら」



 レン大臣、登場。だが、今までとはかなり様子が違う。

 ヒゲの目の前、ただし()()()()()()()()()()放り出した。

 その後物理法則に従って重力に引っ張られたレンは、体を床に強打する。



「ぐがっ!?」



 レン大臣は何が起こったのかわからずパニック状態。説明も面倒なのでアイテムボックスの中へ退場願う。検証実験への友情出演ありがとうございました。

 ヒゲ、取り囲む兵士、そして一部の見守っていた貴族っぽい方々。話が聞こえていたかは不明だし今の検証を見ていない人も多かったが、その光景が目に入った人間は再び声を失っていた。



「ああ、そう。ふぅむ…確かに攻撃のスキルを無効にするスキル?は無敵に見えるよね。じゃあ何故勇者のスキルは効果があったの?はいその通り!もう君は気付いている!これは攻撃じゃない!転移?成る程、転移の力だとすれば攻撃手段がないのではないですか?と言う質問が届きました。お答えしましょう!ヒゲ君の推理は惜しい所まで言ってたけど、一歩足りなかったね。『高い所に転移させて落としただけでも大ダメージはあります』!もしも今回の10倍の高さから落としたら、生きてられる人間ってどれだけいるかなー?少なくとも魔法かスキルを使わない生身だと、奇跡がなければ生き残れないと思うけどね。そこんとこどう思う?」

「っ…う…」

「あ、ちなみに言うとこのスキルは転移じゃないんだけどね。」

「へ!?……は!?」

「さてと。………で、まだ話が続きだったっけねぇ。私の弱点?ねえ、なんの話?」

「あ…ああ……」

「この場に居るほぼ全員がスキルを持ってるみたいだしさ、」



 聞こえていた全員が、一瞬で身構える。だが無視して話し続ける。



「王もミドリーちゃんと同じようなスキル持ってるみたいだし。私のスキルが、攻撃スキルじゃあなかった、ただそれだけで自分や王族含めて皆が皆安全だと思っちゃったのかい?だが残念だね。全員、平等。全員が平等に罰の対象だ、全員が平等に、裁きの対象になる。で、だ。どうする?君は私と平和について話し合う和平の使者かい?そろそろ話し合いでもしようか?」

「ば、馬鹿な!こ、これだけの事をしておいて、話し合いなど、今更!!」

「はあん?何をおかしな事を言ってるんだい。これ以上の事をしようとしてたじゃないの君達は。最初から言ってるけど、話し合いを拒否したのも、敵になったのも、先に暴力をふるったのも、脅したのも、ぜんぶぜんぶぜーんぶ君達じゃないか。でも歩み寄れないと言うならまあ良いよ。好きな奴からかかってきなさい。これから先、私に攻撃するたびに、この国にとって大事な物を一つずつ失ってく事になるだろうと予め言っておくよ。」



 長話をしている間に、キーロをはじめとしたミドリーの容態を見ている人間以外がこちらの話に耳を傾けていた。

 だがやはり、その中で自分勝手に意見を述べる物は居ない。

 積極的に話をしていた王妃・レンがいなくなりミドリー・ヒゲが口を出さず、キーロとアッカーがミドリーにかかりきり。なら、もう後は王様位しか喋らないんじゃないだろうか。だから、王様に向き直り、今私が思っている事を本音で伝えてみる。



「…話がないなら私は退場させて貰っても?」

「ふざけるなぁ!」



 レンと同じような台詞が。デジャヴ?

 それにしても人聞きの悪い事を。

 別にふざけてなどいない。

 ミドリーちゃんの治療で一旦話し合いは中止になるでしょ?

 だったら退場したって良いじゃない。

 もう飽きたし、そろそろおなかが減ってきたのだ。



「治療士はまだか!」

「ミドリー!ああそんな!ミドリー!ああああ!アイ様の嘘つき!」

「うぇ!?う、嘘?」



 アッカー王子の横でミドリーちゃんの様子を見ていたキーロが、突然私の元へ来て飛びついて来た。嬉しいけど嘘つき呼ばわりは悲しいよ!



「ミドリーが、ミドリーが死んで、死んでしまいます!こんなの違う!こんなはずじゃ、私、こんなふうにして欲しかったんじゃ!あああああああ!」

「えと…、死んじゃう?って、え?その程度で?え、だって、治療できないの?」



 アッカー王子、おこ。顔が激おこ。



「治療士が来ても、この状況じゃ助かるかどうか…」



 顔は確かに怒っているはず。なのに、「お前のせいだー」とか言って殴りかかってきそうな顔なのに、冷静に質問に応えてくれる。ああ、これはこれは、なんと立派な青年だ。


 え、あれ?……でも、だって……おかしくない?



「だってみんな、スキル持ってるでしょ?……回復スキル持ってる人が治療すれば?なんでしないの?居ないの?」

「こんな状態、どうにかできるスキルなんてない!!」



 既に我慢の限界は超えているのに、必死に噛み付かないように抑えているらしい。もう一度地雷を踏んだら多分王子の理性がサヨナラするだろう。

 語気の強まったアッカーの声が響く。「どうにもできない」と言うその言葉が引き金になったらしく、キーロが崩れ落ちる。



「ああ、ミドリー!私が、あんな事言ったから!ごめんなさい!でも違うの、私、こんなつもりじゃ!ごめんなさい、ごめんなさいミドリイィ!」

「勇者を殺せ!」



 えー…。このタイミングで王様がプッツンしてしまったらしい。



「やめろ父さん!皆も、手を出すな!!勇者を殺せば、母さんは、二度と戻って来ないんじゃないのか…!?そんな事もわからないのか!」



 ナイスフォローだよ王子。でも別に君らのお母さんを盾にするようなつもりはなかったんだよ、なんかごめんよ。

 怒り心頭のはずなのに誠実な対応をしてくれる王子に、なんだか急に申し訳ない気分になってくる。


 キーロは少し冷静になったようで、もう一度私に近づいてきて、足元に片ひざ立ちで祈るような姿勢をして、私の手を握った。

 涙と嗚咽でキーロの言葉はぐちゃぐちゃになっていた。


 そんな事をしないで欲しい、せっかくの素敵なドレスが汚れちゃうじゃない…。



「ごめんなさい、アアイ様。でも、こんなの、私、あんまりで、もう、これ以上は!どうか、この国を、許して下さいぃ!どうか、アイ様あぁ……ごめんなさい………」

「キーロちゃん…」



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