表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
77/162

第18眼 選択の結果をご理解下さい。 の1つ目


「えー、もうわかってる人も大勢居るみたいだけど改めて。」



 レンとミドリーちゃんも気になってるみたいだけど、この場の全員に届くように意識して声を張る。声を張った事なんて暫くないから違和感が凄い。会社でそんな声出す事もなかったしなー。そう考えると学生時代以来かな?多分、あまりさまになってないだろうなぁ。



「まずなんでこんなクイズ大会したかって話からだけど、最初に言った通りなんだよね。私が何に怒ってるのかすら理解してないアホが多くて、とっとと終わらせたいのに話は進まないし戦いもしない。いい加減我慢の限界だったのよ、正直言ってね!えっと、それで何が言いたいのかってーと。これだけ話が食い違うのは、もしかしたらお互いの価値観が違う事による不幸なすれ違いの可能性も、ちょっとだけあるかなって思ったわけよ。」



 『価値観の相違』。『音楽性の違い』や『生理的に無理』等と並んで、どう考えても理不尽なのにこれを理由に人との関係性を一方的に断絶しても何故か許されちゃう最強の言い訳TOP3。

 でも、私が今回言いたいのは少し違う。



「人の価値観って同じじゃないよね。みんな微妙にズレてるじゃん?個人の性格とか、歩んできた人生による違いも勿論あるだろうけど、私としては環境による常識の違いって結構大きいと思ってるわけよ。国とか地域は勿論、家毎でもさ。ほら、隣の家と自分の家じゃ習慣も決まり事も全然違う……ってのは良くあるよね。…良くあるよね?後ほかにも職業とか、友人関係とか?となれば当然もっと大きな範囲で、住んでいる世界が違うと、それぞれで常識が違ったりするんだろうか?って疑問に思ったわけよ。なにせ私は異世界から召喚された身なんで、もしかしたら今まで生きてきた世界が違うから、君らと私の常識が食い違ってて、だから私が怒ってる理由がわからないんじゃないかなーって結論に至りました。なのでセステレス代表としてレン大臣君とミドリー姫ちゃんにお答えいただいたわけです。まあ結果、少なくとも今回の件に関しては、私と君達の間に大きな価値観の違いは無さそうだなと思いました。なので、私が怒ってる理由を、君達は理解できるはずだと言う事です。………まだわからない人も多いのね?気付いた人も結構居るんだけど、違いはなんなの?ただ単に頭が悪いの?」



 ここまで言えばわかるかな?と思ったけど、新しく気がついた人は殆どいない。どうやら私にはスピーチの才能も無いらしいですよ?あるとも思ってなかったけどさ。

 ともあれ、ここまで情報を出しても気付く様子すらない人達(レンとミドリー)の為には順を追って説明する必要があるらしい。



「…わかったよもう、君らの理解力に期待した私が馬鹿だった。じゃあ答え合わせ行こうか。まず第一問から。問答無用で無理矢理拉致された場合、自分を拉致した犯人や犯人グループの長を敬いその人の為に率先して人殺しをしてくれますか?答えはノーでしたね?正解です。」



 追加で、全体の2割弱が気付いたらしい。ハッとした顔でこちらを見た。



「第二問。拉致した相手が国王だった場合なら、王を崇めてその国の為に一生懸命働いてくれるよね?と言う質問。こちらも回答は満場一致でノーでした。さらに三問目。それは私、今回で言う所の拉致の犯人相手に限った話ではなく、逃亡先の既存国家の国王からの命令ならば敬って従って当然だよね?と言う質問の回答も変わらずノー。結果、拉致され逃亡先の見知らぬ国の王から命令されても従わないのが普通!そんな事を受けいれられる人間は頭がおかしい、との回答でしたー。」



 もう既に8割程が理解しているようだ。

 レンも気付いたらしく、目を点にして私を見ている。

 今更何に気がついて何に驚いているんだろうね?別になにも特別な事は言ってないよ?私がさっきしたクイズの問題と回答を、要約して復唱しただけ。



「で、最後の二つ。拉致した本人も困ってるんだから、許して味方になって一緒に頑張ってくれるかな?と言う質問。そして拉致された後、謝罪の品として何を贈呈すれば許してくれる?と言う質問の回答。二人とも細かい部分は違うけど、『今持ってる物は掛け替えのない物で、それらを全て奪われたなら何を用意されても許せるわけがない、味方になんて絶対にならない!』と言う結果でした。あ、レン君は一応、一国をまるまるプレゼントした上で拉致の犯人を献上して元の家に帰れるなら受け入れてくれるって事だったね。」



 どうやら最終的にわかった人間は、ほぼ変わらず8割程までのようだ。

 因みに王族の中ではキーロは第一問の途中で気付き断トツのトップ。2問目か3問目の時に国王が、さっきのレンと似たようなタイミングでアッカー王子が気付いた模様。金銀さんもミドリーちゃんも未だに理解に至らないらしい。


 残念な事に、気付かない人間がこんなに居るとは。

 まあでも、逆に言えば、冷静に頭を使いさえすれば8割程の人間が気付く程度の常識問題と言う考え方もできる。

 その常識問題で、この国は、最大の誤答をやらかしたのだ。



「二度目の自己紹介が必要なようだね、まだ気付いていないアホ共。改めてよろしくね、私は勇者。こことは違う世界に住んでた者だ。私が住んでた世界はそれはもうこんな殺伐とした場所よりも居心地の良い平和な世界で、できるならずっとそこに居たかったんだが、何処かの馬鹿共に無断で有無を言わせず無理矢理突然、このセステレスと言う世界へ召喚と言う名の拉致されて参上仕った者だよ。当然元の世界には財産と、社会的立場、住み家、そして何よりも大切な大切な可愛い妹を残したまま、何一つ自分の意思で持ってくる事も叶わずここに手ぶらで来る事を余儀なくされた、哀れなか弱い女の子さ。ところがそれだけに留まらない。更に驚くべきは、拉致した国の国王が私を攫って来た事に対する謝罪も私が失った物の弁償の話もせず、厚顔無恥に『僕達の敵になった人間を殺してね!』だとよ。馬鹿か?あ?馬鹿なのか?」



 ようやくほぼ全員になった。

 本当に、ようやくだ。本当に、長かった!

 これでやっと無駄な話が無くなる!



「レン!大臣!」

「な、なんだ…」

「私が、王族に対して無礼だとか言ってたっけねえ?言ってたよね?君が隣の国に拉致されて隣の国の王様に敬語使うの?王様の命令だからーって素直に従うの?しないんでしょ?ねえ、しないって自分でさっき言ったもんね?だからわたし言ったよね?だから私、ちゃんと自分の頭使って考えてるか聞いたよね?黙って従っておけば良いんだとか言ってたっけ?私の扱いおかしいよね?ねえねえねえ答えてよ。私があんたらの敵か味方か以前に、お前らが私の敵なんだって言ったよね?今ならわかる?わかるよね?なんでさっきわからなかったの?考えてなかったからだよね?考えた今ならわかるんだもんね、おかしいね?それでも君らの話を聞いてあげようとしただけ随分私は理性的に接してあげたと思うんだが、この国の人間達の態度きたら、どうだい。私が腹に据え兼ねる思いの欠片でも良いから、理解してくれただろうか、レン。」

「……」

「まあ?今更理解されても、別に無くした物が返ってくるわけでもないし。何もかも手遅れなんだけどね!」



 レンの頭の上に手を乗せ、ゆっくりゆっくりと力を込める。

 アイテムボックスは未だ出口専用。このままだと彼の頭が夏の風物詩、スイカ割り状態になってしまう。今の私がそのつもりになれば簡単にできてしまう。でもそうならないように、力加減をしながら、本当に徐々に、ゆっくりだ。



「価値観が、常識が違うなら仕方がないかと思ったんだがそうではないらしい。不幸な行き違いなら、少しはこの怒りも収まるかと思ったがそうではないらしい。」

「い、痛…」



 一瞬だけ出し入れ可能にし、先程と同じようにレンの口と鼻がアイテムボックスの中に入るまで押し込んだあと直ぐに、出口専用に戻す。まだ言い足りない事があったから耳は意図的に残したが、ちょっとだけ頭が前のめりになった気がする。



「この国の、中でも君やミドリーちゃんを含む何人かの、私に対する発言や要求は非常に自分勝手であり不当な扱いだったと認識しているよ。君達との答弁でそれがわかっただけでも収穫だ。更にいえば、言動だけではなく君は私の手足を潰すとか、殺すとか言ってたっけ?酷い酷い。ああ、そう言えば忘れてた、遅れたが結果の通達だ。私に対して馬鹿らしい事を言った大馬鹿共をどうして解放してやらなきゃならんのかと。なので君達はこのまま捕虜にするよ。アイテムボックスの中で何が悪かったか反省しておきなさいな。」



 そこまで伝えて満足。かなり頭は痛そうだったけど、まだ大丈夫のはず。

 レンの頭が出ているアイテムボックスを入り口専用に変更。そのまま押し込み、手も合わせて入った事を確認した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ