第2眼 名前を正しく覚えて下さい! の3つ目
「そもそも、なんで私なの?」
「適格者の中で、一番勇者としての資質が高い人が自動で選ばれてしまったのですよー」
「あ、じゃあ私、そっちの世界に行ったら最強だったりするんだ?」
「…さあ?」
首を傾げる女神様。
どういう事だ、おい。
「あ、や、だって!ちゃんと資質分は強くなるのですよ!?でも、今回については一概には言えないと言うか、御自身の采配にかかっていると言うか、ですね?」
「…じー」
「いやあぁあ!召喚したのは人間ですし!私じゃないのですよぉ!」
おっと、脅迫するような目で睨んでしまっていたらしい。…いや?私はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ問い詰めるような目線をしただけのつもりだったのだが。
まあ女神様の言う事も一理ある。…あるのかな?なんだかおかしい気もするけれど。
あ、そうか。
何がおかしいって、人間に召喚されたのに、最初に出会うのが女神様。
これ、なんか変くない?
そう、あくまで読んだ事のある小説知識内での異世界あるあるだが、人間に召喚されたらその人間のもとに突然呼び出される事になるのだ。召喚した者のもとへ召喚された者が行く。ほら、普通。
対して女神様に出会うのは、現実の世界で死んでしまった場合等が大半を占めるだろう。
異世界の人間に召喚されて、召喚された私は女神様の前に居ます。…それでは、異世界の人とやらは私とこの女神様を出会わせたかった?ますます意味不明だ
「説明を要求する」
「むー…あの、ですね。実は今回は、召喚自体が間違いみたいな物で、本当のそれとは、違うのですよー。」
「じゃあまず、本来の召喚についてと、今回の相違点について。詳しく。」
「はい。異世界勇者召喚の儀式は、ずーっと昔に私が神託してあげたモノなのですけれど」
「やはりお前か」
「続きも聞いて欲しいのですよ!…で、ですね。えっと。その時は、もうそれはもの凄い数の魔獣や魔族等の魔物たちがわんさかと、大量に増えていった結果、人類は滅亡しそうになったわけです…私の世界で。私の名のもとに繁殖させて、手塩にかけて汗水たらして蝶よ花よと心血注いで、ようやく繁栄が軌道に乗り始めた、かわいいかわいい子供達が…!」
「ああ、それは、それは。」
さっきその人類を、あれやこれやしか脳みその無い猿とのたまっていた気がするんですけども。
「その時与えたのが勇者召喚の儀式魔法なのですが、本来はもっとオートマチックでシステマチックな物なのですよー。適正者の選別も一から人間にさせようとするとどれだけの魔法士を消費するかわかったもんじゃないのですよー。」
「消費、ね。聞くだに恐ろしいわ。」
「軽く見積もって、まあ、数千って所だとは思うのですが。」
いや、そんなの、魔物より先に魔法士が絶滅危惧指定だ。
同時に、それだけの数の魔法使い…魔法士とやらが存在する世界なのだろう。
ああ剣と魔法のファンタジー、おそらくずいぶん魔法寄り。
「ですので、あらかじめ候補を私の方で見繕って、私の世界の因果と繋いでおくのですよー。そうすると、人間の儀式に合わせて、こう、ヒョイっと。専用の『神の間レプリカ』に連れて行かれ異能力を持っていくわけです。」
「ヒョイっ」の部分で、一本釣りでもするようなジェスチャーをする女神。
そして説明がひと段落ついたからか、若しくは自分の作ったシステムを自慢できて嬉しいのか、なんとなく誇らしげだ。外見年齢相応にはある胸を、更に少しだけ張って。