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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
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第14眼 家族は仲良く話して下さい! Side A 2

「そろそろ時間だ。どうする?ミドリーちゃん。」


 ミドリーちゃんの返事は、まあ聞かなくても予想はついてた。

 幸せそうな笑顔。でも、優しくない顔。

 その顔を私は知ってる。

 他人を見下している人間がする笑顔だ。

 本当の優しい笑顔とは目が違う。

 その目には、慈しみがない。

 私のよく知る表情だ。



「だあぁぁあああれが聞くかよー!!このバーーーーカ!!!キャハハハハハ!!!」



 キンキンと耳に障る声。

 私と違って愛らしい顔をしているのにね。

 本当に、醜い笑顔だ。



「キーイーローォオ。アンタの魂胆なんて丸わかりなのよー!は、何?私が居ない所で何話したのか知らないけど、お父様とお母様に変な事吹き込むつもりなんでしょ?そこまでして自分の立場守りたいわけ!?浅ましいったらありゃしない!違うってんなら、今ここで話せば良いだけじゃない!それができないって事は、あんたが悪巧みしてるって認めてる何よりの証拠なのよ!誰がそんなアホみたいな手にひかかるかってのー!ハー、最っ高!」

「…ミドリーちゃん。君の答えは、NO。それで良いんだね?」

「私が答えを変えるはずないじゃない。当然よ。それと…その不愉快極まりない呼び方については、後でキッチリ話をつけましょ、でもこの場では許してあげるわ。なんたって、今あんたのおかげで最高にスカッとした気分だしね!」

「そうか。………もし、これから先、今の選択が間違いだったと思う時があれば、キーロちゃんがどれだけ必死に説得してたか思い出すと良いよ。君のお姉ちゃんは、ちゃんとお姉ちゃんしてたぜ?」

「はぁ?意味わかんないんですけど。」

「今はそれで良いさ。」

「アイ様ぁ!」



 糸が切れた操り人形のように動かなかったキーロが、突然跳ねる様に私の足へ縋りつく。



「あ、どうか、どうか、アイさまぁ…」

「キーロちゃん、泣かないで…全てのお願いは聞いてあげられない。けど、キーロちゃんの悪いようにはしないさ。」



 手を出してこない限りは、ね。私からは手を出さないつもりだから。

 先に手を出したら負けってのは、いかにも日本人的な考え方かもしれないけどね。

 正当防衛って奴だ。



「人間は完璧じゃない、間違える生き物だ。でもそのたびに天罰が下ったりはしないから、自分が何処で間違えたのかわからずに生き続ける。」



 私の知るミリアンは、自分の世界の未来を憂う優しい神様。

 だが、浅慮でも狭量でもない。

 軽々しく天罰を下したりはしない。

 大切に見守る神様だ。

 それはチャンス。

 でも、味方を変えると、性根が腐った人間をとことん堕落させる優しさでもある。



「でもそれは、間違えても、まだそこから先が、チャンスがあるって事でもある。チャンスは一度きりじゃない、でも無限でもない。何度失敗が許されるかわからないなかで、必要な時にチャンスをモノにできるかは、本人達次第だ。」



 だけど、多分ミドリーちゃんは気がついていない。

 目の前に居る私が、自分に与えられたチャンスを、最後(ラストチャンス)にするかもしれない存在だと。

 自分は今この瞬間、してはいけない間違いをしているのだと。


 気づかせてあげるのが、私の役目かもしれない。



「君はできる事をした。他にできる事はもうない。後はもう、………聡明な君が、キーロちゃんが大好きな家族を、信じる位の事しかできない。」



 キーロの頭を一撫でして、綺麗なドレスを汚してしまわないように一歩下がる。

 そしてもう一度、王様と御妃様へと視線を向ける。

 いい加減、不要な腹の探りあいにはうんざりした所なんだ。



「さて、お待たせしました。」

「いえ、不出来な娘が迷惑をおかけしました。…ムース、連れて行きなさい。」

「それだけどさ…できれば、キーロちゃんはここに居させてあげてくれないかな。」

「いいえ、また同じ事をしないとも限りません。」

「もしこれ以上この場に支障が出るようなら、私が全力で止めるよ。」



 まだアイテムボックスの中に人間を入れた時の安全確認が終わっていないが、私の想像がそのまま能力になっているのだ。ほぼ間違いなく安全だろう。なので場合によっては、キーロをアイテムボックスの中にしまって音だけ聞こえる状態にもできるだろうかと考えた。

 彼女は姫と言う立場ある人間で、その上どうやらあまり押しが強くない人間だ。私が原因で王様候補から遠のくような事はできるだけ避けたい。せめて私の返答が終わるまでは、近くで聞いていて欲しい物だ。



「それに、仮にもこれから先も国の為に生きていく王族が、この話し合いの行く末を見ずに居て本当に大丈夫なのかい?」

「…行く末?ここで聞かせなければいけない話など思い当たりませんが。」

「そうかい。なら、とっとと話を終わらせよう。先に私から意見を一つ聞いてほしい。その方が早い。良いかい?」



 さて、いい加減飽き飽きしていた所だ。

 馬鹿の相手も、長話の相手も、これを言ったらようやく終わるだろうか。



「この度の戦争・軍事活動への協力依頼についてですが、謹んでお断りさせていただきます。今回はご縁がなかったと言う事で。」



本日のミリアン一言劇場

「うわあああ!ストレート過ぎるのですよー!ドンパチ刃傷沙汰にする気満々じゃないですか!」

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