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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
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第12眼 現状を詳しく纏めて下さい! の2つ目


 私が思い描くセステレスでの異世界ライフは、別に楽しい物じゃない。

 ミリアンが育てた世界を見て回りたいと思う部分もあるが、恐らくそんなにのほほんとした旅路はできないだろう。

 この世界の人類は既に、人間を兵器として認識できる程に、戦いに毒されている。それが何処まで影響を及ぼしているかはこれからこの目で見るしかないが、この世界を歩くなら奪い合いと殺し合いを覚悟する必要がある事だけは、疑っていない。

 自分が生きる世界とは違う、異世界。

 違う形で経験してたのだとしたらもっと感じ方は違ったかもしれないが、最早後の祭りだ。

 私は既にここに居る。



 最初ミリアンには帰りたいと正直に言ったが、意見を覆してここに来たのは、見ず知らずの命が私の選択で消える事を良しとしなかったから…なんて事は、ない。

 私はそんな殊勝な人間ではない。

 人間なんて多くても少なくても、居ても居なくても、生きてても死んでても、殺しても殺されても、どうでも良い。大切な人間以外がどうなろうと、腹の底からどうでも良いではないか。人間とはそういう物だ。私とはそういう人間だ。

 じゃあ私は何故、元の生活を捨てて異世界に来る事を決めたのか。

 元の生活に執着がなかったから、異世界に興味があったから。

 そして、自分の世界が愛おしいと言う可愛い女の子(めがみ)に頼まれたからだ。

 人からすれば、それはただ、状況に流されたのだと言うかも知れない。いや、まあそうかもしれない、自覚はある。否定はしない。異世界と聞いて気分が高揚したし、ミリアンの困った顔を見て手伝ってあげたいとは思った。私は大して、そんな流れに抗わなかった。


 だが、異世界ライフは私が最初に想像したよりかなり殺伐とした物らしい。

 それでも私は、ここに来ると決めた。

 なぜ、こんな世界だと知っても召喚されるに身を任せたのか?

 考えの足りない召喚主を一発ぶん殴りたくなったから、自分の身を守れる程の力は貰えると聞いて安心できたから。

 そして、無知なまま危険な異世界で利用されないよう尽くしてくれた命の恩人(めがみ)に頼まれたからだ。


 説明を聞いて、ふざけるなって思いもあった。けど、そんな私が掌を返して断るかもしれない事を織り込み済みで、私が理不尽にさらされないよう全てを打ち明けてくれたあのお人良しな女神様。自分の不利になる事まで、包み隠さず全てを言った上で、私に選択を委ねてくれた。決して最後まで強要する事はなかった。

 『応えてあげたい。』

 それが、私の中に生まれた気持ちだ。


 流されてはいるが、拘りも意思もなく流れに乗ったわけじゃない。

 覚悟も、決意も。この世界を生き抜くのに必要な分だけ備わってる自信はない。だが、一応持ってきているつもりではある。 





 一番心配なのは、そんな世界を生き抜くべき私が、今日まで19年と少し生きてきた世界は、地球の中でも上から数えた方が確実に早いと断言できる程戦争から遠のいた平和な国だった事だ。

 人を計画的に傷つけた事はない。したいと思った事はあるが。

 殺人をした事等あるはずがない。したいと思った奴はいるが。


 この世界でそういった類の覚悟は間違いなく必要だ。

 そもそも力を振りかざしてくる人間には、躊躇いも同情も沸かない。

 それが出来るだけの力が、私にはある。

 だがしかし。

 いざ本当に、土壇場になって、人を殺すのに私は力を使えるのか?

 幾ら強大な力を授かっても、自分に危険が迫った時に、存分に振るえないのなら意味がない。

 そう気付かれれば、なめられる。


 だからいざと言う時に備えて、この国で、できれば一度人を殺す位の事はしておきたい。


 無論、積極的に殺人を行いたいかと言うとそれは違う。さすがにそこまで倫理観に欠けた危ない人間であるつもりはない。

 だが、逆に、今程の絶好の機会はそうないとも思う。

 私の日常をぶち壊して勇者に仕立てようとしている元凶で、ミリアンを困らせる戦争好きなこの国。

 この国以上に私の事をなめていて危険が少なく、人を殺しても後腐れがない状況など、今後直ぐに出会えるかわからない。


 別に実行場所がここである必要はないが、ここが一番なのだ。

 大きな事をするにあたって「大義名分がある」って事は、精神衛生上とても良い事なのである。

 そう、それが今回のコンセプト。私のスタンスだ。

 この国の人たちに私がされた事を考えると、何をしようが罪悪感なんて沸かないだろう。

 私が気に入った人物以外、全員骨の髄まで穿り返して美味しく調理させて貰うのに全く抵抗がない。まさに持って来い、まるで宝の山、さながら食材の宝庫と言う訳だね。


 煮ても焼いても蒸しても良い、そんな食材がまな板の上にあるんだ。

 ほら、楽しくなってきたじゃないか?

 どう料理してくれよう。



 私は長時間思考に耽っていた事を思い出し、左目を開けた。

 キーロちゃんはまだ来ていないようだ。

 はあ…。どうやら一人で王様に会いに行かなくちゃならんらしい。誤算だ。


 おーっと!これは思わぬ大誤算!

 ねえ、私王様と会うのに、挨拶の仕方とか知らないんですけど?

 え、お姫様なキーロちゃんが私を導いてくれるんじゃないの?

 一人?そっか一人かー。

 良く考えれば例え一緒に入ってきても、私は謁見する側の人間で、キーロちゃんは王様側の、謁見される側の人間じゃん?王様の側に立つわけじゃん?

 ハハハ、そりゃそうだ!一緒に入らない、シカタナイ!ハハハハハ!

 ……せめて、事前に一言くらいほしかったと思うけどねっ…!


 やっぱり何かの間違いで、実はもうそろそろキーロが入ってくる可能性はないか?と考えて扉をじっと見ていると、二人いる内の一人の騎士(高級)が睨んで来た。早く行かないのか?怪しいぞ、と。

 仕方なしにもう一人の騎士(普通)が示すまま、赤い幕を迂回して向こう側へ。

 視界が開けると、そこで初めて部屋全体の様子が目に入った。


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