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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
22/162

第7眼 姫様は優雅に笑って下さい!Take2 の3つ目




 断る。



 あえて、キーロに言ったのと同じ言葉をもう一度返した。あの時は直ぐに後悔したが、今回それはないだろうと確信している。


 その瞬間。

 コピー紙を握りつぶしたみたいに、くしゃっ、と余裕の表情が憤怒に一変した。



「…はぁ?王族、だって、言ったの!聞こえなかったあぁぁああ!?」

「姫様。」

「何よ!?」

「そこな女も、突然つれて来られた国で、天上人の言葉だと言われて、ピンと来ないのでしょう。察しろと言っても…下民とは、そういう物です。でしょう?」

「フンッ…」

「ニール!?」



 静かにだが、高い位置から投げかけられる低い冷静な声。どうやら彼がニールと言う名前の、ミドリーのお付きらしい。

 


「先程も申しました通りです。…共に歩かずともよいのですよ。」

「…わかってるわよ」

「ニールあなた、ミドリーに何を言っているのです!?」

「アーサー様…なに、ただの簡単な、儀式のようなモノですので。これ以上は姫も、そう、そういう事は申し上げませんので。どうかご容赦を。」

「ニール、貴方は止めるべき立場のはずよ!」

「姫様も。順番を間違えただけなのです、順番を。…そうですね?」

「ええ…そうね。確かに、少し間違えたかもね。少しだけ。」

「ミドリー…?」

「…仕方ないわね。勇者。」



 ニールを見上げていた顔を再度こちらへ向けてくる。

 勇者と呼ばれて一拍空くが、返事はしない。



「…じゃあ、一緒に歩かなくても良いわ。契約…約束ね。約束しなさい、この私と!お父様とお母様の話を聞くって!」

「もともとそのつもりだけど」

「約束、しろっていってるの!私と!あんたの気持ちとか、理由なんてどーでも良いのよ!今すぐ、わかったって言えば良いの!」



 ニールは満足した顔で、しかしミドリーに「姫様」と、一言静かに言う。

 キーロは美しい顔を苦しげに歪ませて、ミドリーの代わりに小声で謝罪をしている。



「なんなら、そう、それだけで、さっき言ってた分の半分位ならあげるわよ!」

「…わかった。」

「っ…!そうよ、良く言ったわ。最初からそう言えば良いのよ。」



 ミドリーは騙されたバカを見るような顔で私とキーロを見たあと、ニールを見上げていた。ニールはミドリーに耳打ちしながら、お付き全員と廊下をまっすぐ歩き始めていた。

 ミドリーはすでにどうでも良かったが、申し訳なさそうに立っているキーロを見ていると、とっとと話を切り上げたかった。

 だが、ミドリーは立ち止まって振り返り、更に言葉を加えてきた。

 一秒でも早く視界から消えて欲しいのに。



「聞きなさい!もしその女が、私と同じような約束を持ちかけてきても、みんなの前で聞かれたら、私と約束したって言いなさい!そうすれば、その女の倍まで出してあげるわ!」



 最後まで不愉快極まりない台詞を吐いて消えようとするミドリーに、少しだけ悪戯心が芽生えて、今度はこちらから呼び止める。



「ちょっと待ちなさい。」

「何よ!?下民が命令-」

「誰か、一人。証人が居た方が安心できるでしょ?お互いに。だからそっちの付き人で信用できる人を一人、置いて行ってくれない?…そうすれば、ね?」



 ミドリーは即座にニールを見上げ、ニールは目を瞑る。

 それを見たミドリーは、先程とはまた違う嫌らしさを持った、自分の成功を確信したような、または井の中の蛙を見下ろすような目をして笑った。ああ。姫らしからぬ、汚ねぇ笑顔だ。



「それは、そうね。……ロウ、残りなさい。」

「ハッ…」



 ロウと呼ばれた護衛風の若い男だけが踵を返して戻って来る中、残りはそのまま廊下の奥へ足早に歩いていく。

 ロウの髪は殆ど白に近い色だったが、後ろに下げている1房分の先だけは真紅に染まっていた。

 顔だけを見ると幼さが見え、ミリアンと同じ位かと感じた。ただ、日本の身近でムッキムキの男子とお近づきになる機会があったか?と聞かれると閉口するしかない。その程度の交友量な私的感覚からすると、平均的な若き少年と比べれば鍛えられた腕の筋肉が、『童顔短身長なだけで、逆に少し年上くらいの可能性もあるかもしれない』とも思う。


 ミドリー達が随分離れて声が聞こえなくなった頃、キーロが動こうとしたが手で制した。


 キーロちゃんに謝らせる必要はない。それに、まだ早い。


 長い廊下の随分先を左に曲がりようやくミドリーの姿が見えなくなって一息つく。






本日のミリアン一言劇場


「コイツ、天罰下してやろうか!いや、気持ちはわかりますけれど!ゴロツキみたいとか!愛さ、愛お、ぉ姉ちゃんを馬鹿にして!気持ちはわかりますけれどー!」

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