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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
20/162

第7眼 姫様は優雅に笑って下さい!Take2 の1つ目

本日も一話分投稿。

次話は今週中に出せるかわかりません。


毎日一話投稿している人はきっと魔法使いか何かだと思う。




「…それで、今回召喚に応じていただいた勇者様は、アイ様…一人と言う事でよいのでしょうか。」



 まさか、無許可で呼び出しておいて選り好みでもするつもりだろうか?それとももっと連れて来いよとでも?とほんの少し嫌な気分になったが、キーロ姫の探るような声には心配そうな感情以外にも、どこか期待や安心に似た物を感じた。


 そこに再度、先を歩いていた女性護衛(その1)が窘める様に短く、「姫様」と呟くが、それを無視してキーロ姫の問いに答える。



「さあ、どうだろうね?少なくとも私は、他に勇者が来るなんて話しは聞いてないよ。私が知らないだけかもしれないから、絶対にとは言い切れないけど。」



 その返事に対して漏れたのはやはり、安堵を含んだため息。どうやらそれこそ、姫様が望んでいた方面の答えのようだ。

 キーロ姫が微笑む。やっぱり美少女には笑顔が似合うなと思った。


 女神様は言ってませんでしたよ?なんて言って信じて貰えるだろうか。信じられたとして、万が一ミリアンの言い忘れなだけでもう一人到着したりしたら、信用がた落ちだ。黙っておこう。



「そう、ですか。ご丁寧にありがとうございます。」

「いえいえ。」



 我ながら、一国の姫に対して随分な態度を取っている気もするが、今の所それについては不快感をあらわにして睨んできたり等はない。心の中でどう思っているかまではわからないけど、態度に出さないならそれは無いのと同じだ。私が思い悩む必要はない。

 そもそも敬語を知らないわけではないが、普段から気にして使っていたわけではないので、しっかり使える自信もない。

 身分とか考えずに生きてきた粗野な小市民としては、元々相手への尊敬が一切ない現状も相俟って、敬語を意識しなくて良いのは非常にありがたい。


 護衛からの一言があったせいか、その先に会話は続かない。

 結局キーロ姫からされた質問の意図はわからないままだ。


 よし。沈黙が耐え切れなかったわけではないけど、静かになったこのタイミングで気になった事を聞いてみよう。



「キーロちゃんはさ」

「キ、ィロちゃん?」

「あ、ダメだった?」

「え、いえ、どうぞ…その、ご自由にお呼びください。それで、何でしょうか?」



 流石に少し慣れなれし過ぎたかと思ったが、本人から承諾をいただいたので問題ないだろう。……もう一人、姫様の更に前方からはもの凄く訝しげに睨まれる気がするが、問題ない。



「ああ、キーロちゃんは、次期王様だったりするの?」

「貴様!」

「ムース!?」

「んあ!?…ああ!」



 先程から何度もキーロを窘めていた女性、姫様にムースと呼ばれた女性は、今度こそこちらへ敵意を向けて来た。

 足を止めて武器を向けられた為、行軍は当然そこで一時停止だ。

 それを見て流石に、自分がした質問が、実はかなりデリケートな問題なのかもしれない事を思い至る。


 色々な本を読んでいるなら、必ずどこかその名に出会った事があるだろう。そう、アーサー王。

 『名前がアーサー?王族で名前がアーサーなの?円卓なんちゃらで有名な某王様となにか関係が!?じゃあやっぱりゆくゆくは王様になって政権も聖剣も手にしちゃって!?…魔法があるだけで、もしかしたらここ、地球と何か繋がりが!?』と思って探りたくなった事、誰が攻められるだろうか。いや、攻めないで!



 しかし、国王が健在であり、さらに王位の継承候補が目の前の少女だけではなかったなら…この質問に対する返答は場合によって、YESでもNOでもそのどちらでもなくても、とても重い意味が生まれるだろう。

 そして声を出して警戒心を剥き出しにする女性の態度はつまり、その『少女以外の王候補が居る』と言う事に確信を得られる程の物だった。



「ごめんごめん。答え辛かったら別に良いよ。成る程ね。キーロちゃんは姉妹とか…いや兄弟?居るわけだ?」



 護衛?のムースさんは、目をギョッと開いた。もしかしたら、自分の態度が姫様に兄弟が居る可能性を示してしまった事に思い至り後悔したのかもしれない。

 ただ姫様の方も少しは驚いていたが直ぐに答えてくれる。別段隠す事ではなかったらしい。私への返答をしながらながらムースさんに先へ進むよう促し、一呼吸おいて姫様本人も再度歩き始めた。


「ええ、はい。同じ母を持つ兄と妹が一人ずつ。他にも沢山居るそうなのですが、」

「ああ、腹違いの兄弟姉妹か。で、顔も合わせた事がなかったり。」

「っ…!?え?ええ、はい。一応何度か顔を合わせた事がある子も居ますが、なにぶん数も多くて。と言うか、えっと、ご存知なのですか?」

「実際の事情は知らないけどさ。同じ母で二人居ますって言って、残りは兄弟なのに、『他にも沢山居るそうなのですが』…なんて、顔覚えてたら言わないじゃない?普通。」

「…ええ、まあ、はい。そうですね。」



 なんだか、姫様に警戒されてしまったようだ。

 …まあさっきの質問を思えば、当たり前の反応のようにも思う。自業自得か、仕方がない。



「ああ、さっきの、深い意味はないんだよ?ただ、知っている王様にアーサーって名前の立派な人が居てね。もしかしたら、それに因んで次期王様の予定で名付けられたとかの経緯があったりするのかな?って思ってね。ほんと、それだけなんだ。」

「はあ、然様ですか…」



 変に適当な嘘で誤魔化すと、後でばれたら面倒だ。騙す事に罪悪感はないが、嘘をつくなら大事な場面で、計画的にだ。なのでやはり今回は、素直に真実を伝えておく。

 姫様は私の言い訳に納得はしていない様子だけど、それもそうだろう。私の知る有名なアーサーさんはあくまで地球の有名人。異世界では苦しい言い訳に聞こえるかもしれない。だがこれ以上は弁解しても意味がないのでしない。嘘だと思われてもかまわない、無用な嘘をつかない事が重要なのだ。



 別に、こんな気軽な、世間話みたいな一言が、世界や歴史を動かしたりするわけでもないしね。




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