第6眼 姫様は優雅に笑って下さい! の1つ目
本日は1話分掲載。
なお、これから先ミリアンちゃんの登場予定は未定です。多分いつかは出ますが全く未定です。
番外編とか後書きにはわりと出てくるかもしれないので、興味がある方は探してあげて下さい。
「ヒーーッッハッハッハー!我こそは勇者であーーる!」
言葉と共に肺の中身を目いっぱい使った私はその直後、生まれて初めてセステレスの空気を吸った。
意識は途切れていない。にも関わらず、気がつくと一瞬のうちに肌に触れる空気が変わった。
未だ体を包んでいる召喚の発光は、しかし、徐々に収まり始めていた。
最初の、掴みは肝心だ。
相手は人を人とも思わぬ悪魔のような者共。なめられてはいけない。
そうはわかっているものの、別に演説の内容を考えていたわけではない。
詳しい状況も良くわかっていない。
じゃあ、どうするのか。
わかっている事を、とりあえず大きな声で偉そうに言ってみるのが良い。
そう、いわゆるハッタリだ。
世界はセステレス。場所は名称不明な王国の王都。
話しかけるべき相手は不明。
なれど、王都で重大な召喚儀式を行うのなら、王族の許可はあるはず…きっと。
王都って言うからには王国で、居るよね?王様。ないしは女王様。
ともすると、お相手はジャックかキングかクイーンか。
ハーッハッハ!!もしも全員なら、おめでとう諸君!君達はJOKERを引いた!ロイヤルストレートフラッシュも目前だ!
いや?誰もポーカーとは言ってない。
ババ抜きならば、実は今引いた、私の存在こそが、この国への死刑宣告だったかもしれない。
くぅッ…!誰が『最後まで残るババ』だバカヤロー!
トニカクだ。
私はまず第一に、召喚の魔法、並びにそれを使った者を、潰す。
新しく私の妹になった可愛い可愛いミリアンの願いを聞き届ける為に。さあ、戦闘準備だ!
右掌で左目を覆って、左手は…適当に、怒りの感情を表してみよう。そう虎だ!虎の手だ!ニャー!
ハイ、決めポーズ!
「私を召喚した奴は、どいつだ…!」
「…は、は…はい?」
可憐なお嬢さんの顔が、恐怖に恐れ戦いていた。
…これ、『血に飢えた契約前の召喚獣』みたいな見た目かもしれない?
なんだかすみません。
一応弁解しておくが、私は決して中2なんちゃらではない。19歳だ。
周りには紺色を主とした、様々な服装を着た人々が…大量。紺色は、ローブがわりと多め。その殆どが、声も無く立ち尽くしていた。所々に白と黒も見えたが、黒は色以外然程変わらず、白も多少装飾が多めな者がいたが、結局殆どがローブ姿だ。
他に少女を守るような配置で、護衛らしき出で立ちの女性4人。ただ、警戒を露にした一人を除き、武器を手に持ちながらこちらも呆然としていた。
召喚の儀式魔法陣的な物があれば、早速お仕事にとりかかろうと考えていたが、それらしい物は既に殆どが光の粒となって中空に溶けていっている。
どうやら、そう簡単ではなさそうだ。…さて、次はどうしよう。
「…よ、良く召喚に応えお出で下さいました。私はカー・ラ・アスノート王国国王第二子、王女のアーサー・キーロと申します!勇者様。何卒、我が国の窮地をお救い下さい!」
「断る!」
お相手はKでもQでもJでもない。Pだった。
固まってしまったアーサーP、もといプリンセスアーサー。
強気に出ようと思っていたら、思わず断っていた。もしくは、本音が出たとも言う。
もともと、どんな条件を出されようが、大量虐殺のお願いをしてくる輩の依頼など、徹頭徹尾断固拒否こそ正解だ。
あー…でも、冷静になってみれば、マズったか?
ここには必ずあるはずなのだ。勇者召喚の儀式に関する情報が。
改めて辺りを見渡してみても、どうやら召喚の魔法陣らしき物はもう跡形もなく消え去っている。
最終的にはなり振り構わず国を飛び出していくにしても、召喚関係の技術だけはなんとかせねば。最悪の場合、私が協力しないと知るや、召喚の儀式でもって後続の勇者を呼んだりしかねない。
今後の予定を考えていると、唯一警戒体制をとっていた横の護衛女性から声がかかる。
「姫様」
「はっ!?どうか、どうか何卒父と!国王陛下のお話だけでもお聞き下さいませ!」
「……まあ、聞くだけなら、吝かでもない。」
ちょっと悩んだフリをしてみたが、内心ではホッと一息つけた心地だ。