第5眼 女神を姉妹にさせて下さい! の3つ目
「ふわぁぁあ…。素敵なのですー。たった数回でこの完成度!抜群のセンスです、神がかっているのですよー。」
うっとりとしている所悪いが、神は私ではなくお前だ。と言ってやりたい。言わないけど。
「名前はまあ、良いのですが、内容は…。まあ、もう何も言いません。もってけドロボーって気分です…」
スキルは効果が制限されたり、発動条件を加えて世界?の容量内に収まるように変更された。
スキル名については、勝手につけてくれれば良いのにと言うと、「私がつけてしまうと、想像した効果と変わってしまうかもしれないですよ?」と脅されれば、頑張って考えるしかない。
…ニヤニヤと完成を見守る姿から、『自分以外が考えたスキル名見てみたい』と言う気持ちが透けて見えていた気がするが、おとなしく従っておいた。
ルビまで全て自作。
頭の中で参考資料にした数々の中二病的作品群が走馬灯のようにイメージを掠めていった。
考え始めると楽しかったが、いざ完成品を並べて見ると恥ずかしさだけで死ねそうな気がするね。
この作業だけでもなかなか時間がかかったが、それに付き合ってくれたのも、まあ女神様なのである。
スキル御試しの間はただただ待って疲れていた所、調整もあくせく頑張ってくれていた。
一応、感謝だね。
「さて、ではいよいよ完了となりますが…本当に良いんですね?」
添削中を含めて既に三回目の質問。
それはスキルの事についてではなく、種族の欄が人間ではなくなっている事についてだ。
「いくら普段は人間と見た目が大差ないと言っても、根本的に違う部分は多々あります。
そして神である私でも、一度魔族になったら、人間に戻す方法はありません。
なので元の世界に万一戻れたとしても、もう、『人間・砂原 愛』として地球の地には立てません。
…このボタンは、そんな貴方の未来を、砂原 愛を、殺すボタンです。」
ボタン。
私のステータス画面の最後にある決定ボタン、それは女神しか押せない物だった。
間違って巻き込んでしまった人間に、自分と自分の世界の都合で『どうか異世界に行って欲しい』と言ったら、『あ、じゃあ魔族になりたいです』と返事が返ってきたとする。
『はいわかりました、ではどうぞ。』と、そんな風に割り切れないのが目の前の凛々しくも幼くもある神様なのだ。指先が震えているのは罪悪感か、後悔か、その両方か、はたまた別の何かかもしれない。
自分で押したかったな、そのボタン。
そしたら、そんな辛い顔させる間もなく、勝手に人外になるのに。
ビジネスを持ちかけて来たり、威厳がなかったり、話し相手が欲しかったが為に神様勧誘しちゃったり、随分と神様らしくない所ばかり目立つ神様だ。
…でも、こんな神様が見守っている世界に生きるのは…。
うん。きっと、楽しい。
優しい女神様な妹様は、どうも踏ん切りがつかないらしい。もどかしいね。
「お姉ちゃんを信じなさい」
「…うん」
覚悟が決まったのか、目が合う。
荘厳さすら感じそうな引き締まったな、最初に出会った時の様な神様らしい顔と口調。
「セステレスをお願い致します。」
「任された。」
何時間か前に同じような返事をした気がするので、あえてもう一度言ってみた。
そして押されるボタン。
少しずつ体から力が抜けていくような、ちょっと浮くような感覚。
「セステレスの因果を司る主神、セステレス・ミリアン・ガーデゥーの力で、あなたをセステレスの因果へ繋げました。…人間として地球に生を受け今まで懸命に生きた砂原 愛と言う少女を、私は決して忘れず、蔑ろにせず、また永久に愛し、祝福し続けます。」
「ありがとう。セステレス、ミリアン、ガーデゥー。」
『名前はちゃんと覚えたからね。布教、頑張ります。』と伝えたつもりだ。
「ふふっ…あと、体感30秒くらいで向こうに行きます。何か言いたい事や聞きたい事は?」
「大体確認しながら進めてたから、とくに今更…あー、あ?」
「…?なんです?」
「そう言えば、その布教について。気がかりと言うか。」
「…?」
「信じて貰えるかな?神の本当の名前がこれだぞ!って言って。」
「……??え、だから、私のおねえちゃんに、なるって話じゃ」
「魔族が、神の姉ですよって、そう言っても?」
「…」
「…?」
「………!!!???あああ-」
勇者として召喚の儀式で呼び出されてから、体感でおよそ5時間程後。
私のセステレスでの、第二の人生が幕をあけた。
今日はここまで。神の間での長い長い準備話がようやく終わり。
次回からやっと、『愛ちゃんの異世界・セステレス生活』が始まる予定です!
長くなるから省略したり、本筋に関係なかったりする部分を集めた、零れ話的なのがその合間に入ってきたりするかも…?
いや、ここまで長い下ごしらえをまったーり読んでくれた人なら、「それよりとっとと本編進めて愛ちゃんの邪眼無双はよ!」って人の方がきっと多い。
なので恐らく本編優先で。