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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
147/162

第37眼 騎士の理解を促して下さい! の3つ目

※第37眼のサブタイトルを修正しました。

(2020/04/17)



 アホの子ムースのアホ面を見ながら、ぼんやりと考え続けている

 すると、もう一つの答えが思い浮かんできた。



「あとは、ね。私が、責任負うつもりが無いんだと思うよ。多分。」

「…責任?」



 お、アホの子帰還。



「そ、責任。何せ私は勇者様だ。私は、いずれ居なくなる。だからね。」

「…?」

「この国の、この世界の、理の外っかわで生きてって言うか…劇を見物してるみたいに。ある?演劇ってこの世界にも。」

「はい、ありますが…あの、でも…王の交代には口を出しましたよね?」

「いやいや、王様を代えろって言ったのはつまりさ………王様役の人が舞台の上からこっちに、ツバやら汗やら飛ばして来て腹が立ったから、『キャスト代えろ、代えなきゃ私は帰る!』って文句言った感じ。」

「…いや、申し訳ないのですが例えが良くわからないと言うか。」

「あの王様だと、こっちに実害が及ぶから、私的にはチェンジだったわけよ。でも、新しい王様役誰がやるかなんて、劇見てる客は、別に決める権利貰ってもねぇ?困るっしょ。」

「はあ…。」



 ダメだ。伝わらない…

 例え話って分かりやすいと思うんだけど、なんかムースには当たりよりハズレの方が多い気がする。



「キーロちゃんが王様の国、ね。私が居る間は確かに、そりゃ私にとって居心地が良い国になると思うよ。私にとっては利点かもね。でもさ。私は知らないんだよ、こっちの常識を。この世界の人間が私の事を知らないのと同じ位。そんな私は、この国の王に相応しい人物を見極める能力なんてあると思う?無いよ、無い無い。万一私が相応しいと思う人物が居たとしたって、それを私は強要するつもりはない。私はこの世界の常識を知らないし、いずれこの世界からいなくなる。もし私が居なくなった後で、じゃあ私が任命したからキーロが王様になって、直ぐに国が滅んだら?」

「そんな事にはなりません!」

「もしだよ。それにまあ、すぐには無くても、いずれそうなる可能性はあるだろ?特に私が居なくなった後とか、私には予想もできないね。そんな無責任な、最悪お国の民がみんな路頭に迷うような重大な決断を私が下すとか、普通に嫌なんだけど。『勇者が勝手な事をしたせいで国が滅んだ!』みたいなね。私はそんな責任を負いたくはない。だから次期王の選出は君達のやり方に任せたし、なんなら王様を代えるかどうかも君達次第にしたわけさ。王様がクロウのおっさんのままになるなら、それはそれで、別にこの国を敵認定しただけだし。ああ、キーロちゃんだけ安全な所に誘拐したと思うけどね、その場合。」

「…責任、ですか。…少し、わかりました。」



 少しかよ。


 キーロちゃんがミドリーと過ごす時間が増えれば…と言う話は、数日前の話し合いの時にも間違いなく思った事ではある。

 ただ、それはやっぱりキーロちゃんを指名しなかった理由であっても、私が他の人物を指定しない理由にはならない。と言うより、誰かにやらせる位ならひとまず自分が全権力を握って、その後適任を探して権力を割り振っていくのが一番賢いやり方だっただろう。だが、私はそうしなかった。そもそも指定する事を考えもしなかった。

 責任を負いたくない。

 思いついた瞬間からその言葉は私の中で、一番腑に落ちる回答になった。



「ま、あとはあれだ。良心の呵責?」

「良心!?あるんですか?」

「失礼かよお前、さっきまで神様とか言ってた相手にどんだけ失礼かよ。」

「すみません冗談です!」



 コイツ、マジか!?このタイミングで冗談言ってくる余裕があるのか…

 って言うか、そう言うキャラだっけ!?



「で、どういう意味ですか?」

「ったく…さっきの責任云々と殆ど同じなんだけどさ。キーロちゃん王国になったら、私は得するかもだけど、最悪は国民全員が損害を被る可能性があるって話したよね。私がそれで例えば得をするとしよう。その時私がした得を1とすると、国民全体の損害って、多分百万とか千万とか、とにかくケタが違うと思うんだよ。吊り合いとれてないっしょ。」

「…?民の損害が看過できない、と言う事ですか?…真っ当な話なのでは。」

「ちょっと違うなー。国民が一千万損したって、私が一千億得するなら、多分私は喜んで王様を推薦したよ?例えばそう………この世界での私の、絶対に確実な安全が保障される、とかね。」



 そんな物が存在しない事はわかってるけど。

 もし、もしそんな可能性があったなら。それは、私にとって何よりも優先して手に入れるべき物、私の最高の利だ。



「だから私が良心の呵責って言ったのはつまり……誰かを蹴落としてでも幸せになろうとするなら、蹴落とした相手を不幸にする分より自分は幸せを感じるべき…って言えば伝わるかな?世界幸福効率最大化理論、みたいなの。で、今回の場合は別に、キーロちゃんが王様になっても私的に、ちょっとしかプラスを感じないから、大勢の人のリスクを無視してまで無理やりキーロちゃんを王様にするのは良心の呵責があると言うか。わかった?」

「…貴女の善悪観は、私には理解できそうもありません。」



 あるぇー?

 なんで伝わらないんだろう。

 まあ、私の話自体は理解できたみたいだし良いや。そこまで大事な話でもない。


 …それにこれはあくまで、私の持論みたいなものだ。

 今回誰かを不幸にしない為、自分のわがままを言わなかった。じゃあだからと言って、誰かが最高の幸せを手に入れる為に自分がそこそこの不幸になるのを良しとできるか、と言われればそんな事はないんだけれど。

 多分、これはきっと、いつか自分が本当に欲しい物を見つけた時の為の予防線だ。

 大切な物を手に入れる為に、躊躇なく他人を犠牲にする。そんな自分を正当化する為の、底の浅い予防線。



「ま、とにかくそう言う事で、私はキーロちゃんを王様に推すつもりはないよ。」

「そうですか…わかりました。理解できない部分もありましたが、考えあっての事ならば…」

「申し訳ないね。ああ、でも私思うんだけどさ。キーロちゃんって王様になりたかったの?」

「…何を言っているんですか。当然でしょう。」

「そんなもんかね。」

「それが理解できないのは、それこそアイ様の言っていた、価値観の違いと言う物なのでしょう。私はあの方が、王になる為の努力を惜しまず、自らを律して生きてこられた事を、傍で見て知っていますから。間違いありません。」

「はぁ。…それにしては、別に王様になれなかったからって、悔しがったり凹んだりしてるようには見えなかったんだけどね。あの子。」

「…!?」

「私が気が付かなかっただけ?それとも、そう言う気持ちも隠してるのか。ポーカーフェイス、そこまで得意そうには見えなかったけど。…何、不安になってきた?。」

「……少しだけ。」

「だったら、帰ったらちゃんと話してみれば?最近忙しかったみたいだけど、今はもう時間たっぷりあるでしょ。」

「…そうですね。ありがとうございます。」



 話はこれで終わったかな?


 私は場違いな椅子から立ち上がってアオモリの方角を向く。



「さ、そろそろ出発しますか。」

「はい。それでは、このままアイテムボックスを開けて頂けますか?」

「あれ?私もう移動する方法話してたっけ?」

「私はアイテムボックスの中に入っていれば良いのですよね。」

「………はい?」



 なんですと?



「え……違うんですか?てっきりアイ様は、私を収納して単身で飛ぶおつもりかと思っておりましたが…」

「違うよ。え、なに君収納って、アイテムボックスの中に詰め込まれて運搬されるつもりだったの?お荷物気分だったの?」

「いや、だって!だから馬車を取らなかったのではないのですか!?そうなのだと思って、入る覚悟はしていましたが!」

「私が人間を物みたいに扱う女だと思ったって事?えーヒドイなぁ。」

「違います!それは!アイ様が、…私の前でも、もう何度も人を入れているではないですか!だから!」



 全然違わねえじゃねーか!それで結局物みたいに扱われると思ってたじゃねーか!

 人を何でもかんでもしまっちゃうおじさんみたいなおばさんみたいに言わないでくれるかしら!?

 それに、フォローするにしてもやり方が中途半端だと、余計相手を傷つけるんですよ?失礼しちゃうな、まったく…。



「アイテムボックスを使うには使うんだけどさあ。思いついた方法が本当に使えるのかテストって言うの?最終確認だけしておきたかったんだよね。だからさ、実験に付き合ってよ。」

「いやです。」

「即答かよ!」

「貴女に実験と言われると全く内容が想像できなくて嫌な予感しかしないんですよ!何をするおつもりですか!」

「…ムースには危険は無いよ!」

「含みのある言い方が逆に怖いのですが!?」

「言葉通りの意味なんだけどなぁ…。ま、最悪うまくいかなかったとしてもムースは問題無いんだよ。その場合は私が困るだけで。それでも嫌なら、なんなら、君の言う通りアイテムボックスで運んであげるよ?」

「…いえ、他の方法があるなら、では、そちらでお願いしたいです…」

「へいへい。」

「それで、結局どうするのですか?アイテムボックスを使うと言うのは…」



 気になるなら最初から話聞けよ。まったく、人をマッドサイエンティストみたいに言いやがって…



「それでは発表します…今回は、アイテムボックスを使った空間跳躍をやっていこうと思います。はい拍手―。ぱちぱちぱちぱち。」

「空間、跳躍…?」



 私一人の拍手だけがむなしく響く。

 ノリが悪いなぁ。



「そう。空間跳躍。瞬間移動。テレポート。おわかり?」

「貴女のスキルはおかしい!!絶対に間違っている!!」



 思いっきり机を叩いて全力で指さしてきた。

 そこのセリフは是非、『異議あり!!』でお願いしたかった所だ。










※第37眼のサブタイトル変更につきまして。


 ご迷惑をおかけしております。

 この度のサブタイトル変更についての簡単な報告となります。

 第37眼においてアイちゃんとムースさんが長話を延ばしに延ばし、当初想定していたより3倍以上長い尺を取ってしまった結果、サブタイトルが内容と乖離してしまうと言う問題が発生いたしました。

 その為大変勝手ではございますが、第37眼で使用していたサブタイトルは修正のうえ第38眼サブタイトルに引き継がれます。

 サブタイトルで識別されている方や、サブタイトルで内容を推測していただいておりました方々には、一方的な変更で大変ご迷惑をおかけいたします。

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