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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
144/162

第36眼 質疑の真意を読んで下さい。 の3つ目



「まあ、もう良いよ。大体わかった。でさ、結局一番大事な部分が聞けてないんだけど?わかってるよね?」

「…はい。」

「ミリアンちゃんが、人間を瞬時にその場に作るような能力があるのか。あるいはそれに似た逸話があるとか。」

「いいえ…ありません。ですが……」

「ですが?『ですが、神様ならそのくらいの事できちゃうんじゃないかと思いましたー』、ってか?」

「……はい。」

「ふーん。ミリアンちゃんにそう言う話は無いって事は、じゃあ他の神様ならできるって事?そう言う神様居るの?」

「……」

「居るの?」

「聞いた事は、ありません…」

「だけど、神様なら人間作れると思いましたと。なんとも独創的な思考回路をお持ちのようだね?」

「…」

「…まあ、私も少し意地の悪い言い方をしたけどさ。じゃあ一応聞くけど、神様全員が必ず持ってる奇跡の力とかって、心当たりある?」

「……ありません。」

「だろうね。じゃあ他に私が神様かどうか、確認する証拠はどうやって出せばいいかね。」

「……」



 わかってたんだ、最初から。神様を判別する方法等ないと。

 …いや、正しく言えば、必勝ではなくとも、まず間違いは無いとは思っていた。

 セステレスにはミリアンちゃんを含め、神が複数人居る。


 神様はにんじゃなくて、なんか別の数え方があった気がするけど。…細かい所はいいや。


 神が複数居る。この世界の常識であり、ミリアンちゃんも認めていた。それが重要なんだ。

 神即ち全能であると言うなら、神が全員同じ奇跡の力を持っているって言うんなら……神様は一人で良い。だが複数居る。それはなぜか?


 主神を自称していたミリアンちゃんも、この世界の因果担当だと言っていた。

 そう、神様には担当があるんだ。司る力の違いとか、役割と言っても良い。


 それは別に特別だったりおかしい事ではないと思う。地球で聞いた神話だって同じような話はいくらでもある。火の神だ、水の神だ、雷の神だ。ああ、あと酒の神なんてのも聞いた事ある気がするな。ぱっと思い出せただけでもこれだけあるし、他にも思い出そうとすればまだまだ出てくるだろう。

 そうやって神様が複数居り、それぞれの担当が決まっているという事。各々で起こせる奇跡には違いがあるだろう事は明白なんだ。

 いや、まあぶっちゃけ、担当とか特性とか以外に「神様はみんな心が読めるんダー」みたいな事を言われたらどうしようと思ってたけど。ミリアンちゃん、私の心読んでたし。できないとは言えない。


 今回はちょっと残念な子ムースから「神様は人を作れます」とか言う謎理論が展開されたせいで話が逸れたけど、こんなつもりではなかった。これがもし、そこそこまともに神様ができそうな事を言われたとしても、神様の担当制を主張した上で「担当が違うからできないです」の一言で終わってしまう話なんだ。人間がそれを嘘か誠か見極めるすべなど無いだろう。

 なのでやはり最初から、理屈で負ける道理が無いのだ。



「だいたいさあ。神様の証明ができるかどうかを私に問う前にね?君、根本の根本の根本から間違ってるんだよ。」

「根本から…ですか?」

「NO。根本の根本の根本。」

「はぁ…?」

「神様である事の証明で、奇跡を起こせと君は言う。…はて?神様が奇跡を起こせる、と。何故そう思うんだい?」

「…え?いや、できます…よね?」



 先程の問答で、既に自信を無くしてしまったらしい。声が弱々しい。



「ん。じゃ1つ目。神様が奇跡を起こす力を持っているという認識自体が人間の勘違い、ないし創作であり実は全くそんな事はできない可能性。」

「そんなバカな!そんなの…」

「奇跡の力を持っていないと、神だとは認められない?」

「いや!…いや…そういう事ではなくて…!」

「誰から聞いて、どうしてそれが間違いないと確信してるのか知らないけど。まあ、神様と言う存在の認識から話始めたら長くなるしなぁ…。じゃあ良いよ。神様は奇跡の力を持っている者と言う事にしようか?」

「それでお願いします…」

「2つ目。力が有限である可能性。奇跡の力を持っているが、創世の為に全ての力を使ったため以後は人間と変わらない力しか持たない存在となった…かもしれない。」

「まさか…」

「どうだい?彼女は力を使う前は神様で間違いなかっただろうけど、力を使い果たした後は神様ではなくなったと言う認識でよろしいか?私はそれでも、世界を作った彼女を神様だと認めてあげたいと思うけどねぇ。」

「……」

「3つ目。奇跡の力は無限であるが、それを使う事によりこの世界を壊してしまうため世界平和の為に力を使えない可能性。この場合は力があってもそれを証明する為に見せる事はできないわけだ。世界中の人間から疑われようと、自分の身分を証明するためだけに人類を犠牲にする事はできない。人々のために力が使えないのに、その人々から嫌疑の目で見られ続ける…そんな健気な神様が現れたとしても、君は『そんな屁理屈は詐欺師の常套句だ、奇跡を起こせないなら貴様は神ではない』と切り捨てるかい?」

「そんな事は」

「しないと、言い切れる?神様である証拠を見せろと言った君がさあ。」

「っ……!」

「4つ目。」

「まだあるんですか!?」

「神の奇跡は無限。使った所でデメリットも無い。しかし…その神の神たる力を、世界の主神ミリアンを騙し、彼女から奪う事に成功した一人の極悪非道な女が居た。」

「な」

「女は奪った力で強力な身体能力やあり得ないような能力を手に入れ、勇者に成りすましとある国に迎え入れられる。神様の姉を自称するその女、ここでは仮称(アイ)とでもしておこう。」

「アイ様!?何を」

「彼女が降り立った世界で、ある事ない事並べたて、その世界の均衡を根本から壊す計画を企てる。人類文明を混沌に陥れ、地獄絵図を具象化する事に成功したその時、自ら起こした災厄を自ら奇跡の力で解決する。それを機にこの世界を救う唯一神として崇められ、世界とその宗教を変革しようとしていた…」

「あなたは何を言っているのですか!!」

「だがそんな所に一人の少女が現れる。神の力をまんまと騙し取られた、今はただのか弱い少女…ミリアンその人だ。『私はあの悪魔のような女に神の力を騙し取られたのですよぉ~。信じて欲しいのですよぉ~、あの力の本当の持ち主は私なのです、私が本当の神なのですよぉー!』ってね。」

「ふざけているんですか、貴女は!いったい、なんの話をしているのですか!」



 ふざけてなどいない。話の内容は勿論、神様に関してはかなり完成度が高いモノマネを披露できたと自負していると言うのに。

 全く、失礼しちゃうよ。



「さあムース。神の力を奪われた非力な少女ミリアンと、神の如き力を操る外道女仮称(アイ)………力を奪っただの奪われただの、それまでの経緯を全く知らない君の前に二人は居る。はたして君は、どちらが本物の神様か、自分が見極められると思うかい?」



 右手の先にミリアン、左手に外道女Iさん(仮名)。まるで二人がそこに居るかのように、私は手を左右に広く差し出した。



「アイ様!それは…それは事実なのですか!!」

「はあ?嘘だけど。」

「…はぁ!?」

「創作。作り話。フィクション。実在の人物とかなんちゃらかんちゃらとは一切関係ございません。」

「いや、だって…あそこまで具体的に」

「お前、その直前まで真面目に取り合ってなかっただろ。頭使ってなかっただろ。だから、具体的な例を出せば少しは想像しやすいかなって思って」

「具体的すぎます!心臓に悪い…」

「そもそも私がその外道女なら、なんでわざわざ自分から悪事のネタばらししてんだよ。バカですか?もう少し考えて下さい?」

「なん!?なんかどんどん私の扱いが雑になって来てませんか!?」

「知りません自分で考えて下さい。」

「ヒドイ!」



 ただいまムースの株が下落中。考えないアホは嫌いなのですよぉ~。





「まあ冗談はさて置き。つまりさ、神様だから望めば奇跡を起こして貰えるとか思ってんなら、そんなの人間が決め付けた勝手なイメージだから考え治せって話さ。神様だから奇跡を起こせるわけじゃないし、奇跡を起こせばイコール神様ってわけでもないでしょ?ご理解いただけた?」

「…先程のは、本当に、例え話なのですよね?」

「そうだよ。疑り深い…」

「すみません。…アイ様の仰った事は、まあ、わからなくはありません。ただ、その…そう言った事は起こり得るのでしょうか?」

「そういった事って?」

「力が使えないとか、奪われていたりと言うのは…」

「起こるかどうかは知らないよ。でも絶対に無いとは言い切れない。だろ?」

「それはそうですが…」

「そういう事だよ。なら、奇跡の有無で神様を見つける事はできない。」

「そう、ですね…それが、アイ様の言う根本…」

「え。違うけど。」

「え?」

「根本の根本の根本。さっきも言ったろ。」

「ど、…どういう?」

「んー…因みに、ムースは神様を見た事ある?」

「あるわけないじゃないですか…」

「ですよねー。」



 さっきの神話みたいなのからしても、この世界の人間は、ミリアンちゃんの姿が見えないって話だしね。つまり今まで誰一人として、姿を見た者が居ないって事だ。



「じゃあ声を聞いた事は?」

「勿論ありませんよ。」

「じゃあ触ったとか嗅いだとか味がしたとかでも良いし、何か貰ったとかでも良いよ。神様の存在に触れた事は?」

「ありませんってば!それがなんだと言うのですか!?」

「じゃあお前、どうして神様が居ると思うわけ?」

「……………………………」

「聞こえてる?」

「……は?」

「いやね?だから、そもそも神を奇跡で確定できない。それが根本。更に、そもそも神が奇跡を起こせるのかを断定できない。それが根本の根本。で、根本の根本の根本ってのが、そもそも、神様が居る事を証明できないだろうって話。」

「貴女は…貴女は!!!」



 これまで、声を荒げる事もあったムースだが、今回は違う。その顔には確かに、怒りを超えて、牙を剥くような、そんな敵意が見えた。



「神が、存在しないとでも言うつもりか!!!???」

「はぁ?ふざけんな居るに決まってんだろ私の可愛いミリアンちゃんが脳内嫁とでもいうつもりかてめぇぶっ殺すぞ。」

「あれぇええごめんなさい!?あれええ!?」



 早とちりも甚だしい!

 居ますー!私のかわいいミリアンちゃんはちゃんと現実に存在してますー!

 まったく。次同じ事言ったらマジで三枚におろしてやろうかコイツ…

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