第5眼 女神を姉妹にさせて下さい! の1つ目
「…そういえば」
「…?どうしたのですかー?」
私の考えたスキルは軽く宇宙の容量をプチッとする内容だったらしい。
神様は、私のスキルをできる限り効果を変えずに、なんとかできないかと四苦八苦だ。
そんな私も別の作業をしながら、ふと思った事を声に出してみた。
「もともと、神様の名前を間違えまくってる人達に、『私のコレこそが真実だー』って言って、まともに受け入れられるとは思えないんだけど。」
「…っ!」
「何か、お墨付きみたいなの貰えない?」
「お、お墨付きですか。」
「この印籠が目に入らぬかー!的なのでも良いけど。」
「んー…まあ、色々クエストも出させて貰ってるわけですしー?逆らう人間は間引いてきてしまっても構わないのですよ。」
「間引くて…」
物騒極まりない。
「あんまり減らしすぎるのも困るのですが…まあ、農薬みたいなもんですよ。大切な野菜たちを守る為、害虫だけを跳ね除けるみたいに、選りすぐりの素敵な人間ばかりが残るなら、少しはましな世界になってくれると思うので。無意味な虐殺でないのなら、今の半分くらいまでは構わないのです。」
文脈から察するに、つまり私がその、農薬みたいなもん、と言う事なのだ。
農薬扱いですか、そうですか。
まあ、もともと「大地は私の家庭菜園!」みたいな感覚なんだろう。
手塩にかけて育てた、とか言ってたし。
このゴッド、スケールがでか過ぎて時々ついていけない。
「…良いの?」
「良いのです。刃向かう害虫は、じゃんじゃんやっちゃって良いのです。」
まあでも、なんだか私が行く異世界のジャンルは、ファンタジーなだけではなく、人間同士のバイオレンスアクション要素も多分に含まれるご様子。
非殺傷を貫けと言われると難易度が跳ね上がるだろうし、正直それも有難いんだけどね。
私は神の代弁者だ!とか、言ったが最後、延々と悪魔の証明をさせられる魔女狩り実体験異世界ライフが始まる想像しかできない。。。
なのでこれはこれでありがたいお墨付きなのかなとは思うが、それとは違う何かしら、何か他とは違うのだと伝える手段がなければ。
「まあ、それはそれで良いとして。…ちょっと違うんだよねー。暴力で黙らせるだけなら、誰でもできるし。普通過ぎない?」
「…これだけ人間離れしておいて、普通とかどの口が。ちゃんちゃらおかしいのですよー…。…と、それならあとは、私の教会が潰れて教えが無くなったりとかしない限りは、女神の名前使って好き勝手やっちゃっても良いのですよ。迷惑かけているので、まあ、そのくらいのお墨付きは出せますけれど?」
「嘘八百を並べ立てても?」
「…節度を持って、私の名前が悪名にならずに済むのなら。」
「むぅ…うーん…」
「あっ!………」
「…?」
「そういえばー。…前金は渡しましたが、まだクエストの成功報酬について話していなかったのですよー。」
「…?ああ、そうね。」
私のステータスウィンドウと辞書とを目線で往復しながら、声だけをかけてくる。
「…もし!もし良ければなのですが、神様になってみたり、とか、してみたりも、できるのです、よ?」
「…はあ?」
「…その、私と、一緒に…」
この女神、何を言い出したのか…と怪訝に思ったが。
何故か一世一代な愛の告白でもしたあとのように、ガッチガッチになって返事待ちをしている。
作業の手は止まっており、顔はそのまま、目線だけ向けられていた。
…いやいや、神様に『トゥギャザーしようぜ!』って言われても。
なんて答えるのが正解なのよ。
「なるかどうかは別として…なれるんだ?」
「おためし体験みたいな感じなので、大丈夫なのです!とりあえずどうです!?2、3000年くらい!」
あれ、ならないかもよって牽制球投げたはずだよね?私。
YESと言ったつもりはないのに、満面の笑みにさせてしまった。
どうしよう、これ。断り辛い。
しかも手始めの、最低提示期間が2000年程と。
…気軽に引き受けて良い問題か、非常に悩ましい。
「つまる所私達がやってるのは、人類を神に進化させるお仕事なわけです。
なのでこれは、言わば職業体験みたいな物なのです。
まあ、普通の人間には案内できない事なのですがー…愛さんにはその資格があると言うか、副産物的な裏技、と言う感じなのですよー。」
神に進化、とか予想外の突飛な言葉があった。それが人間の存在意義って事…?
…いや。うん。
私は考えるのはやめた。
無視しよう。そうしよう。
そういうのは哲学者の人とかに教えてあげて下さい。
「人間やめて魔族になろうとしてる私は、それができるって事なわけね。」
「あー…少し違うのですが…。」
「あれ?」
「愛さんの場合は特別と言うか…。勇者の資質とは即ち神の資質と似ているのです。先程も言った通り愛さんは勇者の資質が飛びぬけて高いのでシステムで自動的に選ばれてここに来たわけなのですが、その勇者適性が高い愛さんが魔法のある異世界に来る事で足りないピースが埋まる感じと言えば、わかりやすいですか?」
「…凄い勇者は、異世界だと神にもなれます、って事?」
「なんかすごい雑な解釈なんですけれども!?…ま、まあ…もう概ねその解釈で良いのです!」
「ふぅむ。…でも、なんでそれを私に?」
今魔族になるなら、ご一緒に神も無料でおつけしますよ?みたいな夢の某テレビ通販的感覚で誘われているんだろうか。
これは私への報酬と言うより、寂しさMAXな女神様の話相手欲しさなのでは…?
なんだかこのたった数時間で、随分懐かれたように思うし。
「えっと、さっきも言ったと思うのですが、こっちの、本物の神の間に来たのは、愛さんが始めてなのですよー」
「つまり、貴方が人間と直接話すのって…私が始めてって事?」
え、まさかそこまで…。
私の何倍も人生の上級者じゃないですか。いや、神様だし。神生の神プレイヤー。・
…一神悲愴の孤独想者。