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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
138/162

第35眼 二人の門出を祝って下さい! の1つ目


「ところでさ。そもそもそんなに人手が少なくて困ってんなら、最初なんであそこまで頑なに不合格にしようとしたのさ。」



 試験して貰える事になったんだし、今となってはなんでもいいけど。



「…ギルドにもね、格ってモンがあんの。情報収集もせずバカ面下げて『とーろくしてくださーい』なんて言ってくる間抜けいちいち相手にできないわよ。そう言う輩はハンターになりたい奴じゃない。ハンター証明が欲しいだけのゴミみたいなクズばっかりよ。大抵根性なしで、まず口だけ達者な上、実力も無い。試験するだけ無駄って寸法。…ま、アンタはちゃんと戦力になりそうだってわかったから話は別だけど。」



 生活にも困ってないし別にハンターとして生活していきたいわけでもないって意味では、わりと物見遊山な所がある私には少々耳が痛い。

 かっこいいじゃん冒険者!欲しいじゃんハンター証明書ライセンス



「情報収集って?」

「勇者よ!」

「ん!?」



 私!?



「ほんと、迷惑極まりないっつーの!勇者が召喚されたって噂、知らないわけじゃないでしょ。だからギルドはほら、この通り。ひどい有様よ…」



 …勇者召喚されたから、ハンターが居ない?

 え、どういう事?

 「王都のハンターを1000体生贄に捧げ、勇者を召喚!ハンターズギルドにダイレクトアタック!」って事?



「理解できてないわね?ったく…。この辺のハンターに聞いてれば一発でわかった事なんだけどねぇ?」

「知り合いのハンターからは、何も聞かされてないんだよね。」

「さっき言ってた自称なんたらハンター?」

「それそれ。」

「ハッ!ならそのマヌケは、アホかモグリか口だけのにわかよ!まともなハンターじゃないから、とっとと縁切る事をオススメするわ。」



 ムースさん、居ない所で散々言われてますよ。



「勇者って言う、魔王すら倒せるような化け物がこんな近くで召喚されるらしい、王都に居たら自分たちの仕事がなくなるーって言って、ここホームにしてたやつらはみーんなアオモリに行っちゃったわよ。そんな風にはならないって言ってんのにね。」

「はぁ…それだけでこうなるもんなのか。」

「噂の後殆どがわらわら居なくなったけど…まあそれでも、数人残ってくれてたわよ?依頼が選り取り見取りだって。でもね。この間の警報の時…あれね、壁外にどっかの国の魔導士が万超えで来てたって。知ってた?」



 知ってます。



「それがね。消えたのよ。それも、たったの数分足らずで。それがどうやら、勇者の仕業だって話。」



 そのとおりです私の仕業です。



「それ聞いて、残ってた数人もすたこらさっさよ。まあ?あいつらも生活懸かってるんだから、稼げなさそうなら別の場所へ、なんて…何も悪い事じゃないんだけどね。複雑だけど。」

「へぇ。」

「挙句、それからここ2~3日ね。自称勇者様とかそのお友達とかがパラパラパラパラと現れるわけよ。」

「ほぉ…」

「アホかっ!バカかっ!!少しは頭使えっての!!本当に王城で召喚されたんなら国賓待遇されてるに決まってるでしょーが!ハンターズギルドなんかに来るわけないでしょ!人騙したいにしてももう少し頭使いなさいよ!!」バン!バン!バンバンバン!バンバンバンバンバンバンバン!バババンダン!

「はぁ…」



 本物の勇者も来てますよ…?



「はぁ…話がそれたわね。他に聞いておきたい事とかある?」

「んじゃあ、合格した後の事とか。」

「もう合格した気か!」ババダン!

「っ…!?わりと、そのつもりだった…!」

「…あのさ。さっきのもそうだけど、試験に必要ない質問は終わってからで良くない?」

「……おお。言われてみればその通りかも。」

「いや、まあ…今聞きたいってんなら答えるわよ?でも、普通期限付きだって聞いたら、最低限の事すら聞かずに出て行くせっかちの方が多いんだけどねぇ。とことん変な奴ね、アンタ。」

「よく言われるよ。自覚はないけど。」

「で、聞くの?」

「聞く。」

「聞くんかいっ!ほんとに…合格後の事ね?合格したら試験の結果にそってランクが決まるわ。アンタ等級はわかるわよね?」

「わからない!」

「…ふざけてる?アンタさっきステータス読んでたじゃない…」



 さっと紙を出して来た。そこにはいくつかアルファベットが並んでいる。



「エーとかビーとか、これよ。」

「ああ、アルファベットの事ね。」

「ア…あ?…何それ。」

「ほう…いや、なんでもない。」

「…そう?これが等級…等級ランクを表す際に使われる記号よ。」

「これなら知ってる、大丈夫。」

「なら改めて説明する前にそう言いなさいよ!!」バンバンバン!ダン!ダン!



 『アルファベット』の呼び名じゃ通じないのか。そりゃそうだ、文字文化が違う。面倒だな。

 …いや、違うか。それを言うなら、アルファベットが異世界に当たり前のように存在してる事に疑問を持つべきなのか。

 まあ日本語を神語しんごと呼ぶのとはまた別の扱いらしいが、どうせ先輩勇者様がたの残したあれやこれやだろう。



「はぁ…ステータスの表示をはじめ、その他色々なランクを表すのに使われてるのよ。で、そのハンターランクが決まると同時に、正式なゼムも渡せるわ。ただ、当日に合否が聞きたいなら少し待つ事になるけどね。」

「うん、了解。」

「ああ、あと、正式登録になったら登録料も発生するから。ま、一括支払いも一応できるけどする奴は見た事ないわ。基本はクエスト報酬からの天引ね。半年まで利子無しだから、普通に地道にやってれば、いつの間にか無くなってるってわけよ。」

「半年経っても支払い出来て無かったら?」

「…普通に、地道に、やってれば、いつの間にか、無くなってるわヨ?」

「…」



 今日初めて明確な返答が貰えなかったんじゃないだろうか。笑顔が怖い。



「それで他には?」

「いえ、特に…」

「そ。じゃあ話戻すけど、そんだけのほほんとしてるのは、明日出発に決めたからって感じ?なら、馬車の手配しておくけど。」



 ああ、そんな話してたっけ。



「んにゃ。馬車も、それに、お金も必要ないよ。移動手段はもう、持ってるから。」

「あっそ、残念。じゃ、後はお好きにどうぞ。」

「うん。じゃ、お好きにします。行ってきます。」

「お気をつけて。」



 受付に背を向けて歩き出す。

 だが開けっ放しの扉に手をかけた時、私はふと思う。


 何度も私に書かせようとしてた書類。

 結局、書かなかった。

 良いのかな。

 …。


 私は振り返らなかった。


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