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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
129/162

第32眼 食品と生物は分けて下さい… の1つ目

「ハァア!!セエェェィイ!!まだまだぁあ!!」

「…」

「…」



 城と言われればあなたが思い浮かべるのは何城ですか?


 日本人の私はそのワードで真っ先に出てくるのは安土城とか大阪城とか、ああいう城。日本の城なので和城わじょうとでも呼べば良いだろうか?

 まあ思い浮かべると言っても、修学旅行で見たあれははたして何城と言う名前だったのか。その辺り、きれいさっぱり忘れる程に興味も無かったせいで、言わずもがな城の造形やら構造やらと言った細かい情報が記憶に残っているはずもない。

 対して異世界漫画やライトノベル等を読んでいてたびたび出てくる王城と言えば、やはり西洋風の城。洋城ようじょうだろう。数日カー・ラ・アスノートの王城で過ごした私は日本に居た頃と違って、もし今「城と言えば?」と問われたらば間違いなく洋城を思い浮かべる。印象が更新されてしまう程強力なのだ。

 やっぱり実際のお城って迫力が違うからね!今まで実際に見た事はないと言うか、一応夢の国として有名なテーマパークに行った際にそれらしい物を見た事がある程度だったし。

 なので結論。私は今、城と言われて思い浮かべたのはシンデ●ラ城でした。おわり。


 茶番はさておき。

 建築などに関しては、王城を見る限りかなりしっかりした技術的な物があるんだと思っていたが、実際はどうやら違うらしいのだ、と言うのがこの話のキモだ。

 私の住んでいた時代の日本よりはるかに文明が遅れているかのように見えるカー・ラ・アスノートではあるが、必ずしも全てにおいてそうではない。

 原因は勿論、地球には存在しないとんでも不思議パワー、魔法だ。

 魔法と言う技術は戦闘だけに限らず、科学の代わりに生活と文明を支える大きな下地になっている。

 一番驚いたのは道だ。アスファルトではないのだが、似て非なると言うか、勝るとも劣らないしっかりとした物なのだ。

 一枚の大きな同色の板状になった石材のプレートが並び、そのすべての接合部分がわずかな隙間だけでしっかりと繋がっている。ある意味日本の至る所で見られるツギハギ状態の道路よりよほど整っていると言えよう。

 他にも道中では大きなお屋敷から公共施設らしき大きな建物、そして民家と思われる建物まであったがどれも結構しっかりしている。長年使われていそうな建物もいくつかあったが、その全てが歪みがなく未だしっかりと建っているのだ。すごい技術力だと感心していたら、ムースから「建築魔導士ならあの程度は当然です。」と事も無げに言われてしまった。

 知らないからね?日本にはないからね?そんな職業。


 街で見る色々な初めてをまじまじ見たい私をよそに、容赦なく進み続けるムース。

 絶対鑑定の遠望透過イーグルアイがあるから、その姿が見えなくなる位離れても実際問題はないんだけどさ。ついて行かないと心配して戻って来てしまうのだ。

 結局私は素直に彼女の後を追いかけるしかない。八つ当たりをされているようで釈然としない気分ではあるが、実際道案内して貰って助かってもいるから仕方ないね。心の中で『時間が出来たらしたい事リスト』に城下街の散策を記入しておくにとどめた。


 そんなこんなをしている内に、ハンターズギルドに接近。建物が見えた辺りで怪訝な顔をしながら、「人が、居ない…何かあったのでしょうか?」と少しだけ声を潜めて言ったムース。確かに建物内を透視してみたが、建物内に居るのはわずか1人だけだ。ハンターってそんなに人が少ないの?とも思ったけど、ムースの反応からして違うみたいだ。………にしても、透視がないムースはなんでわかったんだ?

 気付いていたのは、それが進むたびに近づいて来ると言うそれだけだった。

 気付いたのは、気付いてしまったのは、知りたくなかった事実だった。

 さて建物の前に差し掛かろう、とした時。その街中に響き渡っているのではないかとすら思える迷惑な声が、ハンターズギルド背面に併設されている広場みたいなスペースから聞こえてきていると言う事に。



「セエェェヤァァ!!ハアアァア!!!ルァアアア!!」

「…」

「…」



 既に人間が肉眼で見える距離まで近づいてしまっていた為、見えてしまった。

 建物の影にちらちらと。白髪で筋骨隆々、上半身に大小いくつもの傷跡がついている人物が。

 なぜ傷跡が見えるのか?答えは簡単。


 透視かな?透視じゃないよ、直視だよ?

 上半身に、何も着てない


 …心が一瞬空っぽになったらそこに最悪な短歌が流れ込んで来た。それ程ショックだったらしい。

 いやだ、なにアレ、関わりたくない。


 ムースに目線で合図しようと思ったら、彼女はどうやら私と違ってギルドの入り口の方を凝視して中の様子を探ろうとしていたようだ。てっきり私と同じくあの光景に絶句しているのかと思ったら…

 ようやく私と、その目線に気が付いたムース。



「ああ、ギルドマスターですね。トーキヨハンターズギルドの。」

「え」

「いつもの事です。」

「え」




 え?

 …え?

 ………えーーー…………

 あの半裸のオッサンが?周りの騒音とか気にせずハッスルしちゃってるあのオッサンが?ギルドマスター?いわゆるギルマス?

 しかもなに、ムースのこの反応。ギルドの中以外おかしい所はないですねみたいな反応。

 つまりなに、響いてるこの声がまるで朝に聞こえるスズメの囀りみたいにBGMとして認識されちゃう程、これは日常的な出来事なの?

 …ハンターになるの、なんか怖くなってきた。どうしよう、みんなあんな感じだったら。



「ちょうど良い。アイ様が登録受付をしている間に挨拶してきます。またここで落ち合いましょう。」

「あれ?入らないの?てっきりムースも来るもんだと。」

「入った方が良いですか?私も一応そのつもりで、変装道具は持ってきておりますが…用心の為と考えると、やめておいた方が良いかと思いますが…」

「変装、するの?」

「はい。アイ様が勇者だとバレる危険は、少しでも減らすべきだと思いまして。」

「…つまり、ムースと入ったらバレるかもって事?」

「私が姫様の相談役だった事を知っている人物は少なくありません。あ、いえ…と言うよりは、王城に出入りする貴族にとってはむしろ周知の事実です。ハンターとしての私を覚えている者はもう殆ど居ないでしょうが………相談役としての私を知る人物は居れば、まあそれでも即バレると言うわけではありませんが。ですが、邪推する者がいても不思議ではないでしょう?」

「って言ってもさぁ。ハンターのギルドに、貴族居るか?」

「多くはありませんが、居ますよ。」



 成程、ならまあ一応納得だ。

 ………でも、ヒゲニールが、ハンターが下賎の輩だかなんだかと言ってた気がするけどね。

 いや。って言うか、そう言えば



「ムースもハンターだったっけ。」

「…今更何ですか。」

「いや、なんでも。」



 自分でも今更だと思います。ごめん。



「まあ実際、私を知る人物はアイ様の事も知って居る者ばかりだと思いますので大した意味はないですが。念のためですよ。」

「わかった。最悪、なんかあって助けて欲しい時は呼びに行くよ。」

「お願いします。」



 そう言ってギルドの横を通り裏へと廻っていった。



「…あの筋肉マスターと一緒に居るかもしれんと考えると、極力避けたい所だけどね。」



 さっき透視した時建物に居たのはたしか女の子だった。

 しっかり確認はしてないけど、まあ上半身裸って事はないだろう。怖いから、建物に入るまで改めて確認はしないけど…まあ大丈夫だろう。

 さあ、私もはじめるか。

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