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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
128/162

第31眼 少女の孤独を払って下さい! の3つ目

「どうぞ、お気を付けて。」

「アイ様…お約束した件、くれぐれもお願い申し上げます。」



 雨上がりに似た、瑞々しい空気に包まれる朝。

 いつもより早めに朝食を済ませた私は、小さな肩かけの荷物を背負い開放された城門に居た。

 護衛・門番の他に王様、姫様、ハク様、果てはウルカス様まで。

 人数は少ないながらも、そこに集う豪華な顔ぶれは皆わざわざ朝早く、見送りの為だけに顔を見せてくれていた。

 開け放たれた門からは、なだらかな傾斜の先の広い街並みが。そしてその向こうに、それら全てを大きな胸元に抱きかかえるようなにそびえ立つ、大きな壁の姿が見えた。


 キーロちゃんやハクは私の心配をして声をかけてくれているが、ウルカスは無表情だ。つい先日新しく王様になったアッカーは、ムスっとした難しい顔で腕を組んで立っていた。


 …なんで出て来たんだよ。王様ってそんな気軽に人の旅立ちを見送るような立場じゃないだろうに。暇なの?王様ってそんなに暇なの?



「じゃ、行ってきます。」

「行ってらっしゃいませ。」

「土産話を期待しております。…ほどほどに、良い冒険を。」



 一通り挨拶を終え、振り返れば見下ろす町並み。

 雄々しくそびえる城を背に、歩き出す。

 そう。今、私の-



「お願いね。」

「帰ったら何があったか、ワシにもしっかと聞かせて貰えるんだろうのぉ?のぉ?」

「………行ってまいります。」



 -私とムースの二人旅が、始まる。



「どうしてこうなったぁぁぁあああ!?」



 身に着けた鎧と剣の他、私と同じく少量の荷物が入った肩かけカバンを背負ったムースが、頭を抱えて空に叫ぶ。



「え、なに?キーロちゃんがちゃんと説明したでしょ?もしかして話聞いてなかった?勘弁してよぉ。」

「聞いてましたよ!」

「ならわかるでしょ。」

「わからないんですよ!聞いても意味がわからないんですよ!」

「…」



 朝から元気だなぁ。

 何がわからないのか聞こうかとも思ったけど、そう言う質問ってわりとナンセンスだよね。もしくはめんどくさいともいう。

 なので無視して歩き出す。



「アイ様!?聞いてますか!?」

「もうさぁ…良いから、歩きながらにしようぜ。」

「歩けば答えて頂けるんですね!!ならいくらでも歩きますよ!」

「で?聞いてたんなら何がわからないのさ。」

「全部ですよ全部!」



 ほら、すぐ全部わからないんですーとか言っちゃう…。

 最初の会った時のイメージと違って、わりと直情型だよね。



「全部じゃわからんって。」

「私が!なぜ!同行する事になってるんですか!」

「んー?それは、キーロちゃんが私の案内の為に同行しろって。」

「それはききました!」

「で、それを私がOKしてー」

「それですよ!」

「何が。」

「何でですか!?なんでOKしちゃうんですか!!」

「ん…?………ムースが頼りになるから?」

「違うでしょ!!」

「違わないよ?」

「つい!この前!貴女が!キーロ様の傍に居るように言いましたよね!」

「うん。言ったね?」

「キーロ様と私が近くに居られるように、わざわざ気を利かせて取り計らって下さったんですよね!?」

「うん、まあそんな感じかなぁ。」



 改めて言葉にされるとなんだか恥ずかしい。



「じゃあなんでOKしちゃうんですか!!そのせいで台無しじゃないですか!!今私はアイ様と一緒に居るじゃないですか!!意味ないじゃないですか!!!」

「えー?でもせっかくキーロちゃんからのご厚意だし。ありがたく受け取るべきじゃない?」

「矛盾してる!貴女の思考も、優先順位も、何もかもメチャクチャだ!今回の件で私がヤタ様からどれだけ恨まれると思ってるんですか!?」



 血の涙でも流しそうな顔してムースの事睨みつけてたっけ。

 あの情熱が自分に向く事があるかと思うと、背筋も最新技術で瞬間冷凍しかねないね。

 こわいこわい。



「まあそうかっかすんなって。まだ朝早いんだから、近所迷惑だよ?」

「きぃいいいいいい!!!!!」



 うわ、「きいー!!」とかリアルで初めて聞いたよ。どんだけ余裕ないんだろ。

 こういう人見てると妙に落ち着いて来るよね?不思議と。



「どうせそんな長くなるわけでもないし。」

「長くならないわけないでしょう!」

「大丈夫だって。それにさ、キーロちゃんはムースを私につけて安心したかったって事でしょ?なら、蔑ろにはできないじゃん。」

「今更もっともらしい事言わないで下さい!」

「えー?本心だよ?」

「信じられません!テキトーな事ばかり!」



 むぅ…信じて貰えないのって悲しいね。



「まあもう出発しちゃったんだし、今更今更。切り替えてこうぜ?」

「誰のせいだと!」

「もう良いからさ、私ギルドの場所知らないんだって。道案内ちゃんとしてよ。」

「わかってますよ!ついてきてください!」



 大人げなくぷりぷり怒ってるくせに、仕事はちゃんとこなしてくれるのね。

 そう言う所、生真面目と言うか、頼りになるなぁ。


 さ、行きましょうか。

 いざハンターズギルドへ。

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