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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
126/162

第31眼 少女の孤独を払って下さい! の1つ目

「なぜそこまで頑なに?」

「邪魔なんだもん?私、丈夫だよ?」

「ではなくて。どうしてハンターなのです。」

「…まあ、キーロちゃんには言ったんだけどさ。ハンターとして登録するのは勇者として以外の身分証が欲しいからってのもあってね。」

「全くわからないわけではないですが…であれば私も、なにもわざわざハンターでなくても良いかと思います。身分証明なら、セーラーやマジシャンでも…」



 『マジシャン』はまあ魔法系なんだろう、ニールが関係してるって言ってたななんか。『セーラー』はちょっとわからないけど…



「でもさ…それだと、冒険できないじゃん?」



 異世界だもん。冒険、でしょでしょ!?



「まあ、多分そんな事だろうと思っていました…」

「ありゃ?なんでわかったの?」

「前同じ顔をしておりました……あの、あれです。悪巧みをされている時の。」



 こいつ、できる…!


 そう思って改めてムースの顔を見ようと思ったが、私と話をしながらも顔はずっと扉の方を見つめていた。キーロちゃんが出て行った方だ。



「…追いかけなくて良いの?」

「…勇者様の御意向が最優先です。そうでなくても……仕事があります。アイ様こそ行かれないのですか。」

「うん。ちょっと、ね…」



 無暗に追いかけて行っても、また同じ事の繰り返しになるだろう。

 それより。



「それよりこの王都で一番強い奴って誰?」

「っ!…どうしました?突然…」

「ちょっと知りたくってね。わかる?」

「それは…」

「アイ様以外、と言う事なら…ムラクモをおいて他にないでしょうな。」



 ヒゲニール。そういや居たっけ。


 『ムラクモ』ってのは、たしか職業名。ハクが就いてた宰相的な謎職業『ヤタ』と同じで、この国独自の役職だったはずだ。



「ああ、ムラクモさん!えっと、名前は…なんだっけ。」

「…ウルカス、です。」

「そうそう!じゃ、そのウルカスさんに伝言お願いできる?」

「私がですか!?」



 声を荒げるムース。ニールは「自分はやりませんよ」と意思表示なのだろう、顔を背けている。

 ウルカスに伝言ってだけで…!?

 そんなに怖い人なの?あんまりそんな印象ではなかったけど。



「なんかダメだった?」

「い、いえ…別に…」

「そう?じゃあ、時間に余裕が出来たらちょっと付き合って欲しいから教えてって言っといて。その時は自分の武器持って、広い庭に来て欲しいって。あと、その時はキーロちゃんにも声かけてくれると嬉しいな。」

「……お待ちください。何を、する気ですか?」

「私が何があってもケガしないってわかれば、キーロちゃんも心配なくなるでしょ。」

「生身で受ける気ですか!?どうかしています!!」

「んまあ、私にとっても必要な事だからね。って事でよろしく。」

「いや、アイ様!御考え直し下さい!流石に、ケガがどうとかのレベルじゃありません、死にます、間違いなく!」

「大丈夫だって!それに一応さ、危なくない事確認してからにするから。そんなに心配いらないよ。」

「そうは言いましても…!」

「勇者様の御意向は絶対。ね?頼んだよ」



 さっき自分で言った言葉だろ?…え?なんかニュアンスが違った?まあいいや、細かい事は気にしない。

 肩を叩きながら念押しする。



「……わかり、ました。」

「あ、それとね。」

「…はい?まだ何か」

「ムースって今、どんな仕事してるんだっけ。相談役じゃなくなったって言ってたけど。」

「…………前にも言ったかと思いますが、魔法書の整理です。相談役はつまり、王候補の補助と警護を担う役職ですので…。正式発表はまだですが、ミズー様が時期国王に決定しましたので、お役御免となりました。」



 ミズー様、と言う聞きなれない名前に少し戸惑うが、文脈からアッカーの事だと思い出す。



「それについては…あの……」

「?」

「よろしかったのですか?」

「…?何が?」

「…いえ、別に…」



 ソレについて?何についてなのか、さっぱりわからない。

 そして聞き返したのに、ムースはなぜか言葉を濁す。

 なんなんだ…



「ふぅん。で、今まで御傍付きだったのに、突然魔法書の整理なんて。ぶっちゃけ雑務でしょ?なんでそんな事させられてんの?」

「ええ、まあ。なにせ最近、魔法書の大量移動や一部消失・改変などがありましたので。確認だ保全だと、人手が足りないらしいのです。」



 ………あら、戦争だなんだと忙しい時期に誰がいったいそんな面倒な事を?

 なんだムース、その目は。何故私を見る。

 …なんとなくだが、話題を変えよう。何かやましい理由があるわけじゃないけど、とりあえず話題を変えよう。



「魔法の知識がある者でなければ理解できない部分も多いので。魔導士の数も相応におりますが、かなり足りていないのが正直なところです。なので、人員を遊ばせておく事はできないのですが…」

「…」



 そう言って彼女が見ているのはニールだ。

 見られている本人は知らぬ存ぜぬと言った顔を決め込んでいるが。


 まあ、剣と魔法どちらかと言われれば、確かにニールは魔法寄りなんだろう。剣で敵をばったばったと薙ぎ払っている姿なんてなかなか想像できない。


 一向に目を合わせようとしないニールに溜息一つ。ムースってなんか、いつも誰かに苦労をかけられてる印象があるなぁ。



「でも突然相談役クビになって、配属替えかぁ…なんかヒドイね。」

「…まあ先程の通り本当に人手不足なのと、私の所属が一時宙に浮いていたから、との事で。平時であればまた違ったでしょうが。」

「ふーん?そんなもんかね。」

「私や姫様の意向もそうですが、何よりミズー様が妹君を蔑ろにする事はないでしょう。すぐは無理でも、落ち着けばまた姫様付きに戻れる可能性は高いと思います。それまで、辛抱するしかないでしょう。」

「うん、だいたいわかった。じゃあムースの所有権は今から私が貰うわ。」

「…………………………………は?」




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