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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
124/162

第30眼 騎士の経験を頼って下さい! の2つ目

 ドアに手をかけながら入ってくるムース。

 キーロちゃんに挨拶をしながら…ヒゲ男とは一瞬睨みあうだけで声も交わさず…近くまで来て、こちらに向き直った。



「で!?」

「ああ、はい。廊下まで聞こえておりましたが…ハンターズギルドの件で間違いないですよね?」

「そうそう。で?できんの?裏口登録!」

「できませんよ!?そ」

「って言うか老けた?」



 近くで顔見るとふと思った。 数日で数年分老けたんじゃない…?

 銀か灰か。光を携えたような美しい髪色をしてたはずなんだけど……若白髪な疲れた近所のおばちゃんだよ。

 ミドリーの取り巻きの……名前を忘れたが、あの白髪の男の子がと並んでいた時には、色の違いがはっきりしてたんだけどねぇ。前はあった比較対象が今はない事も相まって、余計白髪のように見えてしまう。



「どういう意味ですか!?そ」

「えー?浦島太郎ばりだよ?」

「誰ですかそれ!?と」

「って言うか久しぶりじゃん!」

「そ」

「どうしたのよ、キーロちゃんの相談役なのに一緒に居なくて良いの?」

「………」



 ああ、申し訳ない。うん。なんか言おうとしてたみたいだけど何度もかぶっちゃった。

 会った時から疲れた顔してたけど、4割増しげんなりとした顔になってしまった…



「……それは、次期王がアッカー様に決まりましたので…っと言うかこの話、最後に会った時もした気がするのですが…」

「そうだっけ?覚えてない。」

「…っ!……こうまで断言されると私自身、言ったかどうか自信がなくなりますね…」

「大丈夫?老けたって言っても痴呆にはまだ早いよ?」

「だからっ…!いえ、もう、良いです………どうせ行き遅れですよ……」

「ごめんごめん、冗談だって。んもー、拗ねるなよー。相当疲れてるみたいだね?」



 彼女の目の下には、クマのような物ができている。言いながら、私の目の辺りを指して教える。

 ムースは自分の目元を隠すように手で覆い、疲れを思い出したように深く息を吐く。



「ここ数日、馴れない仕事ばかりですので…と言うか、見てわかるなら、余計に疲れさせないでいただきたいです…」

「善処します!」

「はぁ………で、話を聞きたいと言われたので参ったつもりだったのですが?…ちゃんと聞いて頂けるんでしょうか。」



 うわぁ、根に持ってるよ!随分カリカリしてるし…そして大人げない!大人げないよぉ!!……何歳か知らないんだけどね!!



「ああ、で結局どっちなの?できるの?裏口登録。」

「できませんってば…そちらではなく、ステータス確認無しでの登録です。」

「「え゛」」



 おヒゲのニールと麗しのキーロ、まさかのハモり。

 余程驚いたらしい。




「…そもそも、私がなぜ呼ばれたのか理解に苦しみます。まずアイ様が知らないのは当然ですし……姫様は、まあ、仕方がないでしょうが…ニール、貴様、知らないはずがないだろう。仮にもヤタを目指していた者が…」

「ハンター等と言う低俗な者共の事など、いちいち」

「ハンターどうこうの話じゃないでしょう、ゼムは!ギルドゼムはマジシャンズギルドからだと記憶していますが!?」

「む…!?…その…ギルドゼムが、なんだと言うのだ…?」

「ゼムにステータスの登録は必要ないでしょう…」

「………」

「貴様こそ、まだボケる年でもないだろうに…」



 どうやらムースが勝ったみたいだ。

 因みにキーロちゃんは弱弱しい声でずっと「え、あの…?ムース?」「今、仕方がないって…」「私、仕方がないって、どういう、意味です…か?」「ムース?あの…聞こえてます?」などと抗議していたが、ムースは気にも止めていなかった。…と言うか多分わざと無視してた。

 まあムースの言った事もわかるから何とも言えない。キーロちゃん、ちょっと一般常識に疎いみたいだもんね。


 にしてもほんと、ムースがキーロちゃんにする対応は、普通の主従と言うにはフランクさが過ぎるように感じる。『気心の知れた』と言う表現がしっくりくるその関係性は、やはり少し羨ましい。



「そして姫様!貴女も…」

「はひ…!?」

「なぜ、わざわざ、私を呼ぶんですか!?ここ数日は多忙だと知っていたでしょう!?」

「あの…だって、ハンターと言えばムースかな、と…思って?」

「イロハは飾りですか…」

「…!」

「最初に気づいてください…度忘れにも限度があります。伝令で寄越したトイも、元ハンターでしょう…」

「あ、あぅ…でも、だって…ムースは、相談役ですし…最近、傍に居ないし…」

「言い訳しない。」

「……はい……」

「…まったく、姫様…。私はもう相談役では…」

「それでも…貴女は、私の…」



 そこまで言ったキーロも、それを聞いていたムースも、言葉を止めてうつむいてしまった。


 複雑な思いをかみしめている…



「ヘイ、トイ…」



 …かと思ったムースだが、少ししてまた冷ややかな表情で、今度はメイドに向き直る。

 部屋の中に居たのは一人だが、声をかけられもう一人が扉越しに出てくる。



「姫様が聞きたい事がわかっていたなら、わざわざ私を呼ばずに、姫様に意見して貴女達が答えれば良いではないですか。何故わざわざ私を呼びに来たのです?」

「「…?」」



 ヘイ、トイと呼ばれた二人の瓜二つなメイドは、首をかしげながら見つめあった。



「命令されませんでしたので。」

「それは相談役の仕事ですので。」

「だから!………はぁぁぁああああ………………もう良いです………私、戻って良いですか。」

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