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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
122/162

第29眼 食後の一時を寛いで下さい! の3つ目

「ハンター、でございますか。ふん………持ち合わせている知識が足りませんな。」



 かくかくしかじか…と言って伝われば世の中の面倒はどれだけ減るだろうか。

 しかし残念ながらそんな汎用性に優れた言語はこの世にもあの世にも、もちろん異世界にも存在はしていない。

 私がハンターになりたいと言った事。ハクはそれが無理だと断言したが、理由は言わなかった事。その辺りをできるだけ丁寧に説明してあげた。結果がこれだ。


 口元に、もといヒゲに手をあてて考え込む長身の男。

 彼の名はニール。フルネームはなんだか煮魚みたいな名前だったはずだが、覚えてないし、わざわざステータスを確認する程気にもならない。なのでニールはニールのままで良い。興味が無い。

 ただ、味方に引き入れる際初めて気が付いたのだが、彼の名前の最後に『アスノート』と言う文字がくっついていたりする。この城で要職に就いている者の中にはそんな感じの名前を持つ人間が多数いる。そのほとんどが代々の王族とどこかしらで血縁がある者達らし、と言うのはついでに聞いた余談だ。

 


「お前…『我が知識が役に立つかと』とか言ってたくせに。」

「ええ、しかし仕方がありますまい。ゴミに興味がわかないのは当然の事。」

「そこまで言うかい…」

「戦闘に秀でたスキル持ちも数多居る我が国では、需要など無いに等しい。にも拘わらず有用なスキルも持たず、そのくせ頭も使えない下等な連中。…カー・ラ・アスノートの品位を下げる、寄生虫にしか思えませんな。」



 ああなるほど。

 確かに、この国ではスキルを持つ人間がとても多い。

 特に王城内を見渡せば、殆どスキルを持つ人間ばかりと言えるくらいだ。そのすべてが荒事に特化した力と言うわけではないにしても、戦いに流用できる物の数は勿論多い。そしてそれらは、この世界での魔法戦闘の一次元上の効果があったり、もしくは魔法戦そのものを別物に変貌させるほどの力を持つ。だとすれば武力が必要な場合には勿論、戦闘向きのスキルを持っている人間が徴用されるのは火を見るよりも明らかなわけで。

 つまり冒険者…ここではハンターって呼ばれてるらしいけど。ハンターってのはスキルはないけど腕っぷしでしか仕事ができない、残念な人達の集まりって扱いなのか。

 切ないなぁ。


 そもそも、なんでこんなにスキルを持っている人間が多いのか、と言うのも謎だけど。

 ミリアンちゃんが言うに、勇者以外の人間でスキルを授かった異能保持者はかなり希少な部類だと聞いたんだが、どういう事かものすごい事になっている。

 『この世界の人口が実は想像よりめちゃくちゃ多くて、この国のこの王城にその希少存在が敷き詰められるように集まっているからだ!』と考える事が出来ない事もないが…多分違うだろうな。きっと何十年何百年前はそうだったーとかいう話だろう。神様の尺度だもん。まあ私も行った事のある神様の世界って、時間の進み方的な感覚がそもそも違ったからね。カー・ラ・アスノートで召喚の儀式が行われて直ぐに私は召喚されたって事になっているけど、実際は神の世界で数時間ステータスとにらめっこして試行錯誤をしながら、妹を一人作った上で重役出勤ならぬ重役召喚されたんだし。



「まあ、そりゃ詳しく知ってるはずもないか。」



 むしろ常に王の傍に付き従いながら、ハンターについて人より詳しく知っていると言うハクが異常なのだろう。



「……まあ、洋服を知りたいのならば仕立て屋を呼ぶべきでしょう。」



 今服の話はしてないんだけど………いや…?餅は餅屋、的な意味かな?つまり今回の場合だと…ハンターの事は、ハンターに聞けって事か。



「私よりも、適任が居るではないですか。ハンター崩れをいくつかお抱えだったかと記憶しておるのですが……気のせいでございましたかな、アーサー様。」



 キーロ自身も思い当たる事があるような反応を示すが、それよりも、色濃く表情に現したのは不快感に見えた。


 キーロちゃんの知り合いに、ハンターが居るって事か?

 それにしてもこの反応は…

 


「ニール、貴方…今、ハンター崩れと言いましたか?私の、大切な臣下を。」

「これは、失礼いたしました。ただ、お忘れだったようですので、お気づき頂くきっかけになればと…僭越ながら。」

「……そうですか。先人の言葉遣い…咎める必要もないかとは思いますが、場合と相手をお選びになるのがよろしいかと。」

「肝に銘じましょう。」



 …恐らくだが、ニールの挑発をキーロちゃんが受け流したって事なんだろう。怒ってはいたようだけど。我慢したのは…大した事ではない、と言うわけではないんだろう。穏やかな彼女がとげとげしい感情を少しでも露わにした事もそうだが、ムースやその他のメイド達との距離感を思えば、心中穏やかではあるまい。

 そして、そう、そう言えば先程彼はハンターについてなんと言っていただろうか。ゴミとか、寄生虫とか。それらが自分の好きな人に向けられていた言葉だと思うと、なかなか冷静ではいられないだろう…。

 キーロちゃん、大人だね!

 そして…


 私は一瞬で、肩がぶつかる程ニールに近づき声を潜めて言った。


「ニール。」

「は…」

「気をつけな?もし次、わざとあの子を不快な気分にさせてみろ。4回瀕死にして生き返らせてから、最後に一際じっくり苦痛を与えながら時間をかけて殺してやる。」



 怒りついでに言ってみた、「異世界で人を治す能力があったら一度は言ってみたい脅しのセリフ」!

 ………………あれ。みんな、一度は言ってみたいよね?ね?



「……」

「わかったな。」

「……肝に、銘じましょう。」



 どうやら、脅しの効果は抜群だ!


 私が小声にした意図を察したらしく、その表情は微動だにしなかったが…答える際、少しだけ体と声が震えていた。

 だがそれも、キーロが部屋に居たメイドに指示を出し終わる十数秒の間に収まっており、何でもないように再びゆっくりと声をあげた。



「とは言え、私もこのまま役立たずと思われる事は心外。汚名を返上する機会を頂きたいのですが、よろしいでしょうか。」


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