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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
邪眼勇者の冒険者譚編
120/162

第29眼 食後の一時を寛いで下さい! の1つ目


 冒険者になりたい。

 そう伝えた所、「え、冒険したいの?洞窟とか?未開の地とか?」みたいな反応された。


 別に私は遺跡とか過去の文明とかに興味はない。なんだかジョーンズさんみたいに危険極まりないトロッコ遊びをしたいわけではないのだ。

 と言うかそもそも、セステレスの歴史とかを知らない私がそういう場所に行った所で何も楽しくはないだろうし、価値もわからない。まかりまちがって見つけてしまった重要な文化財や歴史的な建造物とかを、知らずにうっかり粉砕する可能性がある。


 朝食後の何気ないお話相手になってくれているこの少女は、髪色に始まり全身コーデが淡い黄色に染まったTHEお姫様。第一王女キーロちゃんだ。

 ………あれ?王女って王様の娘の事じゃなかったっけ?ならアッカー氏が王様になった時点でもう王女じゃないんじゃね? 王様の妹ってなんて言うんだろう。……王妹とか?うーん…わからん。

 まあ、まんま「王様の妹」ってだけでなんだか良い響きだよネ!


 それにしても、これまで問題なく会話できていたのに、ここに来てこの言葉の齟齬。「『冒険者』と言う単語が伝わらない」。それが一体全体何が問題なのかさっぱりわからない。


 日本人である私が異世界セステレスで問題なく日常会話が成り立っているは、98%ほどの割合で神様由来の超自然不思議機能「自動翻訳」によるところが大きい。因みに残り2%は地球の、とりわけ日本の知識だ。

 件の力「自動翻訳」機能をくれた神、セステレス・ミリアン・ガーデゥー。この世界の主神にして因果の神、大盤振る舞いの一言ではとても済ませられないような力の数々を私にくれた張本人であり、そしてなにより私の可愛い可愛い妹(後天的)であるミリアンちゃん。

 彼女の用意してくれた力は、どれ一つとってもチートと呼んで良い性能の物ばかり。

 おそらくこの世界で無難にやっていくだけなら一つあるだけでも十分以上に生きられるだろう程のハイスペック能力…異能力スキルを自由に三つ選んで良いよと言ってくれた上に、身体能力ステータスも可能な範囲でいじくり放題。あげく翻訳を含むサービスまでつけてくれたのだから、もう私は頭があがらない。

 いくら危険な異世界に来るからと言っても、これは流石に盛り過ぎではあると思っている。

 病気や事故や通り魔事件等、可能性は低くとも遭遇する危険があったあれやこれやを含む地球生活の頃よりも、恐らく死亡確率は下がっているのではないだろうかとすら思ってしまうくらいだ。

 まあ安全はいくらあってもありすぎる事はない。それは問題ではない。


 何が問題と言えば、それだけ凄いこの世界で一番偉い神様がくれた翻訳機能にバグはあるのか?と言う話だ。…いや、神様が居るのは正確に言えばこの世界じゃないからこの世界で一番偉いと言うのとは違うかもとか、そもそも神様って「偉い」なのかと改めて考えると違和感があるなとか、楚言うのもこの際頭を過るがどうでも良い。

 正直バグを疑うのはナンセンスだとは思うが、これが疑わずにいらいでか!?

 異世界と言えば冒険者、冒険者と言えば異世界。常識ですよ?わからない人には異世界を小学生から復習をお勧めするレベルですよ?


 まあ、冒険者と言う言葉は読んで字の如く冒険する者、つまりは危ない事を危険と承知の上であえてする人の事をさす。よくよく「異世界物で描かれる冒険者と言うのはいささか冒険しているようには見えない」と言う意見はちらほら見た事があり、まあ確かにその通りだと思ってはいたのだが…まさか異世界で冒険者と言う職業が無いとは思えない。

 であれば少しくらいニュアンスが違った呼び名でも、この自動翻訳が一番近しい意味の言葉に変換してくれるんじゃないのか?考えが甘かった?

 ……過信しすぎるのは良くないのかもしれない。


「んー……なんて説明すれば良いのかなぁ……こうさ、ギルド的な物に所属して、そのギルドを中継して護衛とか魔物討伐とか採集とか、とにかく色んな種類の依頼を受ける感じの、腕っぷし自慢が集まる何でも屋的職業?そう言うのってない感じかな。」



 改めて口にしてもやっぱり冒険って感じがないなぁ。ジョーンズさんの方がまだ冒険してるよ多分。



「ハンターの事ですなぁ。」

「あるの!?」



 横から声をかけて来たのは、くすむオレンジ色の長い長い髪を携えた小柄な人影。話の行く末を見守っていたハクと言う美少女……の姿をした高齢女性ババアだ。…いや、何歳かちゃんと確認してないが、喋り方的にも恐らくそうだ。間違いない。


 って言うか、あったよ!?

 どういう事だやっぱり翻訳故障してるよこれ……。



「ああ、ハンターの事でしたか…気が付かずに申し訳ありません。」



 驚いてハクに目線を向けてしまったが、直ぐにキーロへと視線を戻す。



「なんだ、そっか…つまりはそのハンターってやつになりたいんだけど。」

「え、っと…その、それはまた、何故…?」

「なぜ…?いや、ほら、私この世界にきたばっかりだから身分証とか必要でしょ?」

「……いえ、別に無くとも問題はないのでは?」

「あった方が便利じゃん?」



 多分だけど。この世界の事を良く知らないし、私。



「それは、そうですが…アイ様は既に勇者と言う、比肩する物のない肩書をお持ちでございますし…なのでご不要かと」

「えー…!いや、ああ、うーん……でもほら、勇者としてじゃなくお忍びで行動したい時もあるし。」

「……お忍びで、ですか。」

「それにこの国の中ならそれで良くても、国外に出る時は困るだろうしさ。」

「あ……」



 私がいずれ別の国に行くと言う話をすると、彼女はいつも残念そうな顔を見せる。

 先に「妹にしたい」と言ったのが私である事もあり、そんな姿を見る度申し訳ない気持ちにはなるが…

 大好きな家族いもうとと幸せに過ごせる事以上に素晴らしい事など、この世にはないだろう。



「そう、ですよね……。でも、別にわざわざハンターでなくとも良いのではないでしょうか。他のギルドでも身分証は発行できますし、そちらの方が簡単です……ハンターは、危険です。」

「いや、でもなぁ…」

「アイ様は何故そこまで…ハンターでなければならない理由があるのですか?」



 『異世界来たら、一度はなろうよ冒険者!』

 ……言えない、この本心。



「カッハハハハ!」



 葛藤のせいで声を出せなかった私の代わりに、部屋中に響く笑い声をあげたのはまたしてもハク。



「残念ながら、アイ様…ハンターになるのは諦めるのが宜しいでしょうのぉ。」

「…どういう事だ。」

「カハハ!ご説明いたしますとも、ただし……ワシをその冒険の、お供に加えて下さるならば、ですがな!」

「断る!」

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