第4眼 異能は手早く選んで下さい! の2つ目
「うん、これは、良いなぁ。」
いよいよ気になる物はだいたい使ってみて、頭の中で候補を絞り始めた頃。
ふと、気になった事が。
「ところで、スキル選ぶのに制限とかある?」
「んー。あ、そう言えばちょっと変則能力持ちが経験してた話なんですが、同じ文字が入っていると、文字同士干渉しちゃうので、想定してたのと違う効果になってしまった事があるのですよー。そもそもこれが理由で、基本スキルは一人に一つを限度にしているのですが。」
「干渉、ね。うーん…」
「例外はあるのですよ?同じ文字なのに、違う意味を表すと駄目なのです。逆に、別々のスキルの中に含まれている同じ文字に全く同じ意味を持たせれば良いわけです。まあ、ちょっとニュアンスが違うだけでぐちゃぐちゃになったりするので。…だってほら、違う単語なわけですし?つまり、ほぼ間違いなく失敗しますが。」
「そう。あー…、なら全く同じスキルは、二つ選べたりするの?」
実は、所謂アイテムボックス的なスキルがあった。
なかなか便利そうで気になっているのだ。
因みに容量は無限大。
異世界物の小説を読んだ諸兄ら(誰の事だ)の中には、『アイテムボックスなんて一つで十分だろwバカかww』と思う人も居るかもしれない。だがまあ、聞いて欲しい。
条件を細かく指定して、入れる物と拒む物と選別したり、入れた物の状態をある程度変更できたりする。
上手く利用すれば金策他、色々な事に使えそう。
ただし入れた物の、出し入れ以外の操作は一括管理。
内部の時間を停止したり、動かしたり。他の魔法と合わせて加熱したり。
そして別々の条件を指定したボックスを二つ用意して、入るか入らないか実験してみたり。
ほんと、複数あると便利そうなのだ。
寧ろ異世界ライフはこれ一つでなんとかなりそうな気すらしてくる。
「できますよ。色々あって、それもあまりお勧めはできませんが。」
「そ、じゃあアイテムボックスを」
「うわああぁあばか!!だからお勧めできませんって!って言うかアイテムボックスとか!馬鹿じゃないですか!」
失礼な。この子は何を言っているんだろうか。
「便利だから。二つあると、良い。」
「世界の容量考えて下さいよ!四次元空間だって無限じゃないんですからね!馬鹿じゃないですかほんと!三次元ヒューマンだってそのくらい想像つかないんですか!?」
ぷんすか怒っていた。わりと本気で怒っているようだが、理由がよくわからない。
容量がどうのとか、言われないとわからないし言われてもわからない。
心を読んだわけではないだろうが、不思議そうな顔をしていたからだろう。補足してくれた。
「私の力から作るスキルだから、因果を捻じ曲げれちゃうんですよ。そこにアイテムボックスみたいなアホみたいに容量使うスキル二つも三つも入れられたら、人類なんて全部まとめて圧力でペチャンコですよ!使い古した座布団みたいになっちゃいますよ!わかります!?」
別に三つ全部入れる気はなかった…精々二つだ。ちゃんと弁えてるでしょ?
だからそんなに、荒ぶらないで欲しい。
「別にそんな大きくなくてもいいんだけどなぁ…」
無限の空間なんて必要ない。
無限と言うのがどの程度を指すのかわからない。宇宙規模なのか、それよりさらに大きいのか。そんな事はまさに神のみぞ知る、だ。
だがしかし、私は別に宇宙空間を好き勝手弄繰り回したりしたいわけではない。
今から行く異世界の大地は地球より大きいのか小さいのかは不明だが、恐らくスキル空間は、地球と同等の大きさの空間があったところで使い切る事は決して無いだろう。
たとえその半分を全部使えと言われても、使い切る自信がない。
「…え?」
「だって、地球の体積の半分とかその程度あれば、人間にしてみりゃ無限と大差無いし。」
「え、ならぜんぜん大丈夫ですよー?」
「…」
「でも、せっかく三つも選べるのに、そのうち二つを同じスキルにとか。なんって言うか、偏ってますよね、愛さん。」
「うるさい。って言うか、容量とか初耳だし。他にまだ話し忘れてる事とかないだろうなぁ…?」
「な、ないのですよ、まったく…神をつかまえてボケ老人みたいに言わないで欲しいのですよー。」
『無限裁量の道具倉庫』
…とりあえず、無限の文字を消した。
「あのー…それで、もう一つは…」
「…わかってるって」
縋るような目で見つめてくる彼女に、改めて返事をして安心させてやる。
もう一つ、と言うのは、スキル枠の空きについてだろう。
実は、女神クエストを攻略する為にほぼ必要不可欠なスキルを、辞書を渡す際に教えられている。
アイテムボックスを二つ入れるなら、後一つはこれにしてね!っと言いたいらしい。
…わかっている。
ただし、素直に従うとは言っていない。
私はようやく完成した自分のステータスウィンドウを女神の目の前につきつけると、端整な顔がこれでもかと言う程拉げられた。