第4眼 異能は手早く選んで下さい! の1つ目
実は5月が作者の誕生月!
アニバーサリー記念で、本日2話分連続投稿。
「名前の件はひとまずこれで大丈夫です。」
「…その言い草、依頼は他にもあるの?」
「実を言うと、結構沢山…勿論、絶対にとか、無理にでもとかは言わないのです!ただ…できれば、どうしてもお願いしたい事が、全部で、5つ、あるのですよー。」
「…覚えきる自信がない。」
「あ、後で手続きの時に、表にまとめて渡すのですよ。」
こちらは契約申し込み書の通りに…って、聞きなれた単語のせいで脳が仕事モードに!いかんいかん。
…にしても、手続き?表?
私は何をやらされるんだ。
「一先ず最優先して欲しいのが、勇者召喚の儀式魔法を、根絶して来て欲しいのです。」
「任された」
即決。
こんな害悪にしかならない物、残しておいて良い事はない。
私のような悲劇を繰り返してはならない。
と言うか、現実に戻れても、また小説読んでる最中に呼ばれたら、今度は確実に断固拒否するだろう。
王都、消滅。
…そんな悲劇は、そもそも生んではならない。
「完膚なきまでに、宜しくお願いするのです。」
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「…まだなのですか。」
それは、疑問系ではない。断定だ。
まだ考えてるの?じゃない。まだ考えてたのかよ、だ。
さて、ビジネスと言うからには当然見返りがあるわけで。
その見返りとやらは、可能な限り、最大限、有意義で有益な物であるべきだろう。
私は宙に浮く一冊の厚めな辞典に似た物と、その横でまた目の前に浮く長方形の窓とを睨めっこしている。
…体感時間で、2時間はとっくに過ぎている。
神様?ああ、私の隣で寝てるよ。
ごろごろ、でろでろ、だらしなく。
浮いているのも疲れた、とか言って。
私は悪くない、仕方がないのだ。
だって、そりゃそうだ。
「予定外で、突然で、一方的な上、女神からはクエストを発注するわけですし。超サービスするのですよー!」と言って渡されたのは、選べる異能力百科事典。
この中から、本来は一つである所、三つまで持って行って良いと言われたのだ。しかもこの空間でなら、お試し可能。
曰く、なんだか別件の異世界召喚の際、お試しができなくてトラブルが発生したからとかなんとか。
…めぼしい物は一通り、試してみたくなるのが人ってもんだよね。みんな、そうだよね?
なお、最初にこのステータス画面を見た時から既に、一つの枠が埋まっていた。
「それは体感速度とか思考速度を加減速する能力ですよー。会話が進まないので、先行御試しも兼ねて、ちょちょいと。」
と言われた時に思い出したのは、会ってわりと早い段階で、見えない空間でなにやらしていたお姿。
あの時はまだちょっと、女神様らしさも残っていた気がするんだけどなあ。
『加速世界の孤独思想』
…どうしよう。ルビがふってある。
それも、結構キツメの奴。
イデオロギー。何、それ。聞いた事有る気がするし、気のせいのような気もする。
英語の成績は良くなかったが…なんだか意味が間違っていそうな気がする。やだ、怖い!
いやいや、誰のセンスかはわからないが、人智の及ばぬ奇跡の力。
見た目で判断しては駄目だ。うやうやしくしなければ。決して引いてはいけない!
「…カッコイイでしょう?」
ああ、女神様。
貴方だったか。
とりあえずこの、加速世界のなんたらりすとは一旦外そう。
そう思って手を近づけると、全体ではなく一文字だけを選択してしまった。
…なんだ、これは…?
一文字ずつ編集できる…!?
一文字消してみると、その途端に今までの思考速度が保てなくなる。
思ったよりも意外と優秀だったのかもしれない、ナントカリスト。
消した「速」の文字を元に戻す。思考が巡る。
その様子を見ていたらしく、だらっとしていた体に少しだけ力を入れて、声を投げてくる。
「あ、その本はさっき言った通りあくまで『見本』ですので。能力名はご自身で決められますよ。とは言え大変な上効果がどうなるのかは試してみない…と…、え、と………まさか、今からまた、試したりは…?」
「寝てても良いよ?」
リアクションが無い。どうやら、フリーズしたようだ。
そして辞典の横に浮く、タブレットの画面みたいな透過ウィンドウ。
これは俗に言う、ステータス画面だ。
こっちもまた「自分自身のパラメータは、現実的な範囲で好きに変更できるようにしたのです。なんなら男にだってなれるのですよ!どうぞご自由に!」なんて言ってくれた。
因みにウィンドウをスクロールしていくと、空白の枠が三つ現れる。
下二つには、ご丁寧に「NEW!」とか「EXスキル」とか書かれている。
ネット風だったりチープなサブカルチャーっぽさ。理屈ではなくなんだか笑いがこみ上げてきた。
本来一人一つしかないスキル枠が二個追加され、計三個。
辞典で選択したスキル名が自動でコピペされる便利仕様だった。