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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
108/162

第26眼 邪眼は正しく使って下さい! の2つ目



「昨日の内にご案内できず申し訳ありませんのぉ。」

「……」



 食堂を出たハクと私。

 私が昨日のうちに頼んでおいたある場所へと、ハクは案内してくれると言う話だった。


 だが!

 外見詐欺のおばばと交わす言葉などない!


 無垢な妹系少女の素晴らしさについてなら一晩中でも語りつくせる私だが、私はコレを受け入れられない。

 見た目だけ美少女だと!?寝言は寝ている間だけにして欲しい。

 昨今萌えジャンルの多分化が進み、私が読むライトノベルにも同様のケースで「生きた年数は長いが見た目は幼い少年少女」と言うご都合ファンタジー生物がある一定の評価を得ている時代ではあるが、私は心からこの文化を否定したい。全力で否定したい!なんだそれ、おかしいだろ!少女は幼いから少女なのだ!ミドリーみたいに行き過ぎた例は除くが、少しくらいませてたり頭が良い事自体は全く悪いとは言わない!と言うかむしろ少しくらいはそういう部分が無ければ人間味がないと言う物だろう。何故なら少女はいつか大人になる物なのだから。でもなんだ、体は子供で頭脳が賢者!?だからどうした!外見だけでとりつくろわれたその器の中には人が少女を愛でる上では避けて語れない少女性が皆無ではないか!妹とはつまり少女であり少女とはつまり妹だ。人間にとって外見が重要だと言う事は重々に理解しているし19と少し年月を経てそれは確信と言っても良い程に疑っていないが、だとしても外見だけで全てが決まるわけではない。中身が伴っていなければ違和感は浮き彫りになりその明確な差は愛と言う感情を妨げる。人間に近い見た目のロボットの外見に恐怖を覚える現象を「不気味の谷」と表現するがあれと同じだ。見た目だけが精巧な美少女であるにも関わらず中身にそれと釣り合わないモノが入っていると言う状態だからこそある不気味さがそれにはある。口調だけおばあちゃん言葉になるなんちゃってロリババアはどちらかと言うとちょっとマセ方をこじらせただけとも言えるが、中身がババアならそれはもうババア以外の何者でもない。普通のババアでさえ私は受け売れられないと言うのにそこにプラスアルファの要素が加わって好きになれるはずがない。ターボババアとかムラサキババアだって好きな人が居ないのと同じでロリババアは世界から愛されない、問答無用で駆逐されるべき存在なのだ!



「無視されると、さすがに傷つきますわい…」

「……」



 昨日は見た目に反して腹の座ったような、落ち着いた声を出していたエセ少女は、しかし悲しそうな感情を本物の少女のように露わにしている。

 他の王族に関しては昨日とまた違ったそれぞれの色の服に身を包んでいるが、ハクだけは昨日と全く変わらない恰好だ。

 そもそも、ハクと言う名前と服の色が合ってないし。


 ……できればずっと黙っていてやりたい気分ではあったが、聞きたい事も言いたい事もあるので、いつまでも無視しているわけにもいかない。



「はぁ……言ってた物の準備はできてるんだろうな。」

「ご要望の通りに。この国にある魔法技術系の資料……中でも勇者召喚に纏わる情報、魔法陣等は一所にまとめております。ただ、本当に良いのですか?」

「勇者召喚系だけわかりやすくしてくれてるって事でしょう?なら良いよ。」



 勇者の召喚に関わる技術は遥か昔からある情報で、その来歴は不明なのだそうだ。まあミリアンが自分で言っていたので、おそらくいつかの時代に神から啓示として齎された物のはずだ。

 私は昨日の内に、「お前たちが使った勇者召喚技術は使用期限が切れていたため、不完全な物になっており本来の効果はもう出ない。自分が来たのは間違いのような物であるが、物のついでだとミリアンから頼まれた為ついでに勇者召喚の技術を回収しに来た。」と言う旨を述べている。

 ちょっとばかり話は盛ったり変えたり嘘で塗りたくったりしているが、口から出た出まかせであり言ってしまえば作り話でしかないが、本筋の部分は概ね真実でできていたりする。

 嘘をつく時には真実を混ぜろとよく言われるがまさにそれだ。頭の中で作り出す虚構部分が少なければ少ないだけ脳のリソースは会話に重点を置く事ができるようになり、結果言葉は真実味を帯びる。……まあ正直、言ってから「これ別に嘘つかなくてもよくね?」って思ったのは内緒だ。


 本来なら昨日の内にやっておかなければと思ってはいたのだが、私の希望を伝えると「今日までに一か所にまとめておく」との提案があった。

 資料は「使う分」・「調べる分」・「複製する分」・「保管する分」等と色々な場所に点在しており、勇者召喚のそれかどうかを素人が一目で判断するのは難しい状態らしい。その為魔法に詳しい者が資料確認及び解説役として同行すると言う話になったのだが、それは絶対に避けたかった。この作業だけは、極力一人で行いたいのだと告げると、資料の選別だけでなく一ヶ所にまとめて素人目でもわかりやすくしてくれるとの事だったので、お言葉に甘えて今に至る。

 ようやく待ち望んでいたミリアンクエストのクリア。



「って言うか、私が良いって言うまで絶対に誰も入れないように言っておいてよ。」

「はぁ…」



 なので、今ハクが言っているのは「本当に解説役要らないの?つけた方が良くない?」って事だ。

 いりません。必要ないんです。


 因みにハクは昨日ずっとアッカーと共に居て執務の補佐を行っていたらしく、今日もこのあと行くのだそうだ。私に解説が必要なら立候補するつもりで無理やりその許可をアッカーからもぎ取ってきていたらしい。


 一日付き従うと言う発言は冗談と言うか、一縷の望みをかけた心からの願望………今日は平和に過ごせそうだ。



「アイ様。」

「何?」

「アイ様は神の目を……神眼をお持ちなのですか?」

「……」



 予想外の質問に歩みが止まった。



「どうして、その名前を知ってる?」



 神眼。ミリアンの口から聞いたが、これはあるスキルの略称だ。

 正式な名前は、天命直視の全能神眼ゴッドアイ

 とある理由から私が手に入れる事ができなかったスキル。私の使う、単目直視の覚醒邪眼イビルアイの元となっているスキルでもある。



「アイ様は、このセステレスへ来られた他の勇者様についてはご存じございますでしょうか。」

「…いいや。」

「昔この国が召喚したお方に、神の目を持つ少年と言われた勇者様が居られたのです。ワシが唯一直接見た事のある、……いえ、アイ様以外に見た事がある唯一の勇者様、でございます。」

「神の目…」



 そいつが本当に神眼ゴッドアイを持っていたとしたら…………



「長い長い歴史の中で、存在する可能性すら検討されていなかった……異能力スキルを複数その身に宿す方…。その力で魔の者共を悉く屠り平和を齎した…神の化身、等と呼ばれておりました。」



 異能力スキルオン異能力スキル

 神眼だから複数持ち、複数持ちだから神眼と言うわけではないが、必然的にその可能性が思いついてしまう。



「へぇ……」

「アイ様も、同じなのではありませぬか。」

「…………」

「お持ちのスキル、……一つだけではありますまい。」

「……さあね。」

「…カハハッ!いつか、生きている内に、信用されたいものですなぁ。」

「その、さ。神の目を持つって言われたそいつは、生きてるの?」

「わからぬのでございますよ……勇者様はいつも、最後には姿を隠されるので。まあ、そういう意味では、生きていても………もう、お会いする事はできないと思いますが。」



 優れた勇者に成長した人間は、元の世界が秘密裏に回収していく、なんて話もあったけど……

 その少年も日本人だったのだろうか。



「そう。」



 会う事はないだろうが、私との共通点が多そうな少年。

 彼は今どこでどうしているのだろうか。

 気になったその少年の話題に、私はなんとなく気のない素振りをした。




※------------------※




「何か聞きたい事があれば、扉の外に資料についてわかる者がおりますので、お気軽にお声をおかけ下さいませ。」



 到着と同時に話を聞かず扉を開けた私に、ハクは後ろから声をかける。



「そちらにまとめられているのが、勇者召喚に関わる物でございます。」

「わかった。」

「ではごゆるりと。」



 その声に返事をせず手を振ると、静かに扉が閉まる。

 扉が閉じる音よりも早く振り向いた私は、早速勇者召喚についてまとめられていると言われた資料の山に手を伸ばした。それは文字通り山だ。



「…ほう。」



 成程、確かにわかりやすく除けてある。

 同室内ではあるが、その中でもひとまとめにされた新旧の資料。

 どうやら廃れ始めていた文化を改めて掘り起こしたと言う事もあったらしく、今後の為に劣化した資料の補修や複製、それも時間に余裕ができた場合は勇者召喚の研究も進める予定だった為研究用教材用保管用等と増えており、その数だけでも元の資料より多くなっているくらいだ。

 一日待つのはもどかしかったけど、寧ろこれだけの資料を一日でここに集めて来られたその手腕に脱帽と言った所か。


 私としても、まあ感謝の気持ちを一つ二つ表したい気分になろうと言う物だが、それでも今回はどうしてもハクを同行させる事はできなかった。



「まだ、これを見られるわけにはいかないしね。」



 資料の中の一つ、魔法陣を見やる。

 他にも資料は多くあるが、それらを見て魔法陣に差異がない事を確認した。


 大丈夫、これなら多分一発でいける。


 そう私は確信した。

 そして私は目を閉じて、邪眼の3つ目のスキルを使う。



「ぶっ壊れろ、……アイデンティティー!」



 刹那、薄暗かった部屋の中は小さな太陽が現れたのではないかと思う程強烈な光源により真っ白に染まった。

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