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邪眼は正しく使って下さい!  作者: たかはし?
世界転移の邪眼勇者編
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第23眼 損得は愛故に捨てて下さい! の3つ目



 無意識に叫んでしまったが、それを聞いてもハクは一瞬すら止まらない。手も離さない。

 私の手を挟むようなハクの両手が動く。もみもみ、さすさす、わきわき。


 鳥肌が、鳥肌が止まらない!気持ち悪い!怖い!!……身の危険を感じるっ!!



「何これ、何コレー!!」

「アイ様ー!!申し訳ありません!!時折こうなるのです!!」



 ハクは延々と喋り続けている。

 顔を見られているはずだが目は合っていない。

 キーロがハクの声に負けないように大声で話しかけてくる。


 …………あ、これ大きな音でまともに会話できないライブ会場みたいだなぁ。

 じゃなくて!



「怖い怖い怖い怖い怖い!止めて!何とかして!!」

「私では無理でっ…!!お父様!!」



 言うより早く、既にハクの肩に手をかけ揺さぶっていた元王様。

 その揺れがそのままハクの手を通じて私にまで伝わって来る。



「止まれ!!やめろ!!落ち着け!!」

「邪魔をするでないぞクロ坊!今は大切な話をしとるのがわからんのか!ああアイ様!勿論ワシとしてはアイ様に不利益がないよう今後は常に御傍に控えて-」

「クッ…!」

「ダメじゃん!!」



 反応はするも全く止まる気配がない。

 握る手の力は振りほどけない程の剛力と言うわけでもない。寧ろ優しく包み込むようだ。それでいて少しでも引こうとするとそれよりも先回りするようにふわりと受け止める。



「ヒィイイ!は、あ、離せぇ!わかったから!ストップ!ストーップ!!」

「あっ…アイ、様?」



 手が離れ、同時に静寂が戻る。

 静寂と言っても、私やキーロは未だ大声で話していたせいで息を荒くしていた。

 それに対して何故か、最も体力を使ったはずのハクが微動だにしていない。まるで写真のようだ。


 怖かった…なんだ今の!



「…カハハ、いやはや……申し訳ございませんのぉ。アイ様。」

「い、今のは……」



 どういうつもりか問い詰めたい。が、質問の仕方によっては再発しかねない。

 どう言葉を続ければ良いかと迷って言葉が止まり、その途中までの声すら緊張で震えていた。



「…おばさまは、とても勇者様に憧れを抱いていると申しますか……えっと、その、定期的に、先程のようなお話をしていただく時間を作る、と申しますか…決して、悪気があったわけではなくてですね!今回は勇者であるアイ様が目の前に居ると言う事もあって、普段よりとても力強いと言うか、とても驚かれたかと思いますが……おそらく今ので、また暫くは大丈夫だと思いますので…」



 声をかけかねていた私を見かねて、キーロが解説及び弁明をする。


 ん、なんか今、何かひっかかった。

 なんて言った?



「いや、勇者様に聞いて頂けると思うとどうにも止まらず。申し訳ございませんなぁ。」



 いや、物凄く素直な気持ちは伝わってきたけどさぁ…………

 怖いよ……トラウマになりそうだよ……



「勇者と話せるの、そんなにうれしいんだ…?」



 その気持ちは全く分からないが……

 あれか?アイドルみたいなもんなのか?でもハクちゃん、握手会であんな事すれば絶対に出禁になるぞ?



「ええ、まあ。」

「…わかった。なら、次にさっきの話し方をしたら、二度と口をきかないからそのつもりで。」

「な!?」

「冷静に、会話できる相手としか、話しません。OK?」



 世界が終わったような顔をされた。



「っ……!!…わ、わかり………ました。肝に、銘じ、ますっ…!!」



 まるで望まず我が子を手放す親のような苦渋に満ちた顔。

 その反応にすら嫌悪感が湧き上がるが、そこまで言うのは流石に可哀想かと思いとどまる。

 一応釘はさしておくけど。



「勿論、これから君が嘘を言っても同じ事さ。でもまあ、なんだ。その、気持ちの、一部は、伝わったよ。言えって言ったのは私だし、今回は大目に見る。二度目はないと思ってね。」

「ははぁっ……」



 真面目な話をしていたはずが、気づけば一瞬で向こうのペースだ…

 やっぱり、油断できない。


 未だ緊張で張り詰めた部屋の中、なんとも引き締まらないハクと、その胡散臭さに嫌気がさす私。

 二人だけがあまりにも場違いな空気に包まれている。



「で、だ。さっきのあれ、君の超個人的な理由はわかった……他は?他にもあるだろ。」

「他と言うと、カー・ラ・アスノートとして理由、といった所ですかな?」

「ああ、そういう事ね。」

「国としての意図となると、アイ様と良い関係を保ちたい。あわよくばこの国に価値を見出していただければ守っていただけるのでないか、という腹積もりでおります。」

「まあそうだろうね。他には?」

「ございません。」



 断言しやがった…

 無いわけ無いだろ。



「……ああ、じゃあ言い方を変える。私に国を渡して、この国に起こるメリットとデメリットだ。まずデメリットから。」

「そうですなぁ…アイ様の判断によっては簡単に我が国が滅びますな。何をどれだけ要求されるか事前にわからない為、余裕がある事はもはや安全ではなくなります。また文字通り生殺与奪が全てアイ様の気分次第となるため、国内各所から反発があるのは必至。外敵より先に内戦すら懸念に入れる必要も出てくるでしょうか?噂の広がり方によっては、戦争状態にある国以外からも外交遮断となる可能性も十分にございますな。何故ならこの国であげる利益が全てアイ様一人の物になると考えれば、面白く思わない国もあるでしょうしのぉ…。今は人も物も金も、全てが戦争の為に使われている現状。場合によってはアイ様への献上品をねん出する事が敗戦の決定打になり得るでしょう。先が思いやられますな!カハハ!」

「……そりゃそうだろうよ。」



 私だって簡単に思いつくだけでデメリットなんていくつもある。

 だからこそ、この提案の意味が理解できない。



「で、この国のメリットは?」

「まあそもそも、この国はアイ様との関係を保てなければ滅亡するのですよ。」

「いやいやいや、おかしいだろ。私を戦力としてあてにしてるならまだしも、私に何も求めないってさっき言ってたじゃないの。私が手を貸さないならどちらにしろ滅びるんじゃないの?」

「ええ、どちらにせよ危ういでしょう。ですが、勇者様と繋がっていられるのなら、一切なかった希望の光が、僅かにさすのです。この国が勇者に見捨てられていない……と言う、建前。それがこの国の唯一の希望となるでしょう。」

「全然わからん……」

「詳しく話すと長くなりますでな、今は簡単にご説明させていただきますと、この国は勇者と共に生きてきた国なのです。勇者とその血を継ぐものを王族として迎え、強力なスキルを少しでも多く残し、それらの力を持って繁栄を続けてきた、勇者と勇者のスキルによって成り立っている国なのですよ。」

「……は……」



 スキル保持者が多い。

 数少ない勇者召喚をした国。

 勇者が使うのは日本語。

 日本語の名前。

 土下座。

 緑茶。

 そして、「子供を作る部分さえ残っていれば良い」。

 ああ、合点がいった。


今日のミリアン一言劇場

「え?怖いって……アイお姉ちゃんととっても似てる気が…あれー?」

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