表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

アナタはなんにも知らないの

「別にアナタ自身にはミジンコの目ほどのも興味はないから勘違いはしないでちょうだい?」

「ひ、ヒドい……」


 モテ期到来、と舞い上がった瞬間にこちらの表情を見て彼女は必要以上の釘を刺してきた。そういうの最近流行っているのだろうか。昨日もされた気がするけど。


「そうですよ、ヒドいじゃないですか! 私だってミジンコの手ぐらいの興味はありますよ!」


 わーい。ミジンコの目と手だと三倍くらいのサイズ差があるから、それぐらいの興味は持ってくれているらしいことに嬉しくなってしまう。

 きっと二人のいうミジンコは大きいんだろう、という脳内補完を付け加えて前向きにそう解釈した。


「っていうかそもそもなんなんですか貴女は! 柊斗くんを預かるとか勝手なことを言わないでください。そんなこと許可できません!」


 加藤さんが俺の腕をぎゅっと抱え込むようにしてそういった。柔らかく温かい感触に包まれて俺は硬直した。


「お黙りビッチ。アナタに許可を取る必要はないわ」

「さっきからなんなんですかそのビッチって! 私はそんなんじゃありませんよ!」


 怒ったようにいい俺をさらにきつく抱く加藤さんを、猪澤さんは鼻で笑った。


「よくいうわ。静岡の連中はそうやってあたかも当然ですって顔をして自分の物だと主張するのよ」

「な、なんの話ですか!?」

「その有様でよく吠えるわね。この雌犬!」


 吐き捨てるようにいわれ、自分が俺を強く抱きしめていることに気づいた加藤さんは、一瞬怯んだ後、思い直したようにさらにぎゅっと俺を抱きしめた。


「なんといわれようと、柊斗くんを連れて行くことはさせません!」

「ふん、アナタにそんな権利があるわけ?」

「私になくたって、病院が許しませんよ!」


 そういうと加藤さんは俺の枕元のナースコールに手を伸ばした。


「チッ!」


 そうはさせまいと、猪澤さんが加藤さんに飛びかかるも、一瞬遅く、ナースコールが押された。


「このクソアマが!」

「ふっふっふ〜ん、良いんですかぁ? 速く逃げないと、人が来ちゃいますよ〜」


 そういいながら加藤さんはナースコールを連打する。

 忌々しそうに舌打ちする猪澤さんと、勝ち誇った顔の加藤さんに挟まれて、俺は身をただ堅くすることしか出来ない。


「お嬢、人が来ます」


 いつからいたのか。おそらく最初からいたのだろう、部屋のドアの外から厳つい黒服のあんちゃんがこちらをのぞき込んでいった。

 

「そう、わかったわ。今日のところは退散しましょう」


 憎々しそうにそういうと、猪澤さんは俺の肩に一発パンチしてから部屋を出て行く。


「藤宮柊斗、アナタはなにも知らないのよ」


 去り際に猪澤さんはそう意味深な言葉を言い残していった。

 なんで殴られたんだろう?

 そう思いながら俺は彼女を見送った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ