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噴火

 その時のことはいまでもハッキリと覚えている。


 五月初旬の明け方のことだった。ベッドの上で眠っていた俺——藤宮柊斗ふじみや・しゅうと——は身体が揺れているような気がして目を覚ました。

 なんだこの揺れ?

 気のせいかと思うぐらいの小さな揺れが徐々に大きくなり家具が鳴るほどになった。

 脳裏をかすめたのは、先週みた「東海地方で小さな地震が頻発しています」というニュース。

 静岡県民が生まれたときからずっと言われ続けてきた「東海大地震」。それがついにやってきたかと思った。

 しかし、そんな予想とは裏腹に揺れは次第に収まっていき。

「…………」

 ただの地震か、と思いつつ雨戸を開けて外を見ると、正面に見える富士山の山頂を黒い雲が覆っていた。

 その雲が、いつも見るものと違うと思うと同時、空気がチリチリと肌を焼き、全身の毛が逆立った。

 ————!!

 空気が震え全身を打ち、壁に叩きつけられる。

 こふ、と詰まった息に喘ぐと、真夏のアスファルト上をバイクで駆け抜けた時のような熱風が身のうちに入り込み、肺を焼きむせかえる。

声にならないうめき声を上げ這い回り、窓から外を見た。


 富士山が燃えていた。

 山頂が赤く燃え、その上をどこまでも果てしない暗雲が登っていく。


 富士山の噴火。

 ずっとずっとやってくると言われていた地震よりも恐ろしいそれが、ついに起こったのだった。


 富士山から立ち上る噴煙は、徐々に広がりをみせ、こちらへと迫ってくるのがみえ——そう思ったときには、俺は熱い熱い闇に包まれていた。

 そうして一瞬で広がった火山灰に包まれ、俺の意識は奪われた。



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