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はっきり言って彼女の容姿端麗に惹かれて興味を持ったけど、彼女の吐く言葉にも実は惹かれてる

僕が彼女を初めて見たとき、既に怒っていたと思う。後から訊いたら実はとても心穏やかな状態だったと主張したけれども、客観的に見て、そんな訳あるか、って思った。とにかく生まれて此の方、こんなに怒った人間を見たことが無かった。いや、1人だけ、僕の大好きなバンドのヴォーカリストが常に怒りをMaxにした状態で楽曲を演奏していたけれども、それに勝るとも劣らない激情だった。女性であることを加味すれば、発するエネルギーとしたら彼女の方が上だろう。


「自分を棚上げしやがったこの卑怯者が! さっさと謝れよ、根性なし!」


これはその時に彼女のが発したセリフだ。そして、この言葉を投げつけられたのは、学年で一番人望が厚く男子からも女子からも一目置かれている立石くんだったのだ。


「なんとか言えよ、この腑抜け!」


普段温厚な立石くんが明らかに怒っている。当然だろう、僕だってここまでのことを言われたら怒るだろう。けれども、さっき、一人きりで中庭のベンチにいたけれども彼女を見て、僕はむしろ彼女に対して深くシンパシーを抱いた。


中庭でスマホをいじっていた彼女を女子が10人ほどで取り囲んでいる場面だった。立石くんへの彼女の所業を非難する目的だというのは明らかだった。


「ねえ、カナタさん。立石くんに暴言吐いたこと、謝りなよ」


彼女は薄笑いを浮かべて女子たちに応対する。


「暴言、っていうのは、根拠なく相手を誹謗中傷するような言動のことを言う。わたしのように根拠も明確で理路整然と相手の注意を促す言葉は、正論、て言うのよ」

「あなた、どこまで厚かましいのよ!」

「厚かましいのは立石の方だろが。あいつ、柴田に何て言ったよ。全力を尽くさない人がいるとみんなの士気を下げるから真剣に走れだと? 余計なお世話だそんなもん」

「クラス対抗の全員リレーなんだから真剣に走って当然でしょ」

「お前も立石と同じバカか。あれが柴田の全力だってほんとに分かんないのか」

「だって・・・途中で陸上部やめたけど柴田くんは100メートルで市3位の選手だったんだよ。誰が見たって手抜きでしょ」

「はあ・・・どこまでおめでたいんだよ、あんたらは」

「何!? それこそ暴言よ。撤回して!」

「しない。なぜならわたしが正しいから。いい? 柴田が陸上部をなんで辞めたかちょっとは頭使って想像してみろよ」

「別に怪我したわけでもない。受験勉強に専念したいからって本人が言ってたでしょ」

「あのなあ・・・そんなのそのままストレートに聞いてるだけなら人間やってる意味ないんだよ。柴田の顔色とか態度とかよく見てやれよ。あまり言うと柴田の尊厳を傷つけることになるからこの程度にしとくけど、もっと相手の腹に入ってやれよ。わたしは立石より柴田の方が重厚な人格だとすら思うぞ」


後で柴田くんがカナタさんのために告白したことだが、軽いうつ状態になったのが陸上部を辞めた原因だという。走るのは好きだったが、100メートルのコーチと柴田のくんの課題設定が彼自身をどんどん追い込んで行ったという。体力を含めた潜在能力ではリレーも最速で走れるとポジティブな人は考えるだろうけれども、柴田くんは自分の精神状態の自己防衛のために、全力で走ることへのブレーキを脳がかけているのだといという。立石くんも正義感から言ってくれているのはとてもよく分かったけど正直辛かったと。


とにかく僕は、カナタさん、という僕と同い年の同級生に強烈に興味を抱いてしまった。



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