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第2話:女神は突然に

大学生ナルこと成実はイケメンなのに、自信がなく女性不信。そんなある日、アルバイト先に現れる‘午前0時の女神‘に密かな想いを寄せるが・・発展しないまま時が過ぎて、もう関わることがないと諦めていたナルに突然・・・・

 

 毎日なんとなーく大学の講義を終えた後、アルバイトがない日は、大体本屋に寄って漫画を見る。で買い物をして家に帰る。


 たまには友達とご飯を食べに行ったり、飲みにも行くんだけど・・・

 

 基本的に家でのんびりしてるのが好きなのかな? なんて思う。まぁ、なかなか行かせてもらえない訳が他にもある。


 我が家は父、母、そして妹が三人いる。


 わりと仲はいい。

 

 女が多い家庭って訳なんだけど、これが女全員、家事が嫌いときてる。いや、嫌いって言うより向いてないのかもなぁ。

 

 何度か妹には、順番にやらせてはみたんだけど、洗濯やらせれば


 「おにいちゃんっ洗剤はどこにいれるの?」


 から始まり、そのすえ洗剤を入れすぎて泡だらけにし、ご飯を作らせれば


「ごはんって牛乳いれたりする?」


 なんて信じられない質問。


 野菜は材料の半分以上が削りとられ、カレーでさえ焦がす始末。


 これが姉妹三人とも同じときてる。


 母さんも結婚当初は頑張ってやろうとして、掃除と洗濯はなんとか出来るようになったものの、料理だけは、あまりの危険さに父がやめさせたそうだ。


 まぁ、家に帰ってきて嫁が血だらけだったら、僕も辞めさせるな。


 母さんは華やかで、ダンスの先生をしている。誰とでもすぐ仲良くなるタイプで、親父とは真反対の社交派。けど家のこと、特に料理はいまだにダメで。


 だから、必然的に親父が料理は担当してきた。


 無口で無愛想な見た目に似合わず、昔ホテルの厨房でアルバイトしていた父は、僕のお弁当から夕飯までつつがなくこなし、幼稚園では、どこのお母さんより華やかで美味しそうなお弁当を作ってくれた。


 幼稚園のお母さん達の間 では


 「ナル君のママはお料理が上手ね〜〜」


 なーんてうわさになってたけど、僕はどうしても親父が作ってるって言えなくって。


 周りはみんなお母さんが作ってきてたし、でも本当は「お父さんが作ってくれたお弁当なんだ!」 って言いたかった。

 

 親父はどんなに忙しくても、前の日からお弁当の支度をしてくれて、僕が好きだったクマを形どったおにぎりなんかもよく作ってくれた。


 大変なのに僕の為にしてくれてる! 幼くてもよく分かっていた。


 なのに母さんときたら


 「あははっそうなの〜以外に器用なのよ私」


 なんて周りに調子合わせてたもんだから、その時なんだか僕は腹が立って、一週間くらい母さんと口をきかなかった。


 今になって思うと、色んな夫婦の形があって、親父がそれでいいんだから母さんがそんな感じでもいいかなって思えるようになった。


 少しは大人になったかな?


 僕は小さいときから親父の料理しているのを見るのが好きで、片時も離れず出来上がる料理を見守った。


 ごつごつした大きな手から作り出される美味しい料理が大好きだった。


 「魔法みたい!!」


 小さい僕はそう思った。いつもワクワクしていた。


 そのうち、少しずつ手伝うようになり、妹が生まれてきて、父が忙しいときには、僕が料理をするようになった。


 親父は丁寧に色んな料理を教えてくれたし、レシピを書き込んだノートまでくれた。


 幼い妹が好きそうなお菓子や、パンなんかも親父と研究して作るようになって、休みごとに一緒に作って。


 気がついたら、妹が食べたいものをリクエストして、僕が答えるシステムになっていた。妹が喜ぶ顔か見たくて、何でも色々作っていた。


 だけど、妹たちが育ってきて、これでは母さんの二の舞になる! 嫁にいったら困るだろうなぁ・・と不安になった僕は、何度もやらせようとしたけど


 「だってお兄ちゃんが作るのが一番おいしいんだも〜ん」  

 

 「私才能ないし!」

 

 「お兄ちゃんのさくらんぼのムースがまた食べたいぃ〜」

  

 三人姉妹とも同じような意見。


 「そうそうっナルくんのケーキ! ママの教室で評判良かったからまたおねがぁ〜い」

 

 母親がそう言ってたら始まらないじゃないか!


 なんてね。そう言いながらその言葉に負けちゃう僕もいけないかぁ。


 美味しいって言われるとついついまた作ってやろうかなんて思って。

 

 そんなこんなで、我が家の食事情は親父と僕にかかってるって訳で。


 今日もなに作ってやろうか〜?なんて思いながらスーパーで買い物してる。

 

 「寒くなってきたし・・パン焼いてシチューにしようか?あいつらスープ系好きだし」

 

 今晩のメニューはシチューと手作りパン、サラダに決まった。


 もう10月も終わりになると、夕方が涼しくてちょっぴり寂しい気分になる。彼女がいれば少しは寂しさも違うのかな。


 そんなことを思いながら、足早に家に急いだ。親父は役所務めなんだけど、年末に向けて残業が増えていた。


 「寒いな〜〜」


 薄着して出てきてしまったのを後悔しながら、いつも通る公園にさしかかったその時、


 「ガルルルル〜〜〜〜ウゥーーー!!!」 


 けたたましい犬のうなり声にギョッとした。


 見かけたことがある犬が、女の子の持っている袋に噛み付いている。


 すごい剣幕で犬が噛み付いているのにも関わらず、それを離そうとせず、女の子はうずくまって微動だにしない。


 あわてて僕は犬を払おうと必死になった!


 犬は離そうとする気配がない。


 焦る僕。


 女の子に怪我はないんだろうか? それにしても犬が袋を放そうとはしない!!


 「このやろっ離せよ!!」


 彼女をかばいながら犬を振り払うが、こっちも噛まれそうな勢いだ!


 次の瞬間


 「すいませんーーっ!はぁっはぁっはぁっ」


 息をきらして飼い主らしき男が現れた。


 「マリン!!NO〜〜〜!!」


 大きな声で、言うか言わないかくらいで、急に犬が大人しく女の子から離れた


 「よかった!」

 

 僕は女の子に怪我がないか手や足を手早く確認して、血が出ていなかったのでほっとした。


 「なにやってんだ!この子に怪我させてたらどうすんだよっ!!」

 

 興奮してた僕は、思わず叫んでいた。

 

 飼い主によると、自転車にぶつかりそうになってびっくりした犬が、暴れたはずみでリードが外れてしまったらしく、そこらじゅうを探し回っていたそうで・・・


 僕も焦ったけど、この飼い主も焦っただろう。汗が半端なく流れていて女の子を心配そうに見ている。とっさに怪我がないかだけは確認したけど、女の子はぐったり首をさげて力が抜けている。


 よほど恐かったのかまだ体は小刻みに震えている。


 「大丈夫?どこか痛くない?」

 

 震える体をゆっくり起こして、ドロを払い、絡まってしまった長い髪をそっと解いてあげた


 「!!」


 僕はあまりの驚きに声がでなくて。心で叫んでひっくり返りそうになった!


 「お知り合いですか?」 犬の飼い主が心配そうに聞く


 「いえ、あの・・・詳しくは知らないんですけど、知ってるみたいな・・・」

 

 とっさに意味不明な答えをしていた。


 「お知り合いなら、申し訳ないんですが、これからどうしても急ぎの仕事があるんで、もし彼女に何かあったら連絡こちらにください」


 よほど急いでいたのか、僕に名刺を無理やり渡すと、足早に飼い主の男は去ってしまった。


 「どうしよう?」

 

 まだ全然心の準備ができてない。


 とゆうかグチャグチャになって、なにやってんだかもわからなくなった。


 とりあえず、彼女が一人で動けそうにないし、荷物も散乱してるから入れてあげて・・・えっと・・・それから・・・


 どうしよう?


 もう頭がショートしそうなくらい心臓が倍速で鼓動している。


 さっきまでの寒さなんか感じない。


 寒いより燃えるくらい熱くてどうしようもなくなってきた。


 信じられない! 何なんだ今日? 何が起こったんだ?


 パニックだよ!


 でも今、現実に起こってるのは、午前の女神が僕のすぐ側にいるってことだ!

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