第6話
レオンと黒曜がリリィの仮名について議論している中、リリィはいい加減見ていられなくて、二人に恐る恐ると声をかけた。
「あのぉ……」
「ん? あぁ、話が逸れてしまったね。ごめんごめん」
苦笑しながらレオンはリリィの方を振り向き話を続けた。
「話しを戻すけど、実は、僕に提案があるんだ」
「提案ですか?」
「…………」
黒曜とリリィは黙ったまま、レオンの話しに耳を傾ける。レオンは楽しそうな顔でコクリと頷いた。
「そう♪ 僕はね、君を是非とも研究したいんだ!」
「けっ、研究!?」
「やはりそう来ると思いましたよ……」
レオンの言いたいことが既に予想していたのか、黒曜は「やれやれ……」と呟きながら首を横に振る。レオンは驚くリリィを安心させるように手でリリィを制す。
「あぁ、勿論、体を解剖したりしないよ」
「かっ、解剖!?」
レオンの言葉に後ろにいる黒曜が「それじゃ怯えるのが普通だと思いますけど……」と、呆れながら言った。
レオンは「あははっ」とお気楽に笑う。
「つまり、君が元の体に戻るための研究だよ。まぁ、率直に言うと僕はね――」
レオンはそう言いながら、デーブルを超えてグイッと顔をリリィに近づける。リリィは一瞬怯んだ。
リリィのそんな怯んだ姿をまるで楽しむようにレオンは優しい笑みを浮かべ、レオンは言葉の続きをリリィに言う。
「君に興味があるんだよ」
「…………っ!?」
まるで女性を口説くように優しげで何処か妖しい微笑みで言うレオン。
無論、本人にはその気なんてない。リリィも、それは分かっていた。
だが、それでも無い心臓がトクンと高鳴ったような気がした。
「あ、あああのっ!?」
リリィは顔を赤らめながら動揺する。
「わ、わかりまし! わかりまから、もっ、もう少し離れて下さいっ!」
触れないと分かっていながらも、リリィはレオンとの距離を取るためにレオンの肩を押す。
「っ!?」
「え?」
レオンとリリィはお互いポカンとした表情で同じ箇所を見つめる。それは、レオンの肩だった。
そう。リリィは体が透けている幽霊なのに、レオンの肩に触れているのだ。
それはレオンにも予想外のことだったらしい。レオンも人懐こい笑みを崩し、目を見開きながら驚いていた。
「私、触って――」
「すごい……」
「え?」
レオンの小さな呟きにリリィは自分の手を見ていた顔を上げると、レオンは意気揚々とした表情でリリィと目を合わせた。
「凄いよっ! 霊体は人間の魂、触れるわけなんて出来ないのに!!」
そう言うとレオンはリリィの両肩に触れる。しかし、触れようとした手は、そのまま肩に止まらず下に降りてしまった。
「……あれ?」
レオンは首を傾げながら再びリリィの肩に触れるが、その手はまた下に降りてしまった。
「触れない? でも、確かに君は僕の――」
何かを言おうとしていたレオンはハッとなる。
「まさか、君だけ? ねぇ。試しにもう一度、どこでもいいから僕に触ってくれるかい?」
「は、はい……」
リリィは、小さく頷くとソロソロとレオンの頬に触れた。
(あ、凄く柔らかい。……それに、綺麗な肌……)
そう思いつつも、つい、むにっとレオンの頬を摘んだ。
「いたたっ!」